研究課題/領域番号 |
21H04484
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研究種目 |
基盤研究(A)
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配分区分 | 補助金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
中区分15:素粒子、原子核、宇宙物理学およびその関連分野
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研究機関 | 国立研究開発法人理化学研究所 |
研究代表者 |
後藤 雄二 国立研究開発法人理化学研究所, 仁科加速器科学研究センター, 先任研究員 (00360545)
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研究分担者 |
中川 格 国立研究開発法人理化学研究所, 仁科加速器科学研究センター, 専任研究員 (60505668)
毛受 弘彰 名古屋大学, 宇宙地球環境研究所, 助教 (10447849)
谷田 聖 国立研究開発法人日本原子力研究開発機構, 原子力科学研究部門 原子力科学研究所 先端基礎研究センター, 研究主幹 (00360587)
三塚 岳 大学共同利用機関法人高エネルギー加速器研究機構, 加速器研究施設, 准教授 (00566804)
中條 達也 筑波大学, 数理物質系, 講師 (70418622)
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研究期間 (年度) |
2021-04-05 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2024年度)
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配分額 *注記 |
41,860千円 (直接経費: 32,200千円、間接経費: 9,660千円)
2024年度: 5,720千円 (直接経費: 4,400千円、間接経費: 1,320千円)
2023年度: 9,750千円 (直接経費: 7,500千円、間接経費: 2,250千円)
2022年度: 14,040千円 (直接経費: 10,800千円、間接経費: 3,240千円)
2021年度: 12,350千円 (直接経費: 9,500千円、間接経費: 2,850千円)
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キーワード | 偏極陽子衝突 / 超前方領域 / 粒子生成 / 非対称度 |
研究開始時の研究の概要 |
我々はスピンの向きをそろえた(偏極した)陽子同士の衝突により、衝突位置の超前方に生成される中性パイ中間子が大きな左右非対称度を持つことを発見した。陽子衝突での粒子生成に対する理論・計算の構築は積年の研究課題であり、高エネルギーの宇宙線が大気中で起こす空気シャワーの理解のためにも、その発展が望まれている。本研究では新たな大きな検出器を建設して偏極陽子と陽子及び原子核との衝突実験を行い、この粒子生成の起源を解明する。大きな検出器により新たな粒子(中性K中間子、ラムダ粒子)についても生成断面積、左右非対称度、原子核の核種依存性を測定し、さらに他の検出器で測定された粒子との相関を調べる。
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研究実績の概要 |
RHIC偏極陽子衝突による超前方領域での粒子生成の起源の研究・解明を目標とし、新たなカロリメータ検出器を開発・建設しRHICでの実験を行い、新たな測定を行うことにより目標を達成する。新たなカロリメータ検出器のためのシリコン検出器の開発を進めている。プロトタイプ検出器の製作と、そのテスト、評価を実験室及び東北大ELPH施設やCERN-PSおよびSPS加速器でのテストビーム、理研小型中性子照射施設での放射線耐性テストを進めた結果、実際の検出器に用いるシリコン検出器の技術の選択がほぼ終了し、次の段階の検出器の製作を開始する目途が立った。 テストの結果は学会や研究会、国際会議で発表され専門家の評価を得て、さらに共同実験グループ内でのレビューを行っている。評価はソフトウェアを含む最終的な検出器を想定したシミュレーション計算によっても行われ、全ての結果は技術報告書にまとめられ、研究会や会議の会議録として公表もされている。 また2017年のRHICでの実験データの解析も順調に行われている。既に得ている中性パイ中間子の非対称度に加えて、光子の生成断面積、中性子の非対称度の解析がほぼ終了し、既に学会や研究会、国際会議で発表されている。光子の生成断面積はCERN-LHCのより高エネルギーでの陽子衝突の結果との比較が行われ、衝突エネルギーに依らないスケーリング則を支持する結果となっている。この結果は超高エネルギーの宇宙線の大気との衝突事象を再現するための事象生成コードの開発に必要な新しいデータとなる。中性子の非対称度としては高い統計量のデータ解析により、予定していた高い分解能で広範囲の横運動量領域を覆う結果と得ており、大きな非対称度を示すたいへん興味深いデータを示している。またこれらの非対称度の起源を探る理論研究も行われ、実験データとの比較を進めている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
研究計画では新たなカロリメータ検出器の開発・建設のためのシリコン検出器のセンサーや電子回路部品や基板の評価はプロトタイプ検出器のテストにより2021年度中に行われ、技術の選択を行い次の段階の検出器のためのセンサー、電子回路部品、基板の製作を行う予定であったが、コロナ禍の影響による実験室やテストビームを用いたテストやシリコン材料や機器の供給不足の問題もあり遅れた結果、2022年度に持ち越し、現在一部の電子回路部品の購入、組み立ておよびカロリメータ検出器のエネルギー吸収層として用いるタングステンの加工、購入を行った。 テストの結果は学会や研究会、国際会議で発表され専門家の評価を得て、さらに共同実験グループ内でのレビューを行っている。評価はソフトウェアを含む最終的な検出器を想定したシミュレーション計算によっても行われ、全ての結果は技術報告書にまとめられ、研究会や会議の会議録として公表もされている。論文として出版する準備も進めている。 研究計画においてまだ達成されていない項目として2024年にRHICで行う実験に対する承認の遅れがある。この承認が得られないと現場での検出器の設置や運用の計画を立てることができないため、この承認過程を進める方策が必要である。 研究計画に含まれる2017年のRHICでの実験データの解析については順調に進んでいる。光子の生成断面積、中性子の非対称度の解析がほぼ終了し、既に学会や研究会、国際会議で発表されている。どちらの実験データもたいへん興味深い結果を示しており、理論研究も順調に行われ実験結果との比較を進めている。どちらも最終結果を論文として出版する準備を進めている。
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今後の研究の推進方策 |
研究計画は当初より遅れているが、カロリメータ検出器の開発として大きな問題は現在のところない。着々と検出器の建設に向けてシリコンセンサー、電子回路部品、基板の開発を進める。シリコンセンサーについては2023年度に次期センサーの製作を行い、またその後の方針についても概ね定まっている。電子回路部品、基板を製作し、検出器の組み立ても2023年度に開始する計画である。 これらの検出器に対する実験室及び東北大ELPH施設やCERN加速器でのテストビーム、理研小型中性子照射施設での放射線耐性テストを引き続き行い評価を進める。その後の検出器の設置、運用についての準備、関係者との議論も進める。RHICで行う実験の承認の遅れに対しては、CERNでの検出器の調整を行い、衝突実験による先行・予備的データを取得し、限定されたデータとはなるが、目的の一部を達成する可能性を考える。 これまでの検出器開発に対する結果および2017年のRHIC実験データ解析の結果の出版の準備は順調に進んでおり、問題なく進むと考えている。光子、中性パイ中間子、中性子の断面積、非対称度のデータ解析については最前方検出器と中央検出器を組み合わせた解析を新たに開始しており、理論研究とともにさらに進める。
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