研究課題/領域番号 |
21H04520
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研究種目 |
基盤研究(A)
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配分区分 | 補助金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
中区分17:地球惑星科学およびその関連分野
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
小嶋 浩嗣 京都大学, 生存圏研究所, 教授 (10215254)
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研究分担者 |
小川 泰信 国立極地研究所, 先端研究推進系, 教授 (00362210)
加藤 雄人 東北大学, 理学研究科, 教授 (60378982)
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研究期間 (年度) |
2021-04-05 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2024年度)
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配分額 *注記 |
41,210千円 (直接経費: 31,700千円、間接経費: 9,510千円)
2024年度: 6,370千円 (直接経費: 4,900千円、間接経費: 1,470千円)
2023年度: 9,100千円 (直接経費: 7,000千円、間接経費: 2,100千円)
2022年度: 12,870千円 (直接経費: 9,900千円、間接経費: 2,970千円)
2021年度: 12,870千円 (直接経費: 9,900千円、間接経費: 2,970千円)
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キーワード | イオンの垂直加速 / 電離大気流出 / 計算機シミュレーション / EISCAT / 波動粒子相互作用 / イオンの垂直加熱 / 波動・粒子相互作用 / プラズマ波動 / ASIC / EISACATレーダー / 電界センサー / ロケット実験 / レーダー観測 / EISCATレーダー / 極域電離大気流出 / イオン垂直加速 / イオン上昇流 |
研究開始時の研究の概要 |
地球の極域上空からは、電離した大気が宇宙空間に流出している。宇宙空間に電離大気が流出するためには地球の重力圏から離脱するエネルギーをイオンがもつことが必要で、そのエネルギー源としてプラズマ波動が有力である。これは、極域上空においてプラズマ波動の観測とイオンの加速現象が同時にみられることが多いからである。しかし、プラズマ波動の励起メカニズム、プラズマ波動がイオンを加速するメカニズムは不明のままである。本研究では、ロケット実験、計算機シミュレーション、地上レーダー観測を組み合わせて、イオンにエネルギーを与えているプラズマ波動の励起メカニズムと、それがイオンを加速するメカニズムについて明らかにする。
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研究実績の概要 |
・極域におけるイオン流出にかかわるイオン垂直加熱に対する波動粒子相互作用を直接観測することを目的としたSS-520-3ロケットデータの解析を推進した。特に電界モノポールセンサーとして、観測した広帯域波動BBELFに対して、位相差解析を行ったところ、その周波数依存性に従った定量的なデータが得ることに成功し、これまでその位相変化を捉えることが難しく、プラズマ波動のモード特定に至っていない問題の解決に大きく近づいた。 ・テスト粒子シミュレーションの初期条件として与えるプラズマ波動の波長や位相速度について、極域電磁圏における飛翔体観測結果およびプラズマ空間分布のモデルに基づいて整理した。 ・EISCAT_3Dレーダーデータを格納するために必要となるラックサーバーを用意し、そのシステム構築を進めた。さらに、EISCATレーダーのデータセットを用いて、磁気嵐時の分子イオン上昇流の統計解析を実施し、学術雑誌に論文を投稿した。 ・プラズマ波動モードを特定を行うために有用なインターフェロメトリ手法の定量的解釈に必要となる計算機シミュレーションモデルを確立した。シミュレーションボックス内に電界センサーを設定し、電子ビームを入れることでラングミュア波動をシミュレーションボックス内に励起して、インターフェロメトリ観測をシミュレーションすることに成功した。このシミュレーション手法を用いることによって、電界センサーの特性を含めたプラズマ波動の位相変化を定量的に捉え、その波動モードの特定と理解につながる手法を開発した。また、小型プラズマ波動観測器用のASIC開発においては、広帯域チップの設計改良を行い、プッシュプル方式の導入により、これまで100kHzまで限界であったチップの帯域を10MHzまでのばすことに成功した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
・SS-520-3ロケット実験において得られたBBELF波動の位相変化をモノポールセンサーで捉えることに成功しており、更なる詳細解析によりプラズマ波動のモード特定に近づいた。 ・極域の空間的な非一様性を考慮したモデルでの計算がスタートした。 ・EISCATレーダーの過去の大規模データから統計解析を行い分子イオンについて新たな知見を見いだしている。 ・インターフェロメトリを含め、極域でイオンの垂直加熱に関係していると考えている波長が短い静電波動に対して、その位相速度などを定量的に一つの衛星でみつもることができる手法をシミュレーションできるツールを開発できた。また10MHzまでの広帯域なプラズマ波動を観測できる数mm角のチップを開発することができた。
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今後の研究の推進方策 |
・SS-520-3で得られた広帯域静電波BBELFに対するインターフェロメトリ計測から得られるプラズマ波動の位相速度の特定精度を向上させる。これには、計算機シミュレーションによってモデル化に成功した位相検出の結果も参照して精度の向上をはかる。これによりBBELFのプラズマ波動モードの特定につなげ、BBELF発生メカニズムの解明へとつなげていく。 ・ロケット実験による観測結果も取り入れて、引き続き「どの種類の波動がイオンの加速に有効なのか」を明らかにするシミュレーションによる研究を進める。 ・2024年度にファーストライトを予定しているEISCAT_3Dレーダーから得られるデータを用いて、新たな極域大気流出研究を推進するためのデータ解析環境整備を引き続き実施する。 ・インターフェロメトリモードに衛星本体の存在の影響を考慮して精度を向上させる計算機シミュレーションを行う。特に短い波長のプラズマ波動に対しては、衛星本体の影響が無視できないと考えられるため、衛星本体の存在が精度に与える影響を調査していく。プラズマ波動観測器のチップについては、広帯域したチップのダイナミックレンジおよび線形性向上をこころみ、ワンチップの超小型プラズマ波動観測器の実現を目指す。そして、極域で小型衛星による多点観測が実現するためのプラズマ波動観測器システムの開発へとつなげていく。
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