研究課題
基盤研究(A)
弥生時代前期までに水稲稲作は鹿児島本土に伝播している。種子島には弥生時代中期の文化は達しているが、同時代後期から古墳時代までは広田遺跡に代表されるような特異な文化が展開していた。日本書紀により、種子島では7世紀には水稲稲作が行われていたことはわかっている。弥生時代中期に水稲稲作は種子島で受け入れられたのか、その後の種子島における生業はどのようなものであったのか。7世紀の水稲稲作は前時代のものが元となっているのか、あるいはその頃九州からもたらせたのか。このような問いに答えを見出そうというのが本研究の概要である。本研究では、考古学的方法に加えて、理化学的な方法をも用いて、これらの問いに答える。
著名な考古学者藤本強(1988)は日本列島の戦士文化には「中の文化(本州・四国・九州)、「北の文化(北海道)および「南の文化(奄美・沖縄諸島)が存在し、「北の文化」と「中の文化」および「中の文化」と「南の文化」の間の地域の戦士文化が十分に理解されていないことから「ボカシの文化」と仮称した。本研究は後者に焦点を当てたものである。藤本の提唱した頃と比較するとこの地域の先史時代はかなり解明されているが、弥生時代後半から古墳時代にかけては十分に理解されていない。そこで、この時期の遺跡である西之表市に所在する小浜貝塚(弥生後期;古墳時代相当期)を本研究の対象とした。小浜貝塚は同市国上の砂丘城に所在し、1996年および2012年に西之表市教育委員会によって発掘調査がなされた。その結果、縄文時代前期や古墳時代の遺物が検出され、残存状態の良い複数時期にまたがる貝塚であると推定された。本研究では「ボカシの文化」の解明のために考古学、動物考古学、植物考古学、古人骨学、土器圧痕分析および土器の残存脂質分析および土器の放射化分析など多角的なアプローチで調査を実施した。発掘調査は2022年4月28日ー5月8日、8月6ー16日の2回おこなった。2022年度の2回の調査では砂丘南西部(2地点)および南端(3地点)を対象としたが、前者で曽畑式土器1点のみ回収され、後者では弥生土器や上能野土器および獣魚骨や人骨片が確認された。本研究は2021年度が初年度であったが、新型コロナウィルス感染症などの影響により計画が1年ずれてしまい、2022年度および2023年度に発掘調査を行い、2024年度に出土遺物などの検証や、化学分析などを終了し、発掘調査報告書を刊行する予定である。
4: 遅れている
本研究は2021年度が初年度であったが、新型コロナウィルス感染症により、初年度は発掘調査を実施することができなかった。そのため、2022年度は1年ズレての発掘調査の開始となった。2022年度は2022年4月28日-5月8日、8月6-16日の2回発掘調査をおこなった。発掘対象となった小浜貝塚は種子島西之表市国上に所在する砂丘貝塚である。2022年度は砂丘南西部で2地点および南端で3地点発掘調査を実施した。砂丘南西部では曽畑式土器が1点回収されたのみであった。また、砂丘南端では弥生土器(鳥ノ峯式土器)、上能野式土器、獣魚骨および人骨片が出土した。しかしながら、砂丘南端部では8月の調査の最終日に調査地点が現代に撹乱を受けていることが判明した。ただし、3 地点斜面を覆っている 撹乱土を重機で除去した結果、プライマリーな土層を確認できた。また、土器の中性子放射化分析や 残留脂質分析のサンプリング、動物遺体分析のための(ピックアップ・土壌)サンプリング、植物遺体分析を行うための土壌のサンプリングなどを行った。
上述したように2022年度の発掘調査では砂丘南西部においては縄文時代前期(曽畑式土器)を回収することができ、西之表市教育委員会の調査によっても縄文時代前期の土器が検出されている。来年度もこの地点で発掘調査を実施する。また、砂丘南端部は8月の発掘調査により現代の撹乱を受けていることが判明したが、この地点を重機により深掘りしたところ、プライマリーな層が存在することが確認できた。来年度はこのプライマリーな文化層を主なターゲットとして発掘調査を実施する。土器の中性子放射化分析・残存脂質分析、石器のデンプン粒分析・使用痕分析、自然遺物(脊椎動物遺体、植物遺体)、古環境の復元、古人骨分析、土器圧痕分析などを実施する予定である。
すべて 2023 2022
