研究課題/領域番号 |
21H03843
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研究種目 |
基盤研究(B)
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配分区分 | 補助金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分90130:医用システム関連
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研究機関 | 東京薬科大学 |
研究代表者 |
根岸 洋一 東京薬科大学, 薬学部, 教授 (50286978)
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研究分担者 |
吉川 大和 東京薬科大学, 薬学部, 准教授 (20274227)
高橋 葉子 (遠藤葉子) 東京薬科大学, 薬学部, 講師 (30453806)
濱野 展人 東京薬科大学, 薬学部, 講師 (80708397)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
17,550千円 (直接経費: 13,500千円、間接経費: 4,050千円)
2023年度: 3,640千円 (直接経費: 2,800千円、間接経費: 840千円)
2022年度: 4,940千円 (直接経費: 3,800千円、間接経費: 1,140千円)
2021年度: 8,970千円 (直接経費: 6,900千円、間接経費: 2,070千円)
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キーワード | ナノバブル / 超音波 / DDS / 心不全 / 核酸・遺伝子 |
研究開始時の研究の概要 |
本研究では、微小気泡の一つとして開発してきた超音波診断造影と薬物・遺伝子導入を可能とするナノバブルに、心筋選択的リガンドを表面修飾し、さらに心不全治療候補核酸医薬を搭載した新規ナノバブルの開発を目指す。本ナノバブルにより、心不全に伴う病態変化を描出する超音波診断イメージング技術を確立するとともに、体外からの治療用超音波照射を併用した心筋病変部位選択的な核酸デリバリーシステムを確立する。心筋機能を改善させる世界初の超音波技術を利用した非侵襲的な心筋指向性超音波応答性ナノバブルの開発を達成し、疾患治療システムの基盤構築を行う。
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研究実績の概要 |
2021年度の結果より、カチオン性ポリマー修飾ナノバブルへのプラスミドDNA(pDNA)の搭載と遺伝子導入効果が示された。しかしながら、さらなる遺伝子導入活性を増強するために、ナノバブルへのカチオン性ポリマー修飾量を調整し、pDNA搭載量向上を図った。調製したアニオン性脂質含有ナノバブルに、カチオン性ポリマー添加量を変え、その表面電位を測定した。結果、カチオン性ポリマーを一定以上加え、数分相互作用させることで約+10mV~20mVを示すカチオン性ナノバブルの調製が可能であった。さらに蛍光ラベル化したpDNAの添加量を変化させ、ゼーターサイザーおよびFACSにてナノバブルの表面電位およびpDNA搭載量を調べたところ、pDNA添加量増加に伴って、カチオン性からアニオン性へと表面電位がシフトした。ある一定以上の添加量では電位は一定となったことから、最大搭載量を明らかにできた。カチオン性ポリマー修飾によるナノバブルの粒子径および粒子個数の変化はほとんど認められないことも確認した。 次にマウス心臓への超音波遺伝子導入を実施した。ルシフェラーゼをコードしたpDNAをカチオン性ナノバブルに表面コートし、尾静脈内投与後に、心臓への治療用超音波を照射し、24時間後のルシフェラーゼ活性を指標に導入効率を評価した。低い音圧では十分な導入活性を認めなかったのに対し、高い音圧強度では、非超音波照射群と比較して、5~10倍以上の発現上昇を示した。さらに作製した心不全モデルマウスに対しても同様のpDNA導入実験を行ったところ、その超音波併用による発現上昇傾向を示した。以上の結果より、ナノバブルと治療用超音波を併用した心臓への遺伝子導入システムの有用性が示された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
カチオン性ポリマー修飾ナノバブルへのpDNAの搭載条件と導入条件の最適化を行ったところ、pDNAの最大搭載量ならびにある程度、最適な治療用超音波照射条件を定めることができた。特に正常マウス心臓への導入実験によって、ナノバブルと治療用超音波を併用した心臓への遺伝子導入システムの有用性を示すことができた。今回、定めた導入条件を用いて、miRNAやmRNAなどへの適用も可能となるものと考えられる。心不全モデルへの導入結果では、遺伝子導入活性は軽微なものであった。この理由として今回、作製した心不全モデルマウスの心臓を摘出し、組織学的にコラーゲン沈着による線維化状態をマッソントリクローム染色にて調べたところ、線維化がかなり進んでいた。それゆえ導入効率が減弱あれたものと思われた。しかしながら、心不全モデル治療においては、周辺部の構成細胞に導入することで、病態の進行抑制も可能となることも期待できる。今後、周囲の環境を治療用核酸導入によって、線維化の抑制や血流改善に繋がると考えられ、次年度計画で明確にできるものと考えている。以上の理由から、本研究課題である核酸医薬を含有する超音波応答性ナノバブルの開発と心不全治療に向けたシステム構築は、おおむね順調に進展していると思われる。
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今後の研究の推進方策 |
最終年度では、心不全治療候補核酸医薬を搭載したナノバブルによる治療戦略を進めるために、以下の検討を行う。 1)miRNA搭載ナノバブルの調製と心不全モデルへの適用 負電荷脂質含有ナノバブルにカチオン性ポリマーを表面コートした後に、蛍光ラベル化miRNAを搭載し、FACSにて解析することで搭載量の検討を行う。この際に適宜、表面電荷の比率を変動させて搭載量の最適化を行う。次に調製した蛍光ラベル化miRNA搭載ナノバブルを薬物誘発性心不全モデルマウスへと静脈内投与し、直ちに体外からの心臓への治療用超音波照射する。その後の照射心臓部位を摘出し、組織切片作製後、蛍光顕微鏡にて組織内分布を評価する。結果を踏まえ、適宜、治療用超音波強度を変動させる。さらに治療実験においては、心不全病態の改善が期待されるmiRNAを搭載し、本ナノバブル併用超音波導入を実施し、定量PCRなどの分子生物学的評価に加えて、組織学的評価により治療効果を判定する。 2)mRNA内封LNPとナノバブルの併用によるmRNAデリバリーの検討 正常マウスにmRNA内封LNPをナノバブルとともに投与し、治療用超音波照射する。照射強度や時間を変動させる。その後の心筋、骨格筋をはじめ全身におけるレポータータンパク質発現を指標に導入条件の最適化を図る。得られた条件を適用し、疾患モデルマウスへのRNA導入を試みる。上記に関して、リガンド修飾による増強効果についても検討を加える。
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