研究課題
基盤研究(A)
天の川銀河中心領域(GC)から、1億度のX線高温プラズマや、ガンマ線のフェルミバブルが発見されている。これら激しい活動のエネルギー源への解明は、準相対論的粒子が鍵を握る。そこで、中性鉄の多重電離輝線をXRISM衛星で、非熱的制動放射をNuSTAR衛星で探索し、準相対論的粒子の空間分布、エネルギー総量、重イオン組成を決定する。将来のサーベイ観測のためデジタルX線SOIPIX素子を新開発する。
天の川銀河中心領域(GC)から,拡がったX線プラズマの熱的活動や,GeVのフェルミバブルなどの相対論的非熱的活動が発見されている.これらの活動のエネルギー源は何であろうか?この問いに答える鍵は,熱的から非熱的への移行フェーズである準相対論的粒子にある.申請者らは最近,準相対論的粒子からの中性鉄K輝線と,硬X線帯域の非熱的制動放射を初めて検出した.さらに申請者は,準相対論的イオンの多重電離が作る中性鉄KαLi構造の精密分光から,重イオン組成を決める方法を発案した.本研究では,これらの放射成分をXRISMとNuSTARで観測し,準相対論的陽子と電子の空間分布,エネルギー総量,重イオン組成等を初めて決め,GCの高エネルギー活動のエネルギー源に制限を与える.加えて広域サーベイを可能とする広視野・高感度硬X線検出器の実現のため,独自のデジタルX線SOIPIX素子を開発する.今年度は下記の研究活動を行った.(1) 2021年度にXMM-NewtonのGCの全観測データから連続成分および,Mg, Si, S, Feの各放射輝線における広域マップを作成し,Fe-K輝線の透過幅の非常に大きい構造を検出した.今年度,この構造(G0.61+0.01)のXMM-Newtonのデータを詳細に解析するとともに,電波観測との比較を行った.その結果,G0.61+0.01は双極的な運動をするSNRである可能性が高いことを明らかにした.(2) XRISM衛星の観測計画を立案するために,Chandra衛星によって行われたGCの観測データをすべて集め,連続成分および,Mg, Si, S, Feの各放射輝線における広域マップを作成した.(3) 大型X線SOI素子「XRPIX-X」の評価を進め,過去の大型素子「XRPIX7」での課題は解決できたことを確認した.(4) デジタルX線SOIPIX素子用のADC TEGの動作を確認した.
2: おおむね順調に進展している
本研究の推進のために,XRISM衛星の実現が必要であるが,その開発は順調であり,予定通りの2023年度の実現が見込まれており,特に問題はない.X線CCDカメラ「SXI」の準備は完了し,本実績報告を行っている時点で,衛星に搭載され種子島宇宙センターで打ち上げを待っている段階である.XRISMによるGC観測計画立案のために,従来の衛星のGCの観測データの総まとめ解析を開始している,2021年度のXMM-Newtonに続き,2022年度はChandraの解析を行った.G0.61+0.01の解析は修士2年のテーマとして実施,ほぼ終了すると共に,当該学生の修士論文としてまとめることができた.X線SOIPIXの開発は,完成に向けた年次計画通りに順調に進んでいる.XRPIX-Xの評価やADC TEGの動作の確認もできた.以上から,概ね順調に進展していると判断した.
特異な構造を持つ領域G0.61+0.01の解析は2022年度にほぼ終了した.2023年度はこれを論文化する.2021年度のXMM-Newtonおよび2022年度のChandraに引き続き,既存の衛星(すざくあるいはNuSTAR)のGCのアーカイバルデータの解析もすすめたいと考えている.2023年度はいよいよXRISM衛星を打ち上げる.初期運用の後,GCの観測も予定されており,データが入手でき次第,解析を行う.また,観測提案も行う予定である.XRPIX-Xの性能評価を引き続き行う.デジタルX線SOIPIX素子の要素ブロックとして開発したADC TEGの動作の確認を行ったので,その性能を評価する.DAC・定電流源を搭載TEGの試作も終了したので,その動作確認を進める.XRPIX-Xに続く,大型アナログ素子と小型のデジタルX線SOIPIX素子の試作を行う.
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すべて 雑誌論文 (13件) (うち国際共著 6件、 査読あり 12件、 オープンアクセス 8件) 学会発表 (56件) (うち国際学会 7件) 図書 (1件)
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