研究課題/領域番号 |
21H04483
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研究種目 |
基盤研究(A)
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配分区分 | 補助金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
中区分15:素粒子、原子核、宇宙物理学およびその関連分野
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研究機関 | 大学共同利用機関法人高エネルギー加速器研究機構 |
研究代表者 |
野村 正 大学共同利用機関法人高エネルギー加速器研究機構, 素粒子原子核研究所, 准教授 (10283582)
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研究分担者 |
松村 徹 防衛大学校(総合教育学群、人文社会科学群、応用科学群、電気情報学群及びシステム工学群), 応用科学群, 准教授 (00545957)
山中 卓 大阪大学, 大学院理学研究科, 教授 (20243157)
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研究期間 (年度) |
2021-04-05 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2024年度)
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配分額 *注記 |
35,880千円 (直接経費: 27,600千円、間接経費: 8,280千円)
2024年度: 5,330千円 (直接経費: 4,100千円、間接経費: 1,230千円)
2023年度: 4,940千円 (直接経費: 3,800千円、間接経費: 1,140千円)
2022年度: 18,590千円 (直接経費: 14,300千円、間接経費: 4,290千円)
2021年度: 7,020千円 (直接経費: 5,400千円、間接経費: 1,620千円)
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キーワード | 中性K中間子 / 稀崩壊 / ビームライン / 中性ビームライン |
研究開始時の研究の概要 |
本研究はCP対称性を破る中性K中間子の稀崩壊過程の研究を通して素粒子標準理論を超える新物理の探索を行うものである.この崩壊過程が起こる確率は素粒子標準理論で精度良く予言されており,もし多寡があれば標準理論を超える新しい物理の寄与を示唆し,現在の宇宙における粒子・ 反粒子のアンバランスの起源解明にインパクトを与える.現在推進中の実験研究(J-PARC KOTO実験)では世界最高の探索感度に到達し,信号発見を目指している.本研究では,中性K中間子を生成するビームラインに新機能を加えることを軸として,背景事象の削減と評価方法を強化し,信号発見能力を高める計画である.
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研究実績の概要 |
本研究は,中性K中間子の非常に稀な崩壊過程を探索する実験研究(J-PARC KOTO実験)において,中性ビームラインの高機能化を通して背景事象の理解と定量評価を進め,信号発見能力を高めることを目的としている. 2023年度の実績として,第一には,2021年度に取得したデータの解析をさらに進め,稀崩壊探索のデータ解析結果を国際会議などで公表するに至った.中性K中間子が中性パイ中間子とニュートリノ・反ニュートリノ対に崩壊する過程の探索として世界最高となる感度を実現し,分岐比上限値として100億分の2より小さいことを予備的な結果として示した.2023年度末においては,この結果に関する投稿論文を準備中である. 第二に,ビームライン出口付近にて中性ビーム中に設置している荷電粒子検出器の薄型化と信号・ノイズ比の改善を行った.6月にビームデータ収集を行い,検出器更新後の検出効率を評価し,以前の探索で主要な要素であった荷電K中間子に起因する背景事象に対する削減能力を評価した.同時に,薄型化によって中性ビームの散乱を期待通りに減少させていることを確認した. 第三に,夏季の加速器運転休止中に,ビームラインコリメータの増強を行なった.中性ビームライン中にわずかに混入する荷電K中間子をビーム領域から掃き出すための永久磁石の新設,磁石中に挿入するコリメータ内蔵ダクトの導入,コリメータと磁石間隙の位置合わせのための駆動システムの設置を遂行した.加えて,ビームライン領域の真空機器の安定運転を目的として,磁気浮上型ターボ分子ポンプの導入など,真空排気系の増強を行なった.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
2023年度前半までに完了させるよう計画していたビームライン高機能化の作業を予定通り夏季に遂行し,ビームデータを用いたビームライン性能評価と中性K中間子稀崩壊のさらなる探索の準備を完了できている。また,2021年度に取得したデータによる探索結果を出し,世界最高感度を得て,結果の公表につなげることができた.ただ,本研究を実施している施設において,ビーム運転に用いられていた電源機器にて焼損事象が発生しため,年度前半のビーム供給がごく短期で停止し,かつ,対策や点検を要するため,年度後半に期待していたデータ収集は叶わなかった.しかしながら,2024年度前半には運転再開が期待され,全体計画としては遅れなく対応できる範囲内と考えている.
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今後の研究の推進方策 |
最終年度である2024年度には,高機能化したビームラインの性能をビームを用いて評価する.荷電K中間子の削減量や中性子・中性K中間子のビーム領域からの漏れ出し量を測定し,背景事象削減能力への影響を評価する.また,背景事象排除の鍵となるガンマ線検出器の性能評価を詳細に行うためのデータを収集し,高統計データを用いた検出効率の評価を通して,探索における背景事象評価の系統誤差を低減する. これらのデータは稀崩壊過程の探索データの収集と同時に行うことが可能で,2024年度に期待されるデータ収集に基づき,探索感度をさらに上げていく計画である.加えて,2021年度に取得したデータに基づく探索結果やミューオンフラックス測定の結果などを記した論文を準備中で,2024年度中に投稿する予定である.
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