すべて 雑誌論文 (49件) (うち国際共著 17件、 査読あり 16件、 オープンアクセス 9件) 学会発表 (60件) (うち国際学会 10件、 招待講演 25件) 図書 (28件)
季刊考古学
巻: 別冊40 ページ: 115-118
社会文化研究
巻: 13(1) ページ: 41-68
鹿児島国際大学ミュージアム調査研究報告
巻: 20 ページ: 23-33
西アジア考古学
巻: 24 ページ: 1-13
千葉いまむかし
巻: 36 ページ: 33-48
巻: 20 ページ: 1-14
鹿児島女子短期大学紀要1
巻: 60 ページ: 7-11
月刊海洋、号外
巻: .64 ページ: 240-247
巻: 64 ページ: 223-231
巻: 64 ページ: 37-46
巻: 64 ページ: 26-36
巻: 64 ページ: 10-17
海洋
巻: 64 ページ: 150-158
鹿児島県文化財調査報告書
巻: 69 ページ: 21-28
Quaternary Science Reviews
巻: 301 ページ: 107926-107926
10.1016/j.quascirev.2022.107926
季刊考古学別冊
巻: 40 ページ: 115-118
縄文時代早期の関東地方における環境変遷と植物資源利用 明治大学黒耀石研究センターシンポジウム
巻: 能城修一(編) ページ: 11-16
中国新石器時代文明の探求
巻: 中村慎一 (編) ページ: 175-179
上厚真遺跡
巻: 乾 哲也・奈良智法 (編) ページ: 54-61
巻: 620 ページ: 315-323
考古学ジャーナル
巻: 765 ページ: 9-12
The Journal of Island and Coastal Archaeology
巻: 17 号: 1 ページ: 1-24
10.1080/15564894.2022.2043493
Kilns in East and North Asia, Archaeology of East Asia
巻: 7 ページ: 203-221
鹿児島女子短期大学紀要
巻: 59 ページ: 5-9
巻: 161 ページ: 62-65
Frontiers in Ecology and Evolution
巻: 10 ページ: 1017909-1017909
10.3389/fevo.2022.1017909
鹿児島県立埋蔵文化財センター研究紀要 縄文の森から
巻: 14 ページ: 3-14
Nature Communication
巻: 13 ページ: 7866-7866
Scientific Reports
巻: 12 ページ: 21186-21186
巻: 12 ページ: 10642-10642
月刊海洋
巻: 9月号 ページ: 452-459
巻: 8月号 ページ: 376-385
巻: 8月号 ページ: 373-375
縄文の森から
巻: 14 ページ: 3-10
Nature Ecology and Evolution
巻: 6 号: 7 ページ: 1024-1034
10.1038/s41559-022-01775-2
巻: 12 号: 1 ページ: 21186-21186
10.1038/s41598-022-20597-7
巻: 13, 7866 号: 1 ページ: 1-9
10.1038/s41467-022-34952-9
巻: 12 号: 1 ページ: 10642-10642
10.1038/s41598-022-14617-9
Journal of Geophysical Research: Biogeosciences
巻: 127 号: 2 ページ: 1-6
10.1029/2021jg006574
Philippine Journal of Science
巻: 151 号: 1 ページ: 317-332
10.56899/151.01.24
巻: 号外、No.64 ページ: 240-247
巻: 号外 ページ: 223-231
巻: 号外、No.64 ページ: 37-46
巻: 号外、No.64 ページ: 26-36
巻: 号外、No.64 ページ: 10-17
駿台史学
巻: 17 ページ: 33-62
動物考古学
巻: 39 ページ: 92-92
地域資源としての湯舟坂2号墳Ⅱ―湯舟坂2号墳出土品の研究の最前線―
巻: 諫早直人・溝口泰久(編) ページ: 6-9