研究課題/領域番号 |
21H04343
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研究種目 |
基盤研究(A)
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配分区分 | 補助金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
中区分1:思想、芸術およびその関連分野
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
鈴木 晃仁 東京大学, 大学院人文社会系研究科(文学部), 教授 (80296730)
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研究分担者 |
永島 剛 専修大学, 経済学部, 教授 (00407628)
廣川 和花 専修大学, 文学部, 教授 (10513096)
宝月 理恵 お茶の水女子大学, 基幹研究院, 准教授 (10571739)
中村 江里 上智大学, 文学部, 准教授 (20773451)
光平 有希 国際日本文化研究センター, 総合情報発信室, 助教 (20778675)
高林 陽展 立教大学, 文学部, 准教授 (30531298)
松岡 弘之 岡山大学, 社会文化科学学域, 准教授 (30877808)
橋本 明 愛知県立大学, 教育福祉学部, 教授 (40208442)
久保田 明子 広島大学, 原爆放射線医科学研究所, 助教 (40767589)
野上 玲子 熊本大学, 大学院生命科学研究部(医), 特定研究員 (60537942)
逢見 憲一 国立保健医療科学院, その他部局等, 主任研究官 (70415470)
後藤 基行 立命館大学, 先端総合学術研究科, 准教授 (70722396)
福田 眞人 名古屋外国語大学, 世界教養学部, 教授 (90208968)
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研究期間 (年度) |
2021-04-05 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2024年度)
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配分額 *注記 |
41,730千円 (直接経費: 32,100千円、間接経費: 9,630千円)
2024年度: 10,530千円 (直接経費: 8,100千円、間接経費: 2,430千円)
2023年度: 9,750千円 (直接経費: 7,500千円、間接経費: 2,250千円)
2022年度: 10,530千円 (直接経費: 8,100千円、間接経費: 2,430千円)
2021年度: 10,920千円 (直接経費: 8,400千円、間接経費: 2,520千円)
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キーワード | 医学史 / 精神医療 / ハンセン病 / 医療アーカイブズ / 公衆衛生 / 感染症 / 精神疾患 |
研究開始時の研究の概要 |
本研究は、近代以降の日本の病者=患者は、いかにして近代的な医療や公衆衛生に向き合い、その規範的な力と自らの能力や資源の間で揺れ動いたのか、いかに公衆衛生や病院の規範性と対峙し主体的に関わったのかを主たる問いとして、近現代日本医療の特質を医療の現場で生成されたアーカイブ資料を活用し、具体的かつミクロなマイクロヒストリーの構築を目指す。その際、医学医療の歴史にかかわる国際的な研究拠点を形成することも目指す。以上の目的のために、①医療アーカイブズ、②感染症・公衆衛生、③ハンセン病、④精神疾患、⑤国際研究拠点形成の5つのグループを編成し、英語での研究成果発表を含む、国際的な研究活動を展開する。
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研究実績の概要 |
