研究課題/領域番号 |
21H04495
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研究種目 |
基盤研究(A)
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配分区分 | 補助金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
中区分16:天文学およびその関連分野
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研究機関 | 鹿児島大学 |
研究代表者 |
高桑 繁久 鹿児島大学, 理工学域理学系, 教授 (50777555)
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研究分担者 |
相川 祐理 東京大学, 大学院理学系研究科(理学部), 教授 (40324909)
富田 賢吾 東北大学, 理学研究科, 准教授 (70772367)
西合 一矢 東京大学, 大学院理学系研究科(理学部), 特任研究員 (30399290)
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研究期間 (年度) |
2021-04-05 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2024年度)
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配分額 *注記 |
26,130千円 (直接経費: 20,100千円、間接経費: 6,030千円)
2024年度: 7,540千円 (直接経費: 5,800千円、間接経費: 1,740千円)
2023年度: 8,320千円 (直接経費: 6,400千円、間接経費: 1,920千円)
2022年度: 7,800千円 (直接経費: 6,000千円、間接経費: 1,800千円)
2021年度: 2,470千円 (直接経費: 1,900千円、間接経費: 570千円)
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キーワード | 星、惑星形成 / ALMA望遠鏡 / eDisk / 国際共同プロジェクト / 惑星形成 / 原始星 |
研究開始時の研究の概要 |
本研究は、ALMA望遠鏡による大型観測プログラム「eDisk」により、生まれて間もない星「原始星」周囲の円盤を達成可能な最高解像度で観測し、原始星周囲での惑星形成を明らかにすることを目的とする。これまで惑星形成は、原始星より年齢が進んだ(~1000万年)星(Class II 天体)周囲で起こっていると考えられてきた。しかしClass II天体周囲においては、これまでの多くの観測的努力にもかかわらず、惑星形成の現場の着実な検出には至っていない。本研究は、原始星周囲で、現在進行形で惑星が形成されている様子を明らかにする。
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研究実績の概要 |
惑星はいつ誕生するのかという問題は、天文学上の大きな未解決問題の一つである。ALMA望遠鏡によるこれまでの観測から、年齢が10万年以上の星 T-Tauri星周囲の円盤においては、円盤内に惑星の存在を示唆する溝上の構造が捉えられている。これは現在進行形で惑星形成の現場を捉えるためには、T-Tauri 星より若い、生まれたばかりの赤ちゃん星「原始星」周囲の円盤の詳細観測をする必要があることを示している。本研究は、ALMA望遠鏡を用いた大型観測プログラムeDiskにより、原始星周囲の円盤の詳細観測を行い、原始星円盤が惑星形成に至るまでの進化を探ることを目的とする。eDiskは予定された観測を終了し、得られたデータの解析も完了した。さらに、日本、台湾、米国、デンマークと世界の共同研究者とともに、各天体についての最初の論文first-look paperの執筆、出版も順調に進んでいる。その結果、原始星円盤においては、進化が最も進んだ2天体でのみ惑星の存在を示唆する溝状構造が存在し、それ以前の若い原始星周囲の円盤においては、溝上構造が存在しないことが明らかになった。これは惑星形成は中心星が原始星からT-Tauri星に進化する数10万年の間に急激に進んでいるということを示唆する。一方、複数の原始星円盤で非対称構造やshoulder状の構造も見られており、これは惑星形成に至るまでの円盤の内部構造の進化を反映している可能性がある。さらに、原始星円盤周囲に筋上のガスの構造「Streamer」が存在していることも明らかになった。Streamerは惑星形成途上の円盤に直接物質を供給するとともに、円盤にショックを引き起こして、惑星形成に大きな影響を及ぼしている可能性が示された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
新型コロナウイルスの蔓延により、本研究計画がスタートした2021年度当初は研究の進捗状況に遅れが生じていた。しかし、2022年度以降、世界中のeDiskの共同研究者、その学生、ポスドク研究員の絶え間ない努力により、15本に及ぶ論文を出版することができている。この中には研究代表者や、鹿児島大学理工学研究科の博士課程1年の学生が筆頭著者の論文も含まれている。さらに2023年6月には全世界でeDiskのプレスリリースを行い、eDiskの成果はすでに世界で認識されている。鹿児島大学においても、研究代表者と博士課程1年の学生が鹿児島の新聞、テレビの取材を受け、鹿児島の研究成果としても広く認識されている。 研究内容としては、まず原始星円盤とそれより進化の進んだT-Tauri星周囲の円盤との間での構造を違いを明らかにしたのは素晴らしい成果である。これにより惑星形成の時期は原始星の後期段階の数10万年であることが示された。惑星の形成時期をピンポイントで決めることができたのは、今後の更なる詳細観測や理論モデルの構築にとって、非常に大きな成果である。また、当初は想定されていなかった成果も多くでてきている。まず、惑星の存在を示す溝状の構造がないといっても原始星円盤は決して構造がないわけではなく、非対称なshoulder, bump構造が見られている。これらの構造は、原始星円盤において惑星形成が始まっている最初の兆候と考えられるものであり、今後の更なる観測が待たれる。また、T-Tauri星周囲の場合と異なり、原始星周囲においては、円盤に向かって落ち込むガスの構造Streamerが普遍的に見られていることも明らかになった。これはこれまでの星、惑星形成の描像を完全に覆す可能性のある成果である。
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今後の研究の推進方策 |
今後はeDiskで明らかになってきた原始星円盤の構造と進化、さらにstreamerの起源とstreamerが原始星円盤での惑星形成に及ぼす影響を、さらに詳細に調べていきたい。原始星円盤で見られた shoulder構造、bump構造は、円盤内に更なる内部構造が潜んでいることを示唆している。我々のグループはこういった構造が円盤の重力不安定性によって引き起こされる渦巻き腕構造を反映している可能性を、理論シミュレーション、および輻射輸送モデル、ALMA観測シミュレーションによって示した。さらにALMAで達成可能な最大空間解像度(~0.01秒角)の観測を以てすれば、このような渦巻き腕構造を直接空間分解できる可能性を見出した。現在、この観測のためのプロポーザルを提出中である。このプロポーザルが採択され、観測が実行されれば、いよいよ原始星円盤内で惑星形成が起こっている画像を得ることが可能になるかもしれない。また、eDisk開始当初は全く予想していなかったstreamerの素性やstreamerが原始星円盤における惑星形成に及ぼす影響を調べるためのプロポーザルも提出中である。これまでの研究ではstreamerは単一視野の狭い領域でのALMA観測で偶然発見されたものであり、streamerが原始星周囲でどこまで広がっているのか、その質量、質量降着率、回転角運動量なども定量的に測られていない。ALMAの広視野モザイク観測を行い、単一鏡での観測データと組み合わせることにより、初めて干渉計独自の不定性にとらわれることなく、streamerの物理状態を調べることが可能になる。さらに降着に伴うショックをトレースする分子輝線を複数観測し、降着ショック領域での温度、密度の上昇やそれが原始星円盤に与える影響を調べる観測も計画している。
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