研究課題/領域番号 |
21H04436
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研究種目 |
基盤研究(A)
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配分区分 | 補助金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
中区分13:物性物理学およびその関連分野
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
木村 剛 東京大学, 大学院工学系研究科(工学部), 教授 (80323525)
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研究期間 (年度) |
2021-04-05 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2024年度)
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配分額 *注記 |
41,470千円 (直接経費: 31,900千円、間接経費: 9,570千円)
2024年度: 7,670千円 (直接経費: 5,900千円、間接経費: 1,770千円)
2023年度: 12,220千円 (直接経費: 9,400千円、間接経費: 2,820千円)
2022年度: 12,350千円 (直接経費: 9,500千円、間接経費: 2,850千円)
2021年度: 9,230千円 (直接経費: 7,100千円、間接経費: 2,130千円)
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キーワード | フェロアキシャル秩序 / フェロイック秩序物性 / 電気磁気(光学)効果 / ドメイン / フェロトロイダル秩序 / 電気磁気光学効果 / 非相反光学応答 / 第二高調波発生 / データベーススクリーニング / 電気磁気(光学)効果 / 電気旋光効果 / 電気磁気効果 / マルチフェロイック |
研究開始時の研究の概要 |
本研究では,「電気双極子」が渦状の配列を形成することによって生じる特異な対称性の破れに起因する新規なフェロイック秩序物性の創成をねらい,その学理の構築をはかる。そのような秩序を有する物質の探索・実現,秩序状態の観測手法の開発,また秩序状態の制御法を確立し,新たなフェロイック秩序物性としての確立をめざす。さらに磁気トロイダル秩序など他のフェロイック秩序物性との結合現象に起因する新規物性を開拓する。
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研究実績の概要 |
フェロアキシャル物質の物質設計・開発および同物質系における新規物性開拓を行うとともに、磁気単極子および磁気トロイダル秩序を示す反強磁性金属RB4 (Rは希土類元素 )における反強磁性ドメイン観測などの研究を推進した。 【フェロアキシャル物質の物質設計・開発および新規物性開拓】空間群R-3のフェロアキシャル構造を有するNa2Hf(BO3)2に着目して、2次ヤーンテラー効果活性の観点から化学修飾を行い、フェロアキシャル構造を制御することを試みた。第一原理計算により同物質の電子構造を解析した結果、フェロアキシャル構造の安定化にはNa 3s軌道が大きく寄与しており、2次ヤーンテラー効果が起源であることが明らかとなった。さらにNaよりも2次ヤーンテラー活性が低いと予想されるK置換が非フェロアキシャル構造を安定化することを期待し、実証を試みた。その結果、K2Hf(BO3)2が空間群R-3 mの非フェロアキシャル構造を有することを明らかにした。また、フェロアキシャル物質NiTiO3に電場を印加することによりキラリティを誘起し、キラル結晶に特有な磁気光学現象として知られる磁気キラル二色性を電場で誘起、さらには制御することに成功した。 【磁気単極子系・フェロトロイダル系金属における反強磁性ドメイン観測】 RB4は金属的な伝導性を有し、低温で空間反転と時間反転を共に破る磁気単極子秩序や磁気トロイダル秩序を内包する反強磁性秩序を示す。このような反強磁性金属における反強磁性ドメインの観測手法として、磁気単極子秩序系に対しては、電気磁気光効果の一つである反射光の非相反旋光効果を利用する方法および円偏光共鳴X線回折における電荷散乱と磁気散乱の干渉効果を利用した手法、磁気トロイダル秩序系に対しては第二高調波発生を用いた手法を提示し、それぞれの手法において反強磁性ドメインの空間分布を観測することに成功した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
令和5年度は、令和3~4年度に着手したデータベーススクリーニングや第一原理計算といった手法により提示されたフェロアキシャル候補物質の実験的な検証を行うことによりフェロアキシャル物質の開発をさらに推進した。また、フェロアキシャル物質における新規物性として、電場誘起磁気キラル二色性に着目し、その観測に初めて成功した。一方、磁性体関連の研究としては、一次の電気磁気効果や非相反光学応答を示す磁気トロイダル系や磁気単極子系の研究を絶縁体から金属系に展開し、光学的な手法を用いた金属系における電気磁気効果の検出に成功した。これらの成果は、フェロアキシャル秩序物性の学理構築、さらにフェロアキシャル秩序を基軸にキラル秩序や磁気トロイダル秩序といった非従来型のフェロイック秩序などとの共存および結合から生み出される未知のマルチフェロイック複合物性の創出という目的の達成に資するものであり、研究はおおむね順調に進展していると判断する。
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今後の研究の推進方策 |
本研究では【物質探索・合成】、【測定手法の構築・測定】、【秩序変数・ドメインの制御】、【新規複合物性・巨大応答の開拓】といったアプローチで新規フェロイック秩序物性としてのフェロアキシャル秩序物性の創成・その学理の構築をはかり、磁気トロイダル秩序など他のフェロイック秩序物性との結合現象に起因する新規物性を開拓することを目的としている。令和5年度までの研究により、おおむね目的の達成に資する結果が得られているが、最終年度となる令和6年度はさらなる研究の展開を図る。これまでの研究により、データベーススクリーニングや第一原理計算などの手法により複数のフェロアキシャル候補物質を提示したが、これらの候補物質を実際に合成し、フェロアキシャル物質の拡充を図る。また、単純なフェロアキシャル秩序に加えて、電場誘起磁気トロイダル秩序といった新奇なフェロイック秩序の実証、フェロアキシャル秩序とキラル秩序の結合による強誘電性の実証、フェロアキシャル秩序系における表面キラリティの観測など、さらに多様な新規フェロイック秩序物性研究を推進する。
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