研究課題
奨励研究
オシメルチニブは非小細胞肺がん患者において、1次治療より広く用いられる経口抗がん剤の1つである。その一方で、副作用である下痢、ざ瘡様皮疹、口内炎、間質性肺炎、QT間隔延長などの有害事象により治療継続が困難となるケースがある。これら有害事象が発生する原因の1つにオシメルチニブやその代謝産物N-脱メチル体であるAZ5104の高曝露量が挙げられる。本研究ではオシメルチニブあるいはその代謝物の血中濃度と副作用との関係性について検討を行う。また、オシメルチニブの代謝酵素や排出トランスポーターの各遺伝子多型が血中濃度へどのような影響を及ぼすか検討する研究である。
肺がん領域で広く使用されている経口チロシンキナーゼ阻害薬オシメルチニブに関して、本薬剤の血中濃度と有害事象発生との相関について検討した。さらにオシメルチニブ体内動態関連遺伝子多型との関連についても検討した。26名のオシメルチニブ内服患者において、下痢、皮疹、肝機能障害と血中濃度との間に有意な相関は認められなかった。CYP3A5*3/*3患者では、*1アレル保有患者と比較しAUC0-24/D、C0/Dについてそれぞれ高い傾向にあったが有意差は認められなかった。オシメルチニブのAUC0-24/Dにおいて、ABCB1 2677G>T/A遺伝子多型間で有意差が認められた。
オシメルチニブは肺がん領域で広く使用される抗がん剤であるが副作用の発現によって治療の中断・中止が余儀なくされるケースがある。その原因の1つにオシメルチニブの体内曝露量の増加が考えられる。オシメルチニブの体内血中濃度と副作用あるいは遺伝子多型との関連性が明らかになれば副作用に対する早期介入が期待できる。本研究による成果は、オシメルチニブの治療継続に向けた一助となることが期待される。
すべて 2021
すべて 雑誌論文 (1件) (うち査読あり 1件、 オープンアクセス 1件) 学会発表 (4件) (うち国際学会 1件)
Biology
巻: 10 号: 10 ページ: 1054-1054
10.3390/biology10101054
120007172095