研究課題/領域番号 |
21H03803
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研究種目 |
基盤研究(B)
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配分区分 | 補助金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分90110:生体医工学関連
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研究機関 | 東京医科歯科大学 |
研究代表者 |
梨本 裕司 東京医科歯科大学, 生体材料工学研究所, 准教授 (80757617)
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研究分担者 |
珠玖 仁 東北大学, 工学研究科, 教授 (10361164)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
17,940千円 (直接経費: 13,800千円、間接経費: 4,140千円)
2023年度: 3,380千円 (直接経費: 2,600千円、間接経費: 780千円)
2022年度: 2,990千円 (直接経費: 2,300千円、間接経費: 690千円)
2021年度: 11,570千円 (直接経費: 8,900千円、間接経費: 2,670千円)
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キーワード | 生体模倣システム / がん微小環境 / 電気化学計測 / Organ-on-a-chip / マイクロ流体デバイス / 走査型電気化学顕微鏡 / 走査型プローブ顕微鏡 / がん / 血管 |
研究開始時の研究の概要 |
がん細胞は,通常と異なる代謝によってエネルギーを産生しており,がんの代謝機序を明らかにできれば,がん特異的な薬剤開発へ貢献できる.しかし,代謝活動の定量解析には,組織からの細胞の単離が必要であり,この単離操作による代謝活動の変質が課題であった.そこで本研究では,生体内類似のがん微小環境の再現,および「その場」代謝マッピングにより,この課題を解決する.がん微小環境は,マイクロ流体デバイスを用いて再現を行い,特に,既存の手法で困難であった血管周囲の力学環境の制御を実現する.
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研究実績の概要 |
本研究の目的は、がん微小環境を微小な流体デバイス内で再現し、さらにそのセンサを開発することで、がん代謝の機序に迫る新たなin vitroツールを開発することである。がんはその生存戦略のため、代謝を通常から大きく変質させていることが知られているが、がん微小環境がその代謝の変質にどのように影響を与えているかは十分にわかっていない。これは、再構成的にがん微小環境を制御し、その代謝における影響を問うことができる実験ツールがなかったことに一因がある。これまでに代表者らは、マイクロ流体デバイスを用いて、がんの微小環境を再現し、外部から摂動を付与可能なシステムを開発してきた(Y. Nashimoto et al., Biomaterials 2020)。そこで、これまでの知見に基づき、当該システムにセンサを組み込み、がんの代謝を評価するシステムの開発を検討した。R3年度までに、センサを挿入可能なマイクロ流体デバイスを新たに設計し、新たなデバイス内でがんスフェロイド、およびがんオルガノイドを血管網と統合できることを見出した。微小電極による代謝計測により、当該デバイス内でがんモデルの酸素代謝が評価できることを確認した。当該デバイスを用い、がん血管を利用して薬剤を投与することで、がんオルガノイドに摂動を付与可能であり、またその際の代謝変化をセンサで検出できることを示した。当該論文をバイオセンサのトップジャーナルである、Biosensors and Bioelectronicsに報告することができた(Y. Nashimoto et al., Biosensors and Bioelectronics, 219, 114808 (2023))。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
当初計画していた通り、がんスフェロイドとがん微小血管を微小なマイクロ流体デバイス内で統合し、その計測システムを開発することができた。当該システムにセンサを挿入酸素代謝計測が可能であることを見出し、研究論文として報告することに成功した。さらに、当初の研究計画にはなかった、がんスフェロイドよりも、がん患者の性質を保持するとされる、がんオルガノイドとの統合にも成功した。上記のことから、本研究は、計画以上に進展していると考える。
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今後の研究の推進方策 |
今回のセンサを用いた酸素代謝計測により、がんオルガノイドの性質を区別することに挑戦していく。がんオルガノイドは増殖速度に基づき、Subpopulationに区分けすることができるが、Subpopulationをin vitroツールとして活用していくためには、より迅速、かつ、無侵襲にsubpopulationの識別をすることが必要となる。これまで検討してきた知見に基づき、がんオルガノイドのsubpopulationを迅速、無侵襲的な識別に挑戦する。またこれまで検討してきたがん種は、乳がん、大腸がんのみであったが、これをさらに多様ながん種に拡大していくことも検討する。具体的には口腔がんの細胞株、がんオルガノイドとの統合を検討していく。
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