研究課題/領域番号 |
21H04415
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研究種目 |
基盤研究(A)
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配分区分 | 補助金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
中区分9:教育学およびその関連分野
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研究機関 | 日本大学 (2022-2024) 日本大学短期大学部 (2021) |
研究代表者 |
山口 雄仁 日本大学, 理工学部, 研究特命教授 (00182428)
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研究分担者 |
藤芳 明生 茨城大学, 理工学研究科(工学野), 教授 (00323212)
渡辺 哲也 新潟大学, 自然科学系, 教授 (10342958)
駒田 智彦 日本大学短期大学部, その他部局等, 准教授 (30360316)
相澤 彰子 国立情報学研究所, コンテンツ科学研究系, 教授 (90222447)
鈴木 昌和 九州大学, マス・フォア・インダストリ研究所, 名誉教授 (20112302)
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研究期間 (年度) |
2021-04-05 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2024年度)
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配分額 *注記 |
41,080千円 (直接経費: 31,600千円、間接経費: 9,480千円)
2024年度: 8,840千円 (直接経費: 6,800千円、間接経費: 2,040千円)
2023年度: 8,840千円 (直接経費: 6,800千円、間接経費: 2,040千円)
2022年度: 9,230千円 (直接経費: 7,100千円、間接経費: 2,130千円)
2021年度: 14,170千円 (直接経費: 10,900千円、間接経費: 3,270千円)
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キーワード | インクルージョン / オンライン理数系教育 / バリアフリー / 視覚障害 / 発達性読み書き障害 |
研究開始時の研究の概要 |
統合教育環境で学ぶ障害生徒・学生のオンライン理数系教育を総合的に支援するため,晴眼者用オンライン教育コンテンツを全盲・重度弱視・発達性読み書き障害などそれぞれのニーズに合わせて自動でバリアフリー化する技術などを研究開発する。こうした支援技術は発展途上国などでも現在広く必要とされているため,ユーザーが各自の言語用に自分で容易にカスタマイズできる多言語対応のシステム開発を目指す。
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研究実績の概要 |
本課題研究を校正するA~Dの各研究グループが本年度達成した研究成果の概要は以下の通りである。 Aグループの山口は,マルチメディアDAISY/EPUB3形式バリアフリー・デジタル教材制作・編集・閲覧ソフトウェアの改良と多言語対応を一層進めるとともに,「固定レイアウト・デイジー」という発達性読み書き障害者向けの新たなアクセシブル電子書籍形式の開発に取り組んだ。また分担者の駒田と協力して,昨年度までに開発したパワーポイント用アドオンにさらに改良を加え,パワーポイントのスライドに含まれる数式に,容易にさまざまな言語で代替テキスト,および音声合成による読み上げ音声を貼り付ける機能などを実現した。 Bグループの藤芳は,PDFドキュメントの複雑なレイアウトを機械学習を用いて解析するソフトウェアの研究開発に取り組み,最先端のニューラルネットワークであるTransformerを活用してPDFドキュメントのレイアウトを学習するソフトウェアを開発することに成功した。 Cグループの渡辺は,ドイツのライプニッツ情報学センターで1週間にわたって開催されたDagstuhl SeminarのInclusive Data Visualizationをテーマとする会議に参加し,グラフや地図などの視覚的データを視覚障害者にどのようにアクセシブルにするかについて海外の第一線の研究者と議論を行い,それを今後の開発計画に活かす検討を行った。 Dグループの相澤は,数学の学習者を対象とした定理証明の理解支援に関する研究に引き続き取り組んだ。定理自動証明で用いられる形式記述と論文や教科書で用いられる自然言語による記述を相補的に用いるための方法論を検討し,数学の定理証明支援系Lean上に自然言語の構文解析機能を組み込んだプロトタイプシステムの開発を行った。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
研究3年目の令和5年度は,本課題研究を構成する各研究グループにおいて,開発中のソフトウェアの改良や関連する調査・研究について,概要に示した通り概ね順調に実施し,それらの成果の一部はすでに実用ソフトウェアとして一般公開されている。 本年度は国内外で研究集会・国際会議がコロナ禍前に近い形で開催されるようになり,代表者と分担者は積極的にそれらに参加した。たとえば山口と駒田は令和5年8月パリ大学で開催された第17回AAATE国際会議に参加し,本課題研究による成果を2件報告するとともに,欧州を中心とする数多くの研究者と研究交流・意見交換を行った。また令和6年3月に米国アナハイムで開催された第39回CSUN障害者支援技術国際会議に参加し,主に米国の障害者支援関係者に,開発中のオンライン障害者支援サービスについて実演を交えて紹介した。 令和6年2月15~17日には本課題研究の科研費により,東京駿河台の日本大学理工学部を会場として,the 5th International Workshop on "Digitization and E-Inclusion in Mathematics and Science 2024" (DEIMS2024)をオンラインと対面のハイブリッドで開催した。基調講演2件(国内1,海外1),一般発表19件(海外14,国内5)の講演があり,本課題研究に関連する話題について,最新動向把握と有意義な意見交換・研究交流を行うことができた。今回の特色として発表者とその関係者のみならず,海外から聴講のみの対面参加者が何名もいて,さらに海外を中心としてオンライン参加者は53名,対面参加者34名とこれまでにない数多くの参加者があった。今回が5回目の開催となる本研究集会は小規模ながら,理数系情報のアクセシビリティの分野で国際的に重要性がかなり認められているとの心証を得た。
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今後の研究の推進方策 |
最終年度の令和6年度は,本課題研究を構成するA~Dの各研究グループごとに次の分担で調査・研究開発を行い,研究の完成を目指す。これらを統括する作業は,分担者と協力して代表者の山口が行う。 A. 代表者の山口は研究協力者の川根とともに,開発中のマルチメディアDAISY/EPUB3形式バリアフリー・デジタル教材制作・編集・閲覧ソフトウェアの多言語・オンライン対応を完了するため,本年度に引き続いてソフトウェアの要素技術のいくつかを改良する研究開発を行う。分担者の駒田は,パワーポイント理数系コンテンツのアクセシビリティを実現するツールの開発を一層進めるとともに,多言語化にも取り組む。 B. 分担者の藤芳は引き続きPDF文書処理の基礎技術としてPDFファイルから情報を抽出するソフトウェアの開発,およびPDFファイルに加工を施す技術の研究を行うとともに,読み書き障害者の利便性を向上させるための技術として,PDF文章の縦書きと横書きの変換などの課題に取り組む。研究協力者の鈴木,金堀は,理数系文書のPDFをアクセシブルな形式に変換するシステムに関連する技術開発,特にオンライン化・多言語化の完成を目指す。 C. 分担者の渡辺は,触察物を使った遠隔指導について行った調査に基づき,課題の特定とその解決方法の確立を図る。 D. 分担者の相澤は理数系コンテンツの理解支援の実現に向けて,文章中に出現する数量表現の意味解析手法の研究を一層進めるとともに,数学定理証明に焦点をあてて,数学的知識の理解支援の研究に引き続き取り組む。 年度末の令和7年2月には国内研究集会を開催し,それまでの研究成果を広く社会に公開するとともに,開発したソフトウェアを世界に向けて公開し,国際的にオンラインの理数教育環境改善に資することを目指す。
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