研究課題/領域番号 |
21H04488
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研究種目 |
基盤研究(A)
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配分区分 | 補助金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
中区分16:天文学およびその関連分野
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研究機関 | 筑波大学 |
研究代表者 |
大須賀 健 筑波大学, 計算科学研究センター, 教授 (90386508)
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研究分担者 |
秦 和弘 名古屋市立大学, 大学院理学研究科, 准教授 (60724458)
當真 賢二 東北大学, 学際科学フロンティア研究所, 教授 (70729011)
高橋 博之 駒澤大学, 総合教育研究部, 准教授 (80613405)
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研究期間 (年度) |
2021-04-05 – 2026-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2024年度)
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配分額 *注記 |
40,690千円 (直接経費: 31,300千円、間接経費: 9,390千円)
2024年度: 9,490千円 (直接経費: 7,300千円、間接経費: 2,190千円)
2023年度: 9,490千円 (直接経費: 7,300千円、間接経費: 2,190千円)
2022年度: 10,140千円 (直接経費: 7,800千円、間接経費: 2,340千円)
2021年度: 5,460千円 (直接経費: 4,200千円、間接経費: 1,260千円)
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キーワード | ブラックホール / ジェット / 降着円盤 / 数値シミュレーション / ブラックホールジェット / 大規模数値シミュレーション / 高精度観測 |
研究開始時の研究の概要 |
超大規模数値計算と超高精度観測の融合により、ブラックホールジェットの駆動機構と多様性の起源を、ブラックホール降着円盤もろとも解明するのが本研究の目的である。大規模な一般相対論的輻射磁気流体シミュレーションを実施してジェットと円盤を徹底的に調査し、シミュレーション結果をもとにした一般相対論的輻射輸送計算で、偏光分布も含めた撮像イメージおよび輻射スペクトル、それらの時間変動を理論的に予言する。理論予測と最新の観測データを直接比較することで、ジェットの多様な駆動機構を突き止める。宇宙に存在する全てのブラックホール天体の統一的理解、巨大ブラックホールの形成史の解明に向けた基盤的研究である。
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研究実績の概要 |
ブラックホール降着円盤と、そこから噴出するジェットの一般相対論的輻射磁気流体力学シミュレーションを実施した。ここでは、多様なブラックホール天体のうち、特に光度の大きな天体をターゲットとしている。ブラックホールのスピンパラメータを変えたシミュレーションを実行した結果、スピンパラメータが大きいほどエネルギー変換効率が高いという結果を得た。特に、ポインティングフラックスによるエネルギー放出が、ブラックホールスピンに強く依存することがわかった。無回転ブラックホールの場合、降着円盤は主に輻射でエネルギーを失うが、高速回転するブラックホールの場合、ポインティングフラックスによるエネルギー放出が、輻射によるエネルギー放出を超える。これはブランドフォード・ナエック機構によって、ブラックホールの回転エネルギーが磁場を介して引き抜かれているためと解釈できる。ブランドフォード・ナエック機構が、高光度降着円盤でも有効に働くことを実証したのは本研究が世界で初めてである。 また、輻射場を高い精度で算出するタイプの一般相対論的輻射磁気流体力学シミュレーションを実施し、近似法を導入した従来のシミュレーションと結果を比較した。その結果、円盤の回転軸付近で輻射場が大きく異なることがわかった。高精度なシミュレーションで得られた輻射場は比較的等方であるが、近似法を駆使したシミュレーションでは、円盤に垂直な方向に輻射が流れやすいことが分かった。近似を用いた従来の計算法でも、円盤や円盤風の大まかな構造を知ることはできるが、ジェットの加速など、回転軸近傍の現象を正確に解くには精度の高い新たなシミュレーションが必要であることが明らかになった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
超臨界降着円盤のシミュレーションは、これまで盛んに実施されてきたが、ほとんどの研究が無回転ブラックホールを対象としたものであり、回転するブラックホール周囲の研究はまだまだ不十分であった。我々は、回転するブラックホール周囲の超臨界降着円盤のシミュレーションを実行することで、超臨界降着円盤およびアウトフローの構造やダイナミクスのブラックホールスピン依存性を世界で初めて明らかにした。低光度降着円盤については多くの研究グループによって調べられているが、高光度円盤をシステマティックに調査したのは本課題が初である。 また、新規に開発した一般相対論的輻射磁気流体力学シミュレーションコードによる大規模数値シミュレーションにも成功し、従来の計算法を定量的に検証することにも成功した。新規コードの最適化も順調に進んでおり、スーパーコンピュータ「富岳」を用いた超大規模シミュレーションを実施する目処が立った。 成果は既に論文として出版されており(Utsumi et al. 2023, Asahina et al. 2022)、多くの研究会で成果発表を行った。したがって、概ね順調と判断した。
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今後の研究の推進方策 |
高光度降着円盤とそこから発せられるジェットの一般相対論的輻射磁気流体力学シミュレーションを実施し、ブラックホー ルのスピン依存性についてさらに調査する。これまではブラックホール近傍の磁場が比較的弱い状況について調べてきたが、今後は強磁場の状況について調査をすすめる。強磁場の場合と弱磁場の場合の違いを明らかにし、ブラックホール天体の多様性に磁場強度がどう関係しているのかを明らかにする。 また、ブラックホールのスピン軸と降着円盤の回転軸が一致していない状況での一般相対論的輻射磁気流体力学シミュレーションを実施し、降着円盤の歳差運動について調べる。ジェットの方向が周期的に変わる現象や、X線光度の準周期的振動と、円盤の歳差運動が関係しているのか否かを明らかにする。 これらと並行して、二温度の一般相対論的磁気流体計算コードの開発も行なう。機械学習やGPUを用いて、計算コードの効率を向上させる。シミュレーションは大須賀(代表者)と髙橋(分担者)が行い 、理論モデルとの比較を當真(分担者)が行う。疑似観測の結果と実際の観測データの比較を秦(分担者)が担当する。
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