アーカイブズグループでは、本年度も(一財)小峰研究所の資料整理・調査を中心に遂行し、残存症例誌のクリーニングとそれらの人物特定がほぼ終了した。資料の閲覧・利用は昨年度より増え、学生、大学教員、出版メディア関係者等の閲覧利用があった。利用者には守秘義務契約書を提出の上、研究のための一次資料として活用してもらい、それらは論文執筆、シンポジウム報告等につながった。 ハンセン病グループでは、国立療養所菊池恵楓園所蔵「患者身分帳」に関する共同研究を、同園倫理審査委員会の許可を得て実施した。今年度は1930年代後半までの「患者身分帳」の読解と分析を分担して進め、1931年の法改正にともなう入所者の量的・質的変化に着目して考察した。成果の一部を学会発表や論文刊行により公表した。 国際化グループでは、引き続き国際的な医学史の研究動向を検討し、国際的な研究水準に比する近現代日本の精神医学・精神医療の歴史研究の探求を行った。特に、戦前東京に存在した私立精神病院である王子脳病院の史資料分析結果を国際学会で発表したこと、ある大学病院精神科の精神科臨床記録の予備調査を実施したことが大きな成果である。 精神疾患グループでは、琉球精神衛生法に関わる公文書(沖縄県公文書館)、音楽療法の実践に関する一次史料(九州帝国大学、名古屋帝国大学、東北帝国大学、北海道 精神病学教室)、国立肥前療養所に関する一次史料(肥前精神医療センター)などの文書史料のほか、精神疾患患者の家族の口述史料を各自が収集した。 感染症グループでは、東京の特に大正・昭和期の腸チフス流行の分析および感染症統計を含む歴史研究に関しての調査や、1920~30年代の八王子織物業を事例とした近代女子労働と乳児死亡についての検討、及び1920年国勢調査以前におけるわが国の年齢調整死亡率変化の死因構造と医療・公衆衛生の役割等について分析と検討を進めた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
アーカイブズグループでは、王子脳病院の残存症例誌の特定がほぼ終了したため、目録の整備と住所入力に本格的に取り組む。昨年度も資料閲覧の件数が増加したが、利用者の研究テーマに沿った資料調査等により、これまで詳細に調査できていなかった看護師記録、健康調査記録等の写真撮影やデータの蓄積がフィードバックされ、結果的に資料調査の前進につながった。 ハンセン病グループでは、資料の所蔵先である国立療養所菊池恵楓園において、熊本大学の学生アルバイト雇用を活用して資料画像のスキャンと印刷を進めたため、当初計画分の資料スキャンと印刷作業を今年度中に完了させることができた。専修大学・岡山大学におけるデータ入力も、おおむね順調に進んでおり、分析結果をまとめるめどが立った。 国際化グループでは、王子脳病院の史資料整理を継続的に進め、その研究成果は着実に発表されており、また同時に大学病院精神科の臨床記録のような新たな史資料の検討を行うなど、おおむね順調に研究は推移している。 精神疾患グループでは、文書館資料に関してはマスキング作業に時間を要しているが、全体的に順調に進展している。 感染症グループでは、メンバーにより進捗状況に差はあるが、これまであまり十分に研究されなかった梅毒の歴史について概要の総括を行ったり、明治東京のコレラ流行から大正・昭和期腸チフスにまで分析を進めるなど、それぞれのテーマで分析と検討を進めている。
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今後の研究の推進方策 |
アーカイブグループでは引き続き(一財)小峰研究所資料の整理・調査および閲覧対応を行う。小峰研究所資料目録および王子脳病院・小峰病院症例誌データベースの整備に向けてはアルバイトを活用し推進する予定である。同時にこれまでの調査過程におけるアーカイブズの構造分析や資料分析などの研究成果も発信していく。 ハンセン病グループでは、各分担者のもとでアルバイトを活用したデータ入力作業を加速させ、平行して研究成果のまとめ作業を進める。引き続き学会報告や論文刊行を通じて成果を公表することで、本研究の意義を医学史・ジェンダー史・医療社会学・アーカイブズ学などの専門分野を横断する形で積極的に発信していく。 国際化グループでは、今後新たな分析対象となる史資料の整理・検討を進め、研究体制のさらなる充実を図る。また国際的な研究成果の発表と国際的な医学史の研究動向の日本国内での紹介に注力する。 精神疾患グループでは、引き続き史料の収集を継続するとともに、各自の研究成果を定期的に研究会で共有し、隣接するテーマの研究者との交流を進め、近現代の精神疾患患者の経験や主体性と彼らを取り巻く規範について分析するための視角や方法論について議論を深める。 感染症グループでは、各メンバーがそれぞれ次のような方法で今後の研究を推進する。①結核と医学の医療、研究の歴史的総合的記述の試み、 表象として最も表現されやすい文学記述の検討を行う。②「近代都市における感染症流行と生活環境」のテーマに関して保健医療史はもとより、経済史・社会史など関連分野における先行研究との関連性を検討しまとめる。③郷土資料や既存のオーラルヒストリー資料等の発掘を進め,家族形成の規範のあり方や家族構造等から婦人労働者と乳児死亡についての関係性を検討する。④統計資料および行政資料の発掘収集と基礎的分析、統計分析手法の改良・開発、分析の新分野への適用を行う。
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