研究課題/領域番号 |
21H04366
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研究種目 |
基盤研究(A)
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配分区分 | 補助金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
中区分3:歴史学、考古学、博物館学およびその関連分野
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研究機関 | 関西大学 |
研究代表者 |
吹田 浩 関西大学, 文学部, 教授 (80247890)
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研究分担者 |
安室 喜弘 関西大学, 環境都市工学部, 教授 (50335478)
肥後 時尚 筑波大学, 芸術系, 助教 (50882289)
中村 吉伸 大阪工業大学, 工学部, 教授 (70298800)
鶴田 浩章 関西大学, 環境都市工学部, 教授 (90253484)
末森 薫 国立民族学博物館, 人類基礎理論研究部, 准教授 (90572511)
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研究期間 (年度) |
2021-04-05 – 2026-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2024年度)
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配分額 *注記 |
41,600千円 (直接経費: 32,000千円、間接経費: 9,600千円)
2024年度: 7,150千円 (直接経費: 5,500千円、間接経費: 1,650千円)
2023年度: 7,150千円 (直接経費: 5,500千円、間接経費: 1,650千円)
2022年度: 8,840千円 (直接経費: 6,800千円、間接経費: 2,040千円)
2021年度: 11,310千円 (直接経費: 8,700千円、間接経費: 2,610千円)
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キーワード | エジプト / マスタバ / 壁画 / 文化財の修復 / サッカラ / 文化財修復 / 文化財 / 修復 |
研究開始時の研究の概要 |
本研究では、エジプトのサッカラ遺跡にあるイドゥート王女の地下壁画の修復と壁画片の復元技術の開発を行い、その成果を他の壁画の修復技術の開発に応用することで、サッカラ地域の各遺跡で適応し得る壁画保存技術を確立する。サッカラ地域は軟弱な地層を含んでおり、地下埋葬室の石膏モルタルに描かれた壁画は一様に劣化が進行している。エジプト当局は、崩落した母岩を石灰と混ぜるなどの施策などを講じているが、数年で崩落する場合も多い。関西大学は、2003年から国際的な共同研究チームを組織し、剥ぎ取り法による壁画の修復を進めてきたが、壁面に戻すことのできない壁画片も数多く存在するため新たな技術を確立させるものである。
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研究実績の概要 |
2023年度には、エジプトのサッカラでの現地調査をおこなった。 日本人アシスタント・ディレクターは、8月1日から9月12日、11月12日から11月20日、12月21日から1月1日までの3回渡航している。 8月から9月にかけては、剥落壁画片の通常カメラによるドキュメンテーションに加え、本来の位置を確定するパズリングの作業を行った。また、剥落した壁画片が裏打ち作業まで完了すると本来の壁面に仮止めを行った。このような作業は、もう一人のアシスタント・ディレクターのアーデル・アカリシュとともに行われ、11月まで続いた。この期間において剥落壁画片の裏打ち作業が完了し壁に仮止めされていたものを、最終的にどのようにするかを決定した。壁画片は、壁面への安定的な固着と美観のために部分的に壁面に埋め込んだ。12月の作業は、剥ぎ取りによる工程(表うち、剥ぎ取り、裏打ち、仮止め)を終了した壁画片を母岩の本来の位置で部分的な埋め込み作業を試みた。 イドゥートの壁画での調査は、現地「古物最高評議会」(SCA)によって2023年中での完了が希望されていた。そのため現地当局の要請と今後の安全対策もあり、マスタバ上部構造の明かり取りと10m程度のシャフトの階段の整備も行った。明り取りは古代からあるもので発掘後設置されていたが、少なくとも60年は経過していた。梯子は我々が購入したが、20年は経過している。埋葬室内では、地下10mほどのところにある入口の上部のリンテルの修復も行った。古代の埋葬室設営時に石棺を取り込むための通路をブロックで積んでいたが、崩落の危険があるため積み直した。 現状で壁画の修復技術の開発とエジプト側への引き渡しの準備をほぼ終えている。2024年度に簡単な最終チェックを行い、作業道具の引き出しなどを行いイドゥートについての作業を終了する。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
コロナ禍による渡航制限も解除されたことにより、2023年度は3度にわたってエジプトに渡航し、長期の調査を行った。さらに、遅れていた作業を促進するため、エジプト人アシスタント・ディレクター、アーデル・アカーリシュ氏(The National Research Centre)が現地での指揮に例年以上に大きな活躍をするなど、研究の促進を進めた。これらによって、現地での作業時間が例年よりも長くなり、昨年度までに遅れた作業を取り戻すことができた。また、サッカラ遺跡の管理官、作業員などにも多くの協力いただくことができた。
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今後の研究の推進方策 |
今後は、2024年度にイドゥートの現地調査を完了させて、今まで主にイドゥートのマスタバを調査して蓄積してきた技術を同時期の同様の性格を持つメミの壁画に応用することを模索する。メミの墓は、現在調査中のイドゥートの墓(紀元前2360年ごろ)よりも少し10年から30年ほど早く、同じような漆喰壁画を地下埋葬室に持っている。ただし、メミの墓の上部構造は失われている。 メミの調査は、2022年度に訪問し、3次元カメラ、通常カメラで記録化しており、その他、温湿度計も設置している。イドゥートの壁画のために開発した技術を湿度や温度など環境の異なる墓でも応用できるようにする。 イドゥートでの作業は、サッカラ遺跡管理官事務所から高い評価を受けている。サッカラの地下埋葬室の壁画は、今まで修復技術がなく、放置されてきたからである、特に剥落壁画は手つかずであった。
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