研究課題/領域番号 |
21H04342
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研究種目 |
基盤研究(A)
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配分区分 | 補助金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
中区分1:思想、芸術およびその関連分野
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研究機関 | 九州大学 |
研究代表者 |
須長 正治 九州大学, 芸術工学研究院, 教授 (60294998)
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研究分担者 |
浅野 千恵 (村木千恵) 北海道教育大学, 教育学部, 教授 (00299174)
市原 恭代 工学院大学, 情報学部(情報工学部), 准教授 (10301813)
伊原 久裕 九州大学, 芸術工学研究院, 教授 (20193633)
中村 美亜 九州大学, 芸術工学研究院, 准教授 (20436695)
村谷 つかさ 筑紫女学園大学, 現代社会学部, 准教授 (30834428)
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研究期間 (年度) |
2021-04-05 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
38,870千円 (直接経費: 29,900千円、間接経費: 8,970千円)
2023年度: 8,970千円 (直接経費: 6,900千円、間接経費: 2,070千円)
2022年度: 8,840千円 (直接経費: 6,800千円、間接経費: 2,040千円)
2021年度: 12,480千円 (直接経費: 9,600千円、間接経費: 2,880千円)
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キーワード | 2色覚 / 色彩科学 / アート活動 / 社会包摂 / 色彩教育 / アート表現 / 色覚多様性 / 色覚異常 |
研究開始時の研究の概要 |
色覚異常に関わる問題は,「色覚異常」の見分けられない色の問題,社会における「色覚異常」の認知のされ方の問題,小学校や中学校での「色覚異常」に対する色彩教育の問題,遺伝学的な問題などの多分野にわたるため,色彩に関わるできるだけ多くの分野が連携して問題解決にあたらなければない.本研究では,アートによる社会包摂という,色覚分野では今までなかった新しい観点を導入し,これに色彩科学,色彩教育を加えた3つの分野の連携と融合によって,色覚異常を理由に色彩が関わるアートを避けてしまう人でも不安なく自由にアートに関われる環境,関係,そして,その仕組みをデザインすることを目的とする.
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研究実績の概要 |
色彩は外界にはなく,眼に入る光の質的量的情報をもとに個人の脳の中で創発される知覚表象であり,そのメカニズムである色覚には多様性があることが知られている.しかし,一般に,その実感は乏しく,色が外の世界にあるものとして思い込んでいる.この思い込みが色彩教育の現場にも影響を及ぼし,色覚の多様性について学習することもなく,誰もが同じ色を見ていることを前提とした画一的な色彩教育が行われている.そのため,現在の色彩教育は,色覚異常と呼ばれる色覚特性を持つ方を蚊帳の外に追い払ったままの状況である.そこで,本研究課題では,色彩科学チーム,アート表現チーム,色彩教育チームの3つの分野の連携によって,多様な色覚特性を受容する仕組みを構築することを目指している. 2色覚に代表される色覚異常を持つ人は,3色覚という多数派の色覚特性を持つ人とは異なる色を知覚することがあるため,異なる色覚特性間では色情報のやりとりに齟齬が生じる場合がある.色彩科学チームは,その齟齬を軽減する手段として,「赤」や「青」などのような基本色名ではなく.例えば,「茄子色」のような自然物特有の色彩をその自然物の色として呼称する方法の有効性の検討を行った. また,アート表現チームと色彩教育チームでは,色覚特性に依らない色知覚の主観性と多様性を体験的に学習できるワークショップの開発に取り組み,このワークショップを実施した.このワークショップでは,色フィルタ付きのゴーグルをかけることにより,普段見ている色とは違った色にし,さらに,参加者にかけてもらう色ゴーグルも複数色用意することで,参加者間でも違った色に見ている状況を作り出し,共同して大きな絵を制作することを行った.前者で色覚の主観性を後者で色覚の多様性を疑似体験するというものである.ワークショップ後のアンケート結果は,改めて色とは何かを考えさせられたというような意見が得られた.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
令和3年度に計画していた実験やワークショップを実施することができ,令和4年度は,令和3年度の研究進捗の遅れを取り戻すことができた.また,研究実績に記載していない2色覚の色覚特性に関する実験も複数,取り組んでおり,学会発表ができるくらいまで研究が進んでいる.
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今後の研究の推進方策 |
令和5年度は,アート表現チームと色彩教育チームでは,令和4年度に実施した色知覚の主観性と多様性を体験的に学習できるワークショップに小学校教員および中学高等学校の美術教員を参加していただき,意見をもらい,ワークショップの授業展開の可能性について検討していく計画である.また,色彩科学チームでは,須長ら(2018)に報告した2色覚が優位となる視環境に基づき,色彩科学チームと共に,この視環境を色彩教育プログラムに組み込むことができるかどうかの検討を行っていく. また,令和3年度,令和4年度で得られた知見などを順次,学会発表だけではなく,さらに,論文としてまとめていく.
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