研究課題/領域番号 |
21H04507
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研究種目 |
基盤研究(A)
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配分区分 | 補助金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
中区分17:地球惑星科学およびその関連分野
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
中谷 正生 東京大学, 地震研究所, 教授 (90345174)
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研究分担者 |
桑野 修 国立研究開発法人海洋研究開発機構, 超先鋭研究開発部門(高知コア研究所), 研究員 (30511969)
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研究期間 (年度) |
2021-04-05 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2024年度)
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配分額 *注記 |
44,070千円 (直接経費: 33,900千円、間接経費: 10,170千円)
2024年度: 3,640千円 (直接経費: 2,800千円、間接経費: 840千円)
2023年度: 3,640千円 (直接経費: 2,800千円、間接経費: 840千円)
2022年度: 2,860千円 (直接経費: 2,200千円、間接経費: 660千円)
2021年度: 33,930千円 (直接経費: 26,100千円、間接経費: 7,830千円)
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キーワード | 鉱物粒子 / 固結 / 臨界滑り距離 / 摩擦実験 / 熱水環境 / 脆性ー延性遷移 / 強度回復 / 階層的アスペリティ |
研究開始時の研究の概要 |
地震時の強度低下に要する臨界滑り距離が地震の大きさに比例するという、破壊物理の階層性がさまざまな観測から示唆されている。これは、地震の大きさを決定する物理メカニズム、ひいては地震の予測可能性の問題におけるキーイシューであるが、臨界滑り距離が破壊サイズに依存するメカニズムは不明である。 本研究では、地震間の時期に断層に存在する鉱物粒子の層の固結が進み、多数の鉱物粒子が力学的結合ネットワークを作ることで、粒子間のコンタクトサイズである数ミクロンを大きく超えた臨界滑り距離が実現されるという仮説のもと、実験室内で鉱物粒子を長時間固結させる実験を行い、それに伴う鉱物粒子層の性質変化を明らかにする。
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研究実績の概要 |
本研究では、地震発生域の熱水条件における断層の摩擦特性に対して、断層砕屑物(ガウジが)長時間かけて固結してゆくことが及ぼす影響を調べる。とりわけ注目しているのは、乾燥条件での長時間固結実験で見られた、滑り弱化に長い距離がかかる強度回復である。 高温・高圧下で、長時間にわたる実験を行うために、本年度は既存の三軸試験機のサーボ制御装置を更新した。サーボ制御を行う加圧ピストンは試料を圧縮する上下・左右の4つ、試料にジャケットの外から封圧を加える流体圧媒体の圧力を作るための増圧シリンダのピストンが1つ、試料内部に浸透して熱水環境を作る間隙水の圧力を作るための増圧シリンダのピストンが1つの合計6軸あり、それぞれを圧力・変位をフィードバック信号としてその目標値を保つことができる。摩擦試験において主役となる上下軸に関しては、より精密な実験を行うため外部からの目標信号を加えられる構成とし、また、高分解能の外部目標信号を発生する外部電圧発生装置を製作した。 また、長時間に高温実験に装置が耐えられることの検証を兼ねて、軟らかい多孔性堆積岩であるSolnhofen石灰岩(間隙率5%)のインタクト試料を用い、これまでに実験データのない、高封圧(360MPa)・高間隙圧(340-360MPa)での高温(400-500℃)変形試験を行い、一週間近い実験でも装置・試料アセンブリのシールが保たれることを確認した(メリーランド大学の金谷研究員との共同研究)。予察的な解析では、有効封圧が20MPaから0MPaに下がるのに応じて、変形様式が延性から脆性に変化することが示唆された。 また、滑り変位量に制限なく摩擦実験ができる回転式試験機においては、非常に重い試料アセンブリを圧力容器に取り付け・取り外しの作業を補助するための、電動式のエスカレータ機構を新設した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
コロナ禍による電子部品の在庫不足により、高分解能の目標信号を発生する外部電圧発生装置は部品の納入が遅れたため、予算を一部繰越して2年目に入手・製作した。 また、同じ理由で、高温・高圧試験機のサーボ制御装置も設置工事・納品が年度末となったが、その納品を待つ期間に行った高温・高圧での長時間耐久性検証の実験を行った。この実験は、延性─脆性遷移域における有効封圧則の検証という科学的な目的も兼ねている。
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今後の研究の推進方策 |
回転式装置については、試料の取り付け・取り出しが簡単にできるようになったので、今後、三軸試験機ではできない大きな滑り変位の摩擦試験を行う。 三軸試験機の機械部分は、500℃での一週間近い試験を問題なく耐えたが、圧媒体(シリコンオイル)がかなり変質していた。そこで、温度を控え目にして実験時間を延ばす方針にチャレンジする。鉛の融点である300℃は地震発生層の最深部の温度であり、また、鉛の厚肉ジャケットは比較的大きな滑り変位を許容し、かつ、強度が弱いため試料の力学特性を正確に測ることができるので、鉛ジャケットを導入する。 また、既存の鉱物粉末層の摩擦実験において、長い滑り弱化距離がでるメカニズムがいくつかあり、既存実験データも見直しも行う。
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