研究課題/領域番号 |
21H04442
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研究種目 |
基盤研究(A)
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配分区分 | 補助金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
中区分13:物性物理学およびその関連分野
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研究機関 | 東京工業大学 (2022-2023) 東京大学 (2021) |
研究代表者 |
賀川 史敬 東京工業大学, 理学院, 教授 (30598983)
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研究期間 (年度) |
2021-04-05 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
40,950千円 (直接経費: 31,500千円、間接経費: 9,450千円)
2024年度: 5,590千円 (直接経費: 4,300千円、間接経費: 1,290千円)
2023年度: 5,850千円 (直接経費: 4,500千円、間接経費: 1,350千円)
2022年度: 13,910千円 (直接経費: 10,700千円、間接経費: 3,210千円)
2021年度: 15,600千円 (直接経費: 12,000千円、間接経費: 3,600千円)
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キーワード | 相転移 / 相制御 / 実空間観測 / 準安定 / 超伝導 / 急冷 / 磁気スキルミオン / ドメインエンジニアリング / 相転移ダイナミクス |
研究開始時の研究の概要 |
物質の静的な性質は系の置かれた環境によって通常一意に決まる。しかし最近、物質に電流・光などの刺激をパルス的に加えるとパルス印加前後で静的な性質が変化する例が次々と見出されている。本研究では、このパルス印加によって相が恒常的な変化を起こす機構の学理を探究する。具体的には、局所的な相制御によって異なる相の任意パターニングが可能になるレベルまで学理を深化させ、この局所相制御の基盤技術を超伝導相とトポロジカル電子相それぞれに対して適用することで、再構成可能かつジュール発熱などのエネルギー散逸を伴わない電流回路創出の原理実証を行う。
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研究実績の概要 |
準安定相の創出を目指す上で、相競合している1次転移系が有望な候補物質であることが、我々のグループの過去の研究から経験則として浮かび上がりつつあるものの、その微視的な意味は明らかになっていなかった。そこで本年度は、相競合している1次転移系であるマルチフェロイック物質(Fe0.95Zn0.05)2Mo3O8に着目し、走査型磁気力顕微鏡(MFM)を用いて一次相転移ダイナミクスの実空間観測を行った。低温環境下(30K以下)において、磁場を高磁場(7T)から下げると、試料表面において強磁性相の母体の中に円形状の反強磁性ドメインが時間と共に成長していく過程が観測された。このドメイン成長速度の温度・磁場依存性を精査し、相図上における熱力学一次相転移線からの磁場方向の距離ΔHの関数としてこれを解析したところ、ドメインの成長速度はexp(-const./ΔH)に比例し、いわゆるcreep運動を記述する式として知られているMerz’s lawによってよく記述されることが分かった。この温度・磁場に依存するドメイン速度の“等高線”を相図上に描くと、実験的に観測される1次相転移ヒステリシス線の振る舞いをよく再現した。また、ヒステリシス線は磁場掃引速度の関数として振る舞うことが見出されたが、その系統性は、MFM測定から得られたドメイン速度の温度・磁場依存性に適当なドメイン成長モデルを適用することで半定量的に説明可能であることが分かった。以上のことから、急冷による準安定相の創出を目指すにあたり、相競合領域においてドメイン成長速度が低温域において遅延化することが重要な役割を果たしていることが分かった。 また、上記の実験とは独立に、フェーズフィールドシミュレーションによって、試料サイズ・冷却速度を制御パラメータに採った、最低温における相転移度合いを表す動的な相図を作成した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
遷移金属ダイカルコゲナイドMoTe2に対して走査型ラマン顕微鏡測定を行ったところ、100cm-1以上の波数では高温相と低温相(超伝導相)を比較した際、ラマンスペクトルに明確な差が見られないことが分かった。このことは、2相の実空間イメージングには観測可能な波数域を拡張する必要性があることを意味しており、現在、光学系の改良に時間に取り組んでいる。したがってMoTe2における走査型ラマン顕微鏡測定は現在のところ達成できておらず、今後の課題である。 一方、上記の相マルチフェロイック物質(Fe0.95Zn0.05)2Mo3O8におけるMFM測定やフェーズフィールドシミュレーションは当初の計画には含まれていなかったものであり、これらの研究から共に準安定相の安定化について重要な知見が得られた。その意味でこの点においては、予想以上の進展が見られたものと考えている。以上のことから、全体的な研究の進捗状況としては「おおむね順調に進展している」自己評価した。
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今後の研究の推進方策 |
準安定相の安定化機構について微視的なレベルでの知見が蓄積しつつあるが、より普遍的な側面の抽出を企図し、相競合を示すスピンハミルトニアンに対して、準安定解とその安定性に着目したモンテカルロシミュレーションを行う。また、急冷準安定超伝導相の任意パターニングの前段階の実験として、必ずしも超伝導に限らない急冷準安定相を対象としたパターニング実験を行い、その安定性や空間分解能について知見、及びノウハウを蓄積する。また、パターニングによって初めて発現する高次機能性(たとえばドメイン構造による巨視的な反転対称性の破れによる非相反伝導性の発現など)を実験で検討したい。
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