研究課題/領域番号 |
21H04503
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研究種目 |
基盤研究(A)
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配分区分 | 補助金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
中区分17:地球惑星科学およびその関連分野
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研究機関 | 東北大学 |
研究代表者 |
高嶋 礼詩 東北大学, 学術資源研究公開センター, 教授 (00374207)
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研究分担者 |
黒田 潤一郎 東京大学, 大気海洋研究所, 准教授 (10435836)
西 弘嗣 福井県立大学, 恐竜学研究所, 教授 (20192685)
沢田 健 北海道大学, 理学研究院, 教授 (20333594)
林 圭一 地方独立行政法人北海道立総合研究機構, 産業技術環境研究本部 エネルギー・環境・地質研究所, 主査 (30707906)
折橋 裕二 弘前大学, 理工学研究科, 教授 (70313046)
星 博幸 愛知教育大学, 教育学部, 教授 (90293737)
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研究期間 (年度) |
2021-04-05 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2024年度)
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配分額 *注記 |
42,250千円 (直接経費: 32,500千円、間接経費: 9,750千円)
2024年度: 7,410千円 (直接経費: 5,700千円、間接経費: 1,710千円)
2023年度: 8,190千円 (直接経費: 6,300千円、間接経費: 1,890千円)
2022年度: 7,800千円 (直接経費: 6,000千円、間接経費: 1,800千円)
2021年度: 18,850千円 (直接経費: 14,500千円、間接経費: 4,350千円)
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キーワード | K/Pg / 根室層群 / 北海道 / 白亜紀末 / 絶滅 / 白亜紀/古第三紀境界 / 大量絶滅 / 白糠丘陵 / 白亜紀 / 古第三紀 / K/Pg境界 / 古環境解析 |
研究開始時の研究の概要 |
白亜紀/古第三紀境界(K/Pg)は,大規模火山噴火と巨大隕石衝突が立て続けに発生することにより,恐竜・アンモナイトなど多くの生物が姿を消した“地球史で最も有名な絶滅事件”である.申請者らが発見したK/Pg層(K/Pg時期に堆積した地層)は,大規模火山噴火(インド・デカントラップ)と隕石衝突地点(メキシコ・ユカタン半島沖)の双方から地球上で最も離れた地域で堆積したため,これらの直接的影響を受けにくく,衝突による地層の擾乱も無い.このような地層を用いて,K/Pg境界前後の海洋・陸上環境の変動を明らかにすることにより,上記2つのイベントが地球全体の環境に与えた影響を解明する.
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研究実績の概要 |
本研究では,北海道浦幌町白糠丘陵西部の川流布川上流部において野外調査を実施し,白亜紀/古第三紀境界層付近の連続的な地層を見出すことができた.この地層を対象に,石灰質ナンノ化石,浮遊性有孔虫化石,底生有孔虫化石層序を構築するとともに,古地磁気層序とオスミウム同位体比層序,白金族元素分析,バイオマーカー分析を実施した.その結果,微化石層序と古地磁気層序から明らかになった白亜紀/古第三紀境界付近の地層から,隕石衝突層準において汎世界的にみられるオスミウム同位体比の大きな負のシフトを見出すことができた.この負のシフト層準に対して,さらに高解像度での試料採集(層厚20 ㎝間隔)を実施し,全岩におけるイリジウム含有量の検討を行った.その結果,白亜紀/古第三紀境界層においてイリジウムの増加がみられるものの,世界中の他のセクションよりもその含有量はかなり小さいことも明らかになった.そのため,隕石衝突直後の地層の一部が欠落している可能性も明らかになった.本地層は,白亜紀最上部から古第三紀下部にかけて,一様に泥岩のみからなる単調な岩相のため,白亜紀/古第三紀境界を跨いだ古環境の変動についても有効に検討できる.バイオマーカー分析の予察的な結果によると,白亜紀/古第三紀境界を挟んで当時の陸上植生に有意な違いが見出すことができた.一方,底生有孔虫群集は白亜紀/古第三期境界を挟んで有意な変化が見られず,北西太平洋の半深海底では顕著な環境の変化が生じなかった可能性もあることが明らかとなった.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
北海道浦幌町白糠丘陵西部の川流布川上流部における地質調査と試料採集はすでに終了し,各種分析を実施中である.古地磁気層序についてはほぼすべての層準における分析を終了し,本検討区間がC29の逆磁極期であることが明らかとなっている.古第三紀最下部の火山灰層に含まれるジルコンのU-Pb放射年代測定の結果, 65.44±0.89 Maという年代値が得られた.最新の年代モデルによると,白亜紀/古第三紀境界は66.02 Maのため,本結果は誤差の範囲内で一致する.さらに誤差の小さな年代測定を実施するため,境界付近に挟まる火山灰層のジルコンをBoise State UniversityのMark Schmitz教授に依頼している.オスミウムの同位体比層序の検討では,白亜系最上部は0.6付近の値を持続するが,白亜紀/古第三紀境界部で0.3にまで減少し,その後,古第三紀には0.45にまで増加する傾向が見られた.この急激に同位体比が減少する層準は,浮遊性有孔虫化石層序(白亜紀区間からはRugoblobigerina属,古第三紀区間からはEoglobigerina属が産出)と石灰質ナンノ化石層序(白亜紀最上部層準でWatznaueria barnsiaeの産出と,Thoracospaera属のアクメがみられる)の結果とも整合的で,白亜紀/古第三紀境界をほぼ特定できたと考えられる.古地磁気極性の検討結果も全てこの区間は逆磁極を示すことから,上記の解釈と整合的である.
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今後の研究の推進方策 |
2024年度は最終年度のために,これまでの成果(特に白亜紀/古第三紀境界の発見)に関する論文を出版することを当面の目標にする.一方,バイオマーカー分析や底生有孔虫化石分析を引き続き実施し,ほとんど明らかにされていない北西太平洋域における白亜紀末~古第三紀にかけての古環境変動を解明することを第二の目標とする.
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