研究課題/領域番号 |
21H04367
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研究種目 |
基盤研究(A)
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配分区分 | 補助金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
中区分3:歴史学、考古学、博物館学およびその関連分野
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研究機関 | 東亜大学 |
研究代表者 |
黄 暁芬 東亜大学, 人間科学部, 教授 (20330722)
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研究分担者 |
森下 章司 大手前大学, 総合文化学部, 教授 (00210162)
佐川 英治 東京大学, 大学院人文社会系研究科(文学部), 教授 (00343286)
高橋 照彦 大阪大学, 大学院人文学研究科(人文学専攻、芸術学専攻、日本学専攻), 教授 (10249906)
向井 佑介 京都大学, 人文科学研究所, 准教授 (50452298)
諫早 直人 京都府立大学, 文学部, 准教授 (80599423)
吉井 秀夫 京都大学, 文学研究科, 教授 (90252410)
會下 和宏 島根大学, 学術研究院人文社会科学系, 教授 (90263508)
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研究期間 (年度) |
2021-04-05 – 2026-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2024年度)
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配分額 *注記 |
41,470千円 (直接経費: 31,900千円、間接経費: 9,570千円)
2024年度: 8,060千円 (直接経費: 6,200千円、間接経費: 1,860千円)
2023年度: 8,190千円 (直接経費: 6,300千円、間接経費: 1,890千円)
2022年度: 8,450千円 (直接経費: 6,500千円、間接経費: 1,950千円)
2021年度: 9,490千円 (直接経費: 7,300千円、間接経費: 2,190千円)
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キーワード | 漢・六朝・隋唐時代 / 交趾郡治・ルイロウ城 / 紅河デルタのコロ-ア城 / 南縁都市のインフラ整備 / ベトナム古代の窯業生産 / 東アジア都市文明 / 漢~魏晋南北朝・隋唐 / 交趾郡治・ルイロウ遺跡 / 交趾(交州)・交趾文化 / 3D考古学 / 漢式城郭の空間構造 / 古代ベトナムの瓦陶産業 / 交趾窯業とその技術 / アジア都市文明史 / 漢魏帝国と周縁都市 / 海のシルクロード / 交趾・林邑・扶南 / 東南アジア都市史 / 漢~六朝・隋唐時代 / 漢式城郭と版築技術 / 交趾文化 / 文化の伝播と変容 / ベトナム古陶磁の生産と流通 / 南海交易都市:交趾・林邑・扶南 / 古代東アジア都市史 / 文化交流と変容 / 東アジア文化圏 / 東アジア文化交流史 / 漢-魏晋南北朝・隋唐 / 帝国都城と郡県都市 / 河川交通・港湾都市 / 古代陶磁の生産・流通 / 鋳造関連施設 / 古代東アジア / 郡県都市 / 漢帝国の遺産 |
研究開始時の研究の概要 |
本研究は、漢帝国の滅亡後も継続・拡大した嶺南・ベトナム北部における郡県都市の盛衰に着目し、文理協働のフィールド調査、紅河デルタ平野に残る交趾郡治・ルイロウ遺跡の発掘調査を継続的に実施する。漢~魏晋南北朝・隋唐期にかけて南縁の郡県都市・墳墓祭祀・産業遺跡の実態を検証し、その歴史的変遷を明らかにする。一方、朝鮮半島における楽浪四郡や三国時代の都市遺跡との比較研究を行う。漢がもたらした文明装置の継承・改変、その影響と地域社会の相互作用という視点から、東アジア世界の変動期における周縁地域の多様な歴史的変遷とその意義を実証的に解明する。
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研究実績の概要 |
