研究課題/領域番号 |
21H04462
|
研究種目 |
基盤研究(A)
|
配分区分 | 補助金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
中区分15:素粒子、原子核、宇宙物理学およびその関連分野
|
研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
郡司 卓 東京大学, 大学院理学系研究科(理学部), 准教授 (10451832)
|
研究分担者 |
大山 健 長崎総合科学大学, 工学研究科, 教授 (10749047)
関畑 大貴 東京大学, 大学院理学系研究科(理学部), 特任助教 (70844794)
|
研究期間 (年度) |
2021-04-05 – 2026-03-31
|
研究課題ステータス |
交付 (2024年度)
|
配分額 *注記 |
41,860千円 (直接経費: 32,200千円、間接経費: 9,660千円)
2024年度: 7,020千円 (直接経費: 5,400千円、間接経費: 1,620千円)
2023年度: 8,060千円 (直接経費: 6,200千円、間接経費: 1,860千円)
2022年度: 8,580千円 (直接経費: 6,600千円、間接経費: 1,980千円)
2021年度: 11,050千円 (直接経費: 8,500千円、間接経費: 2,550千円)
|
キーワード | 高エネルギー原子核衝突 / クォーク・グルーオン・プラズマ / 強相関系 / 相対論的流体力学 / 粒子検出器やデータ処理 |
研究開始時の研究の概要 |
LHC加速器を用いた高エネルギー原子核衝突は、ビッグバン直後の極初期宇宙状態を再現し、クォークが閉じ込めから解放された「クォーク・グルーオンプラズマ(QGP)」を生成する。QGP物理に特化したLHC-ALICE実験は、QGP物理のさらなる飛躍を目指し、検出器群の大規模高度化を進めている。これまでのTPC測定器の高度化開発実績とALICE実験内の先導性を踏まえ、QGP物性における新たな探針「重クォークと電子対」の高精度測定を推進する。従前の100倍以上の高統計データを取得し、QGPの熱力学性質、流体的時空発展、QGPが持つ輸送特性の温度依存性を解明し、素粒子が支配する強相関系の全容を解明する。
|
研究実績の概要 |
本研究にて着目する「重クォークと電子対」の高精度測定を可能にすべく、2023年は以下の研究活動を行った。(1) LHC Run2の実験データ解析の仕上げと出版論文。2023年からの本格的なデータ収集を前にして、2016-2018のデータを用いた電子対解析を仕上げ、2本の論文を纏めた。1本は、鉛+鉛衝突における電子対測定であり、高温クォーク物質中からの輻射のヒントを得る結果を出した。特に、重クォークからのバックグランドを除去する試みをDCAカットによって初めて試験し、今後の高統計データと高度化された検出器によって、今後の高精度な測定に向けた見通しを得た。現在、出版論文に投稿中であり、査読結果を待っている。もう一本は、陽子+陽子衝突の高粒子多重度中における熱的クォーク物質の生成可能性に迫る初めての論文である。熱的クォーク物質の生成と無矛盾であるが、統計的な優位性はなく、今後の高精度測定が大いに期待される。この論文は、ALICE実験内の査読中であるが、近いうちに投稿される。これらの高精度測定を、今後取得されるデータを用いて進める。(2) 2023年のデータ収集とデータ校正。2023年の陽子+陽子衝突と鉛+鉛衝突のデータ収集を現場にて進めた。関畑はランマネージャーを務め、現場での円滑なデータ収集を指揮した。関畑を中心に、電子対の解析フレームワークの整備を引き続き行い、2023年度は、電子対を使った外部変換光子の再構成のフレームワークに関して、大きな進展があった。2023年度の陽子+陽子衝突データで、中性π中間子やη中間子の再構成を確認している。鉛+鉛衝突データの解析に関しては、本格的なデータ解析を進めるべく、その事前段階として、TPCのデータ校正やモンテカルロシミュレーションの調整などを進めた。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
2023年度に、LHC第3期運転が本格的に始動し、ALICE実験も陽子+陽子衝突と鉛+鉛衝突の物理データの取得を開始した。関畑を中心として、電子対を使った外部変換光子の再構成のフレームワークを新たに実装し、仮想光子や実光子の両面から、クォーク物質の熱力学的性質に迫る準備を進めている。陽子+陽子衝突データに対しては、電子対の不変質量分布を既に算出し、かつ、DCAカットを用いて重クォークからのバックグランドを新たに除去するなど、これらの性能を、ALICE performanceとして、様々な国際会議で報告している。 更に、2023年末に取得された鉛+鉛衝突データのデータ校正や解析も進みつつある。解析準備としては、順調に進展している。また、関畑は現場に てランマネージャーを務めるなど、実験運用にも大きく寄与している。2023年度の鉛+鉛衝突データは、目標とするデータ量には届かなかったものの、2024年と2025年のランで十分に取得可能である。
|
今後の研究の推進方策 |
2024年度は、2023年度に引き続き、最高エネルギーでの陽子+陽子衝突に加えて、最高エネルギーでの鉛+鉛衝突が行われる予定である。衝突頻度は、 2023年度と同様に、LHC Run2(2015-2018)の5倍であり、データに関しては、連続読み出しとリアルタイム処理により、Run2の100倍を見込む。2024年度の研究推進方策は、 陽子+陽子衝突と鉛+鉛衝突のデータ解析を本格化させることである。高レートの陽子+陽子衝突データに対するデータ解析を進め、特に高粒子多重度における熱的クォーク物質の生成を検証する。鉛+鉛衝突データに対しては、品質確認やキャリブ レーションなどを完了し、データ解析を本格化させ、Run2を凌ぐ高精度な電子対測定を進め、熱的クォーク物質からの輻射を捉える。さらに、重クォークペアのクォーコニウムの解析へと進み、量子開放系の物理を進めたいと思っている。
|