研究課題/領域番号 |
21H04473
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研究種目 |
基盤研究(A)
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配分区分 | 補助金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
中区分15:素粒子、原子核、宇宙物理学およびその関連分野
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研究機関 | 岡山大学 |
研究代表者 |
吉村 浩司 岡山大学, 異分野基礎科学研究所, 教授 (50272464)
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研究分担者 |
北尾 真司 京都大学, 複合原子力科学研究所, 准教授 (00314295)
菊永 英寿 東北大学, 先端量子ビーム科学研究センター, 准教授 (00435645)
重河 優大 国立研究開発法人理化学研究所, 仁科加速器科学研究センター, 特別研究員 (60845626)
笠松 良崇 大阪大学, 大学院理学研究科, 教授 (70435593)
山口 敦史 国立研究開発法人理化学研究所, 開拓研究本部, 専任研究員 (70724805)
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研究期間 (年度) |
2021-04-05 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2024年度)
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配分額 *注記 |
42,250千円 (直接経費: 32,500千円、間接経費: 9,750千円)
2024年度: 6,240千円 (直接経費: 4,800千円、間接経費: 1,440千円)
2023年度: 8,320千円 (直接経費: 6,400千円、間接経費: 1,920千円)
2022年度: 10,790千円 (直接経費: 8,300千円、間接経費: 2,490千円)
2021年度: 16,900千円 (直接経費: 13,000千円、間接経費: 3,900千円)
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キーワード | 原子核時計 / トリウム / レーザーによる原子核操作 / 真空紫外レーザー分光 / 物理定数の時間変化 / 物理定位数の時間変化 / 核共鳴散乱 / イオントラップ / レーザ-による原子核操作 |
研究開始時の研究の概要 |
トリウムの同位体Th-229はすべての原子核の中で唯一 8 eV程度の励起準位(アイソマー準位)を持ち、レーザー光で励起可能な原子核として注目を集めている。本研究では、我々が確立した Th-229基底状態からアイソマー準位を生成することが可能な「能動的アイソマー生成法」を基軸として、放射化学的手法による核壊変の解明、イオントラップによる操作、および真空紫外レーザー分光技術を加えた、国内の4つの関連研究・技術を結集することにより、世界に先駆けてレーザーによる原子核操作を実現するとともに、その過程で得られた知見をもとに、原子核時計実現に向けたブレークスルーを達成することを目標にする。
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研究実績の概要 |
本研究では、以下のような研究項目に対して、段階的かつ相互に連携しながら研究をすすめることにより、レーザーによるコヒーレントな原子核操作を実現し、研究目的の達成を目指す。以下にそれぞれの研究内容について本年度の研究成果を述べる。 【アイソマー準位からの真空紫外光遷移の観測】 新たにウィーン工科大学が開発したトリウム229の濃度を高めた結晶を用い,X線モノクロメータをより高精度なものに変えることにより探索感度を向上させることで、アイソマー準位からの真空紫外光の観測に成功した。X線のエネルギーを核共鳴散乱の共鳴エネルギー付近で変化させたところ,共鳴エネルギー付近でX線で観測したものと同様の真空紫外光の明瞭なピークを観測した。複数のバンドパスフィルターを用いて波長を選別し、真空紫外光の波長を0.4 nmの精度で決定し、アイソマー状態の半減期を高精度で測定することに成功した。 【X線ビーム照射によるクエンチ現象の発見】 X線の照射時間を変化させながら、真空紫外光の強度の変化を調べたところ、X線を照射することによってアイソマー状態が通常の寿命よりも速く崩壊する現象(クエンチ現象)が観測された。現在X線がクエンチ現象を引き起こすメカニズムとその温度による影響などの詳細なスタディを行っている。 【イオントラップを用いたアイソマー準位の確認】 開発したイオントラップにトリウム229イオンをトラップしてレーザー分光することにより、アイソマー状態のイオンを選択的にとりだすことに成功した。これによりトラップしたアイソマー状態の寿命を初めて観測した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
当初、目的としていた真空紫外光の観測に成功し、そのエネルギーと寿命を精密に決定することができ、研究目標としていた大きなマイルストーンを達成した。また、イオントラップの実験でも、トラップされたアイソマー状態のイオンの寿命を初めて観測し、その結果をNature誌に発表した。さらに当初予期していなかったX線照射によるアイソマーのクエンチ現象を世界で初めて観測した。これにより、固体結晶中のアイソマー状態をコントロールできる可能性を示した。以上のように、各研究項目について当初の計画以上に進展している。
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今後の研究の推進方策 |
今後は、各研究項目で得られた成果・知見をもとに、さらに連携を深めて、アイソマーからの脱励起真空紫外光のスタディ,イオントラップ実験を行っていく。 【能動的アイソマーの生成法の進化による真空紫外光の観測】 前年度に観測に成功した真空紫外光に対して,その詳細なスタディを行う。まず,X線モノクロメータをさらに高精度化すると共に、光学結晶試料を低温に冷却することにより,真空紫外光の特性(強度,時間応答)の変化をスタディする。 【アイソマーのクエンチ現象のメカニズムの解明】 前年度に初めて観測された、X線照射中のアイソマー寿命の減少(アイソマークエンチ現象)を解明する。X線照射時に結晶中に発生する現象をさまざまなプローブで捉え、クエンチ現象のメカニズムの解明を行う。 【イオントラップを用いた229Th 原子核時計基盤技術の確立】 イオントラップの高性能化を進めて、波長1088 nm,690 nm, 984 nm の半導体レーザーを用いたレーザー冷却を目 指す。 【真空紫外レーザー開発と229Th レーザー分光】アイソマーへの確実な励起を行うことが可能なパルスレーザーシステムを開発する。約10MHzの周波数幅をもつレーザーを開発し、トリウムドープ結晶、イオントラップを用いたレーザー励起を行い、アイソマー状態のさらなる詳細なスタディを行う。
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