研究課題/領域番号 |
21H04460
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研究種目 |
基盤研究(A)
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配分区分 | 補助金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
中区分14:プラズマ学およびその関連分野
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研究機関 | 核融合科学研究所 |
研究代表者 |
村上 泉 核融合科学研究所, 研究部, 教授 (30290919)
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研究分担者 |
佐々木 明 国立研究開発法人量子科学技術研究開発機構, 関西光量子科学研究所 量子応用光学研究部, 専門業務員 (10215709)
川手 朋子 核融合科学研究所, 研究部, 助教 (10647100)
鈴木 千尋 核融合科学研究所, 研究部, 助教 (30321615)
坂上 裕之 核融合科学研究所, 研究部, 助教 (40250112)
中村 信行 電気通信大学, レーザー新世代研究センター, 教授 (50361837)
藤井 恵介 京都大学, 工学研究科, 助教 (10637705)
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研究期間 (年度) |
2021-04-05 – 2026-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
42,640千円 (直接経費: 32,800千円、間接経費: 9,840千円)
2024年度: 2,990千円 (直接経費: 2,300千円、間接経費: 690千円)
2023年度: 2,730千円 (直接経費: 2,100千円、間接経費: 630千円)
2022年度: 14,950千円 (直接経費: 11,500千円、間接経費: 3,450千円)
2021年度: 19,370千円 (直接経費: 14,900千円、間接経費: 4,470千円)
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キーワード | 準連続スペクトル / 多価イオン / プラズマ分光計測 / 統計理論 |
研究開始時の研究の概要 |
多電子原子の多数の発光線が密集することで形成される準連続スペクトル(Unresolved Transition Array, UTA)は極端紫外光源や核融合プラズマ・天体プラズマなどで広く見られるが、定量的診断法が存在しない。 本研究では、UTAスペクトルの高波長分解観測を初めて実現し、それを構成する線スペクトルの強度や波長の計測を様々な原子イオンUTAに対して系統的に行い、強度・波長が従う「分布」の元素・価数依存性を明らかにする。量子カオス理論や平均原子理論に基づくUTA 統計則の理論モデルも合わせて構築する。これらによりUTA の物理を開拓し、UTA スペクトルの定量的診断法を開発する。
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研究実績の概要 |
(1) 極端紫外(EUV)の4-20nm波長領域の高波長分解高分散分光器の製作を行った。高分散の回折格子は、2300 lines/mm の不等間隔溝ホログラフィックラミナータイプのものを島津製作所と共同で設計、作成し、分光器に設置した。 (2) レーザー生成プラズマからの準連続スペクトル構造UTAを計測するため、レーザー生成プラズマ実験システムを構築し、本課題で製作した高分解高分散分光器を接続できる状態に到達した。。 (3) 核融合研の大型ヘリカル装置(LHD)を使ったプラズマ実験を行い、タングステンや希土類などをペレットで入射し、多様な電子温度や密度におけるEUV領域のスペクトルを計測した。既存のスペクトルデータを精査し、極端紫外・軟X線領域で主要なスペクトル構造の原子番号依存性の解析を進展させた。その結果、ランタノイド元素などの、銅様、亜鉛様、ガリウム様イオンを中心とした多数のスペクトル線が新たに同定された。また、電気通信大学の電子ビームイオントラップTokyo-EBITと既存の極端紫外分光器を用いて、タングステン多価イオンの5nm近傍のUTA構造に関する分光測定を継続して行った。価数依存をより詳しく見るために、昨年度より広範な電子ビーム範囲での観測を行った。関連して、Euなどの極端紫外分光を特にGa様近辺の価数のイオンについて行った。昨年度より波長範囲を広げて測定を行った。 (4) 第一原理計算を進め、タングステン21価イオンの原子構造、放射遷移確立などの原子データの計算を行い、衝突輻射モデルの構築を進めた。 (5) EUV光源用Sn-希土類多価イオンの原子モデルの物理シミュレーション及びデータ科学的な研究を行なった。多価イオンの多数のエネルギー状態の中からポピュレーション、スペクトルに効果の大きい状態を見出すアルゴリズムの開発と検証を行なった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
(1) EUV用高波長分解高分散分光器を製作、完成することができた。 (2) レーザー生成プラズマ実験システムも完成し、本課題で製作した分光器を接続することが可能になった。 (3) LHD実験によりタングステン等重元素のスペクトルがさらに計測でき、理論モデル、統計モデルとの比較のためのデータが蓄積できた。これまでのデータを用いた原子物理学の理論モデルとの比較検証も実施できた。Tokyo-EBITを用いた実験も順調に進んでいる。 (4) 第一原理計算もおおむね順調に進んでいる。 (5) データ科学的な観点でのスペクトルモデルの構築及びシミュレーション研究を進めることができた。
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今後の研究の推進方策 |
(1) 昨年度完成した高波長分解高分散分光器に対し、分子科学研究所のUVSOLを用いて感度較正を行い、そののち、レーザー生成プラズマ実験システムを用いて、重元素プラズマの分光計測を行い、動作確認と初期計測を実施し、その性能の確認を行う。令和6年度に電気通信大学のTokyo-EBITに移設して計測を行う準備を進める。 (2) 令和5年度中にレーザー生成プラズマを用いて様々な元素のEUVスペクトルの計測を行い、データを蓄積する (3) LHDは今年度は年度末にのみ実験を予定しているため、マシンタイムの取得は困難と考える。したがって、過去に取得したLHDのデータの整理を進める。Tokyo-EBITは、既存の分光器で測定を進める。 (4) 第一原理計算に基づくモデルは、タングステンのさらに価数を低い領域へ拡大するとともに、希土類などのモデル整備を進める。UTA統計理論構築のための検討材料とする。統計モデル検討において、第一原理計算との比較とともに、スペクトルの波長方向に関する分布形状について検討を行う。 (5) データ科学的な手法を用いて構築したモデルを拡張し、EUV光源用Sn-希土類からWまでの多価イオンからの原子構造、発光スペクトルの物理的、統計的性質に基づくモデリングの研究と、その結果を元にしたスペクトル解析のためのツール研究開発を行う。
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