研究課題
基盤研究(A)
ニュートリノ質量の起源の探査は素粒子標準模型を超えた物理学の探究である。その有力な観測手段が宇宙マイクロ波背景放射(CMB)偏光の精密観測であり、大角度(>10度)と小角度(~0.1度)の両方で精度向上が求められる。本研究では、先行開発したCMB望遠鏡GroundBIRD、同サイトのQUIJOTE望遠鏡のデータを統合し、大角度スケールのCMB偏光観測を世界最多の8帯域で実現する。これにより、感度制限の主要因であった「前景放射」(銀河放射)の影響除去を図り、かつ、望遠鏡の同時較正と帯域間相関によるデータ統合解析法を確立し、ニュートリノ質量和測定の鍵を握る宇宙論パラメータτの測定展望を確認する。
昨年度に問題が発生したチラーの液漏れトラブルについて、問題箇所の検査を行った結果、チラーのジョイント部に負荷が掛かっていたことが疑われたため、別部品を追加して負荷を軽減するとともに、チラー内部のホースのジョイントも改めてケアし、問題を解決した。また、この望遠鏡停止期間を活用して、望遠鏡本体を架台からおろして望遠鏡内部のアップグレードを行った。具体的には、焦点面にSRON製のフルアレイ(110 GHz: 23素子×6ユニット=138素子、220 GHz: 23素子×1ユニット)を2023年5月にインストールした。これらの素子は、2準位(TLS, Two-Level System)雑音の混入を最小限に抑え、感度を最大化するように設計・最適化した。これに合わせて読み出し系も増強し、性能試験を行った。いくつかの素子で不具合は見られたものの、80%以上のピクセルが動作していることが確認された。これを受けて、望遠鏡を毎分20回転の高速で回転させながらの科学観測を開始し、月、及び、木星を用いた撮像状況の確認やデータ解析法の改良も進めた。望遠鏡の制御には開発してきた遠隔観測システムを用いており、日本からでも遠隔で行うことが可能となっている。また、取得データを格納するためのサーバを現地(IAC)に新たに導入して、連続観測実験の環境を整えた。一方、望遠鏡に搭載した冷凍機ヘッドにHeガスを供給するロータリージョイントに不具合が生じたため交換作業を進めており、これが終わり次第、観測実験を再開する予定である。
3: やや遅れている
昨年度のチラートラブルに加えて望遠鏡のロータリージョイントのトラブルが発生して観測実験のスケジュールが遅れたものの、フルユニットの焦点面へのインストールと必要な読み出しシステムの増強、さらに、データストレージのインストールなど、本観測のための準備はほぼ整ってきている。
上記のように、昨年度に問題が発生したチラーの液漏れトラブルについて問題を解決するとともに、望遠鏡停止期間を活用して、焦点面にSRON製のフルユニットをインストールした。これに合わせて読み出し系も増強し、性能試験を行い、月、及び、木星を用いた撮像試験をすでに取得済みである。また、取得データを格納するためのサーバを現地(IAC)に新たに導入しており、また、雑音低減のための解析方法の検討やデータ較正についても知見が積み上げられてきている。これらのことから、繰越を行った令和6年度に観測データの蓄積と解析を実行できる見込みである。
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