研究課題/領域番号 |
21H04444
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研究種目 |
基盤研究(A)
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配分区分 | 補助金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
中区分13:物性物理学およびその関連分野
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
竹内 繁樹 京都大学, 工学研究科, 教授 (80321959)
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研究期間 (年度) |
2021-04-05 – 2024-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
42,770千円 (直接経費: 32,900千円、間接経費: 9,870千円)
2023年度: 9,620千円 (直接経費: 7,400千円、間接経費: 2,220千円)
2022年度: 11,830千円 (直接経費: 9,100千円、間接経費: 2,730千円)
2021年度: 21,320千円 (直接経費: 16,400千円、間接経費: 4,920千円)
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キーワード | 単一光子 / ナノ光ファイバ / ダイヤモンド / 量子情報 |
研究開始時の研究の概要 |
本研究では、同一性が高く、かつ高効率の単一光子源の実現を目ざす。原子間力顕微鏡と共焦点顕微鏡を組み合わせた装置により、単一のシリコン欠陥中心を含有するナノダイヤモンドを、我々が独自に開発したファイバへの結合損失が極めて小さいナノファイバブラッグ共振器(NFBC)に結合させ、ハイブリッド単一光子源を構築する。この研究は、光子を用いた量子情報科学の鍵である、多数の光子からなる複雑な量子状態生成にブレークスルーをもたらすと共に、将来の大規模光量子シミュレーターや超高感度量子センシングに路を拓くものである。
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研究実績の概要 |
本研究では、単一シリコン欠陥中心(SiV)を内包したダイヤモンド微粒子(ナノダイヤモンド)を、微小共振器を内蔵したテーパー光ファイバ(NFBC)に結合したハイブリッド素子を開発、同一性が高く、かつ高効率の単一光子源の実現を目ざしている。 令和3年度は、平均粒径25 nmのナノダイヤモンドを分散させた状態で、Siイオンを照射することで、SiV内包ナノダイヤモンドの開発を行った。この方法は、これまで一般的に行われてきた、化学蒸着(CVD)や高温高圧(HPHT)により合成されたダイヤモンド結晶を粉砕する方法より、高い収率でSiV内包ナノダイヤモンドを得ることができる。今回、Siイオン照射後の高温アニーリングの方法を工夫することで、室温において7nmと、高純度バルク結晶中のSiVで観測される値に匹敵する細い線幅を観測することに成功した。さらに、Siイオン照射の条件の最適化にも取り組み、平均粒径25 nmのナノダイヤモンドにおいて、単一SiVを確認することにも成功した。 また、NFBCとの結合には、散乱損失の影響が小さい、サイズの小さなSiV内包ナノダイヤモンドの開発も重要となる。爆轟法で作られるナノダイヤモンド(DND)は、平均粒径が10 nmと小さく、かつ、サイズの均一性が高いが、これまで、DNDにおいてはSiVは観測されていなかった。今回、DNDを高真空中で1100度でアニール処理することで、SiVの発光波長に一致する波長737 nmにおいて、線幅7.7 nmと、CVD合成ダイヤモンド中のそれに匹敵する鋭い発光を観測することに成功した。 その他、NFBCの作製とナノダイヤモンドのマニピュレーション技術の研究や、低温評価系の構築を行った。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
令和3年度は、「A. NFBCの作製とナノダイヤモンドの選択操作技術」、「B. 低温評価系の構築とSiVの評価」、および「C. ハイブリッド単一光子源の電磁界解析」の3項目について研究を進めた。 項目Aに関しては、SiVの発光波長である737 nmで共振するNFBCを、ヘリウムイオン顕微鏡を用いて作製した。また、同じ希ガスであるネオンを原子種としたNFBCの作製にも取り組んだ。さらに、ナノダイヤモンドの選択操作技術の確立をめざし、共焦点顕微鏡系とAFMを組み合わせた実験装置を構築、AFMを用いてナノダイヤモンドを直径700 nmのナノ光ファイバ上に配置することに成功した。 項目Bに関しては、単一SiV含有ナノダイヤモンドの作製をめざし、QST高崎量子応用研究所において、照射条件を変えながら、Siイオンをナノダイヤモンドに照射した。その結果、光子の時間相関関数g2(τ)の測定により、平均粒径25 nmのナノダイヤモンドにおいて、単一のSiVを含有するナノダイヤモンドを確認した。また、低振動無冷媒光学クライオスタットを導入、評価用の光学系を構築、冷却到達温度7Kにおいてサンプルを評価することに成功した。これらの研究に加え、爆轟ナノダイヤモンド(DND)を高温アニーリングすることで、平均粒径5 nmのDND中にSiVを作製することにも成功した。 項目Cに関しては、SiV内包ナノダイヤモンドをファイバブラッグ共振器に結合した際の、単一光子発生効率について、FDTDを用いた解析に取り組んだ。 全体として、本研究は当初計画をこえる部分を含め、順調に進展している。
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今後の研究の推進方策 |
R4年度は、「A. NFBC-SiVハイブリッド単一光子源の構築」、「B. SiV単一光子源の評価」、および「C. ハイブリッド単一光子源の電磁界解析」の3項目について研究を進める予定である。 項目Aに関しては、R3年度構築した、共焦点顕微鏡系とAFMを組み合わせた装置、ならびに開発した、SiVの発光波長である737nmで共振するNFBCに対して、共焦点顕微鏡系とAFMを組み合わせた実験装置を用い、単一SiV内包ナノダイヤモンドを選択的にナノファイバブラッグ共振器への配置を行い、ハイブリッド単一光子源の構築を試みる。 項目Bに関しては、昨年度構築した低振動無冷媒光学クライオスタットを用いた、SiV単一光子源の評価を引き続き実施する。共焦点顕微観察を行う場合、現在のシステムでは対物レンズがクライオスタットの外側に設置しているため、冷却到達温度が7K程度に留まっている。光学窓の工夫等でこの到達温度の正確な評価を試みることを計画している。また、共鳴励起用光学系の構築も行う予定である。並行して、より低い到達温度での観察が可能である液体ヘリウムにより冷却を行う光学系を構築、必要に応じて併用する。 項目Cに関しては、引き続きSiV内包ナノダイヤモンドをファイバブラッグ共振器に結合した際の、単一光子発生効率について、FDTDを用いて解析を進める予定である。
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