本研究は長らく不明だった中国嶺南・ベトナム北部に在る交趾郡治・ルイロウ発掘と学術的調査を取り組み、交趾都市建設の発展・変遷過程を探究してきた。近年の外城発掘で遺構・遺物の3D計測・解析を通して都市の空間構造、ルイロウ築城の時期変遷(Ⅰ~Ⅳ期)を検証し、漢~六朝隋唐時代における帝国南縁の交趾郡(交州)治の都市建設が約900年間にわたって断続的に行われたことが実証的に解明した。本年度は日越10年協定調査(2013~2023)の最終年度に当り、ルイロウ発掘計画を一時休止し、出土遺物の整理分類と編年研究に集中したほか、紅河デルタに残る古代都市の新企画調査が始動した。 【交趾プロジェクト】①出土遺物の分類・資料化作業、特に瓦磚・陶磁器の3D計測や三次元画像モデルの作成、『交趾郡治・ルイロウ遺跡Ⅲ』の編集・出版の諸作業も推進した。②海陽省菊蒲城址の実地調査とドローン空撮、③交趾陶業の生産と流通を探るため、清化省三寿窯跡(漢~三国)、北寧省百定窯・ルイロウ窯跡(隋唐期)の実地調査を行った。④漢唐長安城、六朝都城建康及び郡県都市遺跡の発掘現場へ実地調査、最新の資料収集をも実施した。 【北部ベトナム古代都市の新企画調査】①海陽省菊蒲城、②ハノイ市権城遺跡の実地調査。③日越新協定調査にハノイ市・コローア城発掘プロジェクトを立ち上げた。3月コローア城GPS・GIS調査、同内城壁の3D計測を行い、内城区の三次元復元モデルを試みた。④清化省胡朝都城(15世紀)遺跡の現地調査を実施した。いずれも漢式城郭構造に該当し、瓦陶の生産技術も漢・六朝文化の系譜に辿り着ける。 以上、本科研調査の実績をもとに、国際学術シンポジウムⅢ『東アジア古代都市の調査最前線』を3月企画・開催した。これから継続的な課題調査を推進し、立体的な東アジア文明の地域史像の復元に寄与できると考える。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
コロナ後の国際情勢が大きく変動し、ベトナム国家政治・経済政策の改革によって従来、国際共同調査事業の規制管理が強化された一方、物価の高騰で交趾発掘調査費も倍増し、海外学術調査に関する行政手続きも複雑化になった。近年、本科研調査・国際共同研究の事業展開について、難航事項が多く、協定計画書通りの調査実施も難しく、度重なる双方の協議・交渉をしながら、下記の事業展開を推進した。 【実地調査と検証】①2023年8月~9月(黄、協力者池田拓・山本信夫)a.ルイロウ内城の遺物の分類整理、瓦陶遺物の3D計測。b.交趾窯跡の実地調査:清化省三寿窯跡、北寧省百定窯跡。c.海陽省菊蒲城址(交趾郡下の県城)の実地調査。②2023年12月(黄、協力者木下保明・池田・瀬川)。ルイロウ外城の出土遺物の分類整理、瓦陶の3D計測。③2024年3月~4月(黄、協力者一瀬和夫・宮原・竹村)。国立ハノイ大学との日越新協定調査を計画・実施した。a.ハノイ市コローア発掘プロジェクトの予備調査;コローア城址のGPS・GIS調査と内城発掘区の選定。b.ハノイ市権城遺跡の実地調査とドローン空撮。c.ハイフォン市大型漢墓や水源磚室墓の実地調査を、同市博物館にて漢墓の出土遺物の3D計測を行った(黄)。 【国際共同研究】1)学会発表:日本考古学協会第89回総会にてルイロウ発掘調査成果を発表(黄2023.05東京)。昨秋、中国考古学会第4回全国大会で中国都城思想に関する黄の個人研究論文を発表し、続いて国際長安学研究会、また漢唐史学論壇、また南京師範大学史学研究会、前後計3回の招請講演が行った(2023.10西安)。2)本科研による企画・オンライン開催の国際学術シンポジウムⅢ『東アジア古代都市調査の最前線』を2024.03.03に実施し、日・中・越・韓など、視聴登録者数は120名に超えた。
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今後の研究の推進方策 |
本研究は周縁地域都市の視点から中華帝国の興亡と東アジア地域文化と歴史的変遷の実態を具体的に捉え、交趾ルイロウ発掘調査の継続実施することによって、漢~唐時代の帝都とその周縁地域の郡県都市の真相究明に着実に推進、展開してきている。これまで、紅河デルタに残る古代都市、交趾郡治・ルイロウ城の発掘調査は7回連続で実施し、東アジア史上に謎の多い交趾都市に対する理解と認知は従来 説を覆したことが相次いだ。コロナ後、ルイロウ外城の2回連続発掘調査では、漢~六朝・隋唐帝国南縁の拠点都市である交趾都市の実態をより一層具体的に検証し、三段階の変遷プロセスについて、実証的に解明した。 今後、この国際協力関係と交趾ルイロウ発掘・学術調査研究の業績を深化・発展させながら、紅河デルタにおける古代都市の実態解明をさらに深めていく。今年度から(研究代表者・黄暁芬所属)日本東亜大学とベトナム国立ハノイ大学との日越新協定調査・紅河デルタの古代都市に関する国際共同調査の新企画も発動した。主な目標は二つ、第一、交趾都市発掘で検出した多種多様な遺物の編年研究を継続し、とりわけ交趾都市の瓦陶(瓦磚・陶磁器)産業の技術とその系譜を探る。とくに、ルイロウ発掘で検出した瓦陶遺物のうち、型式学の考察や胎土分析など、舶来品と在地製品を考察し、紅河デルタにおける古代都市の瓦磚・陶磁器の生産技術と流通システムの解明をめざす。第二、3D考古学の方法論を用いて、北部ベトナムに残る古代都市遺跡のフィールド調査・発掘調査を計画的に行い、そして各城郭遺跡の三次元復元モデルの作成を実施する。交趾郡治・ルイロウ発掘と学術調査実績をもとに、紅河デルタの古代都市像を描き出し、交趾文化・技術の伝播と受容の様相を明らかにし、東アジア都市文明の発展・変遷過程を実証的に探究する。
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