研究課題/領域番号 |
21H03868
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研究種目 |
奨励研究
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配分区分 | 補助金 |
審査区分 |
1130:歴史学、考古学、博物館学およびその関連分野
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研究機関 | 早稲田大学 |
研究代表者 |
中野 さやか 早稲田大学, 文学学術院, 非常勤講師
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2022-03-31
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研究課題ステータス |
完了 (2021年度)
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配分額 *注記 |
470千円 (直接経費: 470千円)
2021年度: 470千円 (直接経費: 470千円)
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キーワード | アッバース朝 / タバリー / イブン・タイフール / 歴史叙述研究 / バグダードの書 |
研究開始時の研究の概要 |
9-10世紀の中東ムスリム社会では多種多様な作品が執筆されたが、その多くが同じ情報を載せており、執筆者たちは「著者」ではなく「編纂者」という立場を取り、彼らの主張が明確に述べられている作品は少ない。当研究ではこれらのアラビア語諸作品の比較分析と執筆者の経歴分析を通じて、彼らが共有していた情報を割り出し、情報の取捨選択・配置という編纂により、歴史的事件や人物への評価が他作品とどのように異なるかを明らかにする。この分析によって「情報の編纂によって自らの主張を表す」という著述スタイルが主流であったことを明らかにして、執筆者たちが作品にこめた歴史的評価を論じる。
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研究成果の概要 |
本研究では、イスラム史上初の年代記と評価されるタバリーの年代記『預言者と王の歴史』と、タバリーが情報源として使用したイブン・タイフールによる『バグダードの書』の比較分析を行った。9-10世紀に執筆されたタバリーの年代記によって、ムスリム社会において歴史叙述が確立されたと評され、タバリーの年代記研究はこれまで数多く行われてきたが、『バグダードの書』との比較分析は行われてこなかった。本研究では情報源である『バグダードの書』との比較分析により、『預言者と王の歴史』が、「アッバース朝カリフ政権の成立から解体までの過程」を描くことを目的としていることを明らかにした。
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研究成果の学術的意義や社会的意義 |
中世イスラーム史研究分野において、歴史叙述研究は近年隆盛している。その中でもタバリーの年代記は「ムスリム社会において歴史叙述を確立した作品」と評価されてきたため、これまで数多くの研究が為されてきた。本研究では、情報源であるイブン・タイフールの『バグダードの書』との比較分析によって、タバリーの視点を明確にした。また歴史叙述作品自体は、9-10世紀にムスリム社会の中では数多く執筆されていたが、その多くは散逸してしまっている。『バグダードの書』も現存するのはごく一部のみである。本研究で『バグダードの書』現存部分も分析した為、散逸した歴史叙述作品の性格も明らかにすることができた。
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