研究課題/領域番号 |
21H04463
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研究種目 |
基盤研究(A)
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配分区分 | 補助金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
中区分15:素粒子、原子核、宇宙物理学およびその関連分野
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
鳥居 寛之 東京大学, 大学院理学系研究科(理学部), 准教授 (20302838)
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研究分担者 |
神田 聡太郎 大学共同利用機関法人高エネルギー加速器研究機構, 物質構造科学研究所, 助教 (10800485)
西村 昇一郎 大学共同利用機関法人高エネルギー加速器研究機構, 物質構造科学研究所, 特別助教 (20836431)
下村 浩一郎 大学共同利用機関法人高エネルギー加速器研究機構, 物質構造科学研究所, 教授 (60242103)
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研究期間 (年度) |
2021-04-05 – 2024-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
42,640千円 (直接経費: 32,800千円、間接経費: 9,840千円)
2023年度: 9,360千円 (直接経費: 7,200千円、間接経費: 2,160千円)
2022年度: 13,130千円 (直接経費: 10,100千円、間接経費: 3,030千円)
2021年度: 20,150千円 (直接経費: 15,500千円、間接経費: 4,650千円)
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キーワード | ミュオニウム原子 / 超微細構造 / 強磁場 / マイクロ波分光 / Rabi振動分光 / NMRプローブ |
研究開始時の研究の概要 |
ミュー粒子(ミュオン)と電子からなるミュオニウム原子の基底状態超微細構造を強磁場中でマイクロ波分光する。分光精度 2 ppb、ミュー粒子の磁気モーメントおよび質量の決定精度 15 ppb を目指す。J-PARC 加速器施設で供給される大強度ビームを利用し、ゼロ磁場での測定のノウハウを生かしつつ、新たに編み出したRabi振動分光法を活用することで、統計的にも系統的にも不確かさの抑制が期待できる。従来の精度を一桁凌駕することで、原子束縛系におけるこれまでの量子電磁力学の検証を超えて、電弱相互作用の効果を観測でき、更には素粒子標準理論を超えた新物理の探索が見通される。
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研究実績の概要 |
本研究は正電荷ミュオンと電子のクーロン束縛系であるミュオニウム原子について、基底状態の超微細構造をマイクロ波によるRabi振動分光を駆使して世界最高の 2 ppb の精度で分光し、ミュオンの磁気モーメントおよび質量を決定することを目指している。 強磁場環境での測定では 1.7 T の静磁場中でのゼーマン分裂を利用する。すなわち、遷移周波数が磁場に依存するため、この静磁場の不均一性および時間変動、絶対値校正が系統的不確かさの主要な要因となる。最終的に目標とする測定精度を達成するためには、クリプトンガス中で生成するミュオニウムが分布するラグビーボール大の空間全体にわたって、±0.1 ppm の磁場均一度と絶対値の精度で 10 ppb を達成する必要があり、そのための高精度磁場測定器の開発を進めた。この測定器は空間分布測定用、絶対値校正用、時間変動測定用の三つの装置から構成される。空間分布用測定器は半月状に配置した 24 個の NMR プローブとその回転機構からなる。半月を回転させることで楕円体面上の磁場分布を測定する。当該年度の研究により、プローブ単体の開発を終え、空間分布測定器の多チャンネルシステムの動作試験を繰り返して改良した結果、多チャンネル化に伴うチャンネル間のクロストークを十分に低減できるようになった。1.7 T の磁場の均一度はこれまでに直径 200 mm、長さ 300 mm の回転楕円体の領域に対して,0.2 ppm 以下という性能を達成している。また、絶対値校正用の測定器については、米国のグループとも共同で開発を進め、これまでに 18 ppb の絶対精度を達成した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
強磁場中でのミュオニウム原子のマイクロ波分光をいよいよ本格的に開始する予定であったが、いかんせん、ミュオンビームを供給する J-PARC 加速器施設に建設中だった大強度ミュオン H ビームラインの完成が遅れ、ビーム引き出しの調整開始がずれ込む結果となった。高統計の実験により分光の測定精度を飛躍的に向上させる計画の前提として、J-PARC の大強度ビームは必須であるため、その後始まったビームラインの調整に協力しつつ、予定されたビーム強度の達成を見守らざるを得ない。そのため我々実験者側としては、それまでの間、強磁場での実験を延期して、D ビームラインを活用したゼロ磁場中での超微細構造分光実験を継続して実験することとし、その条件下で更に系統的不確かさを抑えて精度を高める努力を続けた。 また、その間に、実績の概要に述べたように NMR プローブの精度向上と多チャンネル化の開発を順調に進めた。
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今後の研究の推進方策 |
ミュオン H ビームラインから実験ユーザー向けに高統計の大強度ビームが供給できるような状況になり次第、強磁場中での実験が開始できるように引き続き準備・調整を進める。また、NMRプローブを24チャンネル組み上げて磁場空間分布測定器のシステムとし、1.7 T 磁場中における磁場分布の高精度測定に利用する。 また、磁場による相対不確かさの一層の低減が期待できる 2.9 T の強磁場中で測定を行えるようにするため、既存の円筒形マイクロ波キャビティー(空洞共振器)の検討を進め、電磁場計算シミュレーションを駆使して方形共振器を開発する。 計画通りの大高度ビームを利用して実験できれば、分光精度において20年前の米国での記録を超えることが見通せる。
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