研究課題/領域番号 |
21H04505
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研究種目 |
基盤研究(A)
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配分区分 | 補助金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
中区分17:地球惑星科学およびその関連分野
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
井出 哲 東京大学, 大学院理学系研究科(理学部), 教授 (90292713)
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研究分担者 |
矢部 優 国立研究開発法人産業技術総合研究所, 地質調査総合センター, 主任研究員 (30802699)
麻生 尚文 東京理科大学, 先進工学部物理工学科, 講師 (70801223)
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研究期間 (年度) |
2021-04-05 – 2026-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2024年度)
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配分額 *注記 |
41,340千円 (直接経費: 31,800千円、間接経費: 9,540千円)
2024年度: 8,060千円 (直接経費: 6,200千円、間接経費: 1,860千円)
2023年度: 12,090千円 (直接経費: 9,300千円、間接経費: 2,790千円)
2022年度: 7,150千円 (直接経費: 5,500千円、間接経費: 1,650千円)
2021年度: 5,980千円 (直接経費: 4,600千円、間接経費: 1,380千円)
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キーワード | 地震 / スロー地震 / データ解析 / モデル計算 / 確率予測 / 地震学 |
研究開始時の研究の概要 |
地震の震源で発生するプロセス(破壊を伴う摩擦すべり運動)を、確率的現象として理解するためにデータ解析や理論計算などを用いた研究を行う。地震には普通の地震とともに数ヘルツから日単位の広周波数(周期)帯域にわたるスロー地震を含む。地震発生帯内部に存在する階層的な断層構造に着目して、確率的予測可能性を検討する。日本を中心に世界各地の地震現象を対象に研究を進めて、普遍的な地震の性質を明らかにする。
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研究実績の概要 |
本研究では確率論的地震発生論構築を目指して、(A)階層的固有性と決定論的震源プロセスのデータ解析、(B)スロー地震のデータ分析フロンティアの開拓、(C)確率論的地震モデルの高度化、の3サブカテゴリでデータ解析やモデル計算を進めた。 (A) では、中途半端な繰り返し地震の事例研究を日本各地で行った。その結果、沈み込み帯以外では、中途半端な繰り返し地震の観測例は少ないことがわかった。破壊すべりセントロイドと破壊開始点の同時詳細震源決定法を開発し、北海道・東北地域に適用した。またその研究を論文にまとめて出版、同時にこの手法の計算機コードを公開し、一般に使用可能にした。新たな断層すべりインバージョン手法の検討を行った。 (B)広帯域スロー地震の素過程として、低周波地震を抽出する手法を開発し、四国西部の微動活動に適用した。その結果を論文として出版した。サンアンドレアス断層の低周波地震のメカニズム解析を進めた。潮汐応答性の検討に向けて、歪データの整理、および、客観的検知手法によるスロースリップカタログの整備を行った。また、四国においてDAS観測とそれに付随する通常の地震計による観測や回転地震計の試験観測を行い、沈み込み帯における通常地震・スロー地震を対象とした新しい観測を可能性を検討した。 (C) BSEモデルをベースとして、微動を更新過程として表す予測モデルを開発した。そのモデルを西日本に適用し、期待通りの性能を示すことを確認した。確率論的断層シミュレーションにおける時空間擾乱を検討する準備段階として、空間的な不均質性に着目して、その適切な条件設定について基礎的検討を行った。また、火山型の深部長周期地震についても、地震活動の統計解析と地震波形解析によるエネルギー推定の双方の結果により、スロー地震と類似した拡散的すべり現象であることを指摘した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
2021年も2020年に引き続き、パンデミックの影響を受け研究者の交流が困難であった。その中でも研究成果は概ね想定通りに上がっており、オンラインの学会などにおける発表や、最終的な論文の公表まで、順調に遂行することができた。2021年の10月にはパンデミック後初の国外出張を行い、ヨーロッパにおける地震研究の現状を把握することができた。データの収集やサーバーの管理も順調に進んでいる。もっとも特任研究員の雇用が想定通りにいかなかったことでやや負荷が生じている。 結論としておおむね順調に進展していると判断できる。
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今後の研究の推進方策 |
引き続き、確率論的地震発生論構築を目指して、(A)階層的固有性と決定論的震源プロセスのデータ解析、(B)スロー地震のデータ分析フロンティアの開拓、(C)確率論的地震モデルの高度化、の3サブカテゴリでデータ解析やモデル計算を進める。これらの作業と並行して、世界各地の地震地殻変動データの収集と管理を行う。 (A) については、階層的破壊すべりの動的パラメターである応力変化の評価法を開発する。階層性モデルにおける現実的地震サイクル生成条件の検討を行う。また前年度に構築した階層的破壊すべりの抽出手法について系統的適用に向けた準備を行う。さらに4次元すべりインバージョン法の開発を進める。 (B) 四国で開発した広帯域スロー地震分析法を他地域に適用する。サンアンドレアス断層の低周波地震のメカニズム解析を進める。スロー地震の誘発特性の超広帯域特性の解明に向けて、歪・傾斜データを用いたスロースリップの潮汐応答性解析を進める。新しい観測によるスロー地震の検出と分析可能性を検討する。 (C) 2D-BSEモデルを用いて微動とVLFEのサイズ分布の揺らぎの定量化を行う。火山性低周波地震の確率論的表現を検討する。スロースリップのイベント履歴に基づいた、スロー地震の予測モデルを構築し、予測実験を行う。また普通の地震の予測モデルの検討を始める。
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