研究課題/領域番号 |
21H04521
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研究種目 |
基盤研究(A)
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配分区分 | 補助金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
中区分17:地球惑星科学およびその関連分野
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研究機関 | 島根大学 |
研究代表者 |
齋藤 文紀 島根大学, 学術研究院環境システム科学系, 特任教授 (00357071)
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研究分担者 |
三瓶 良和 島根大学, 学術研究院環境システム科学系, 教授 (00226086)
中西 利典 ふじのくに地球環境史ミュージアム, 学芸課, 准教授 (10462582)
香月 興太 島根大学, 学術研究院環境システム科学系, 講師 (20423270)
林田 明 同志社大学, 理工学部, 教授 (30164974)
箱崎 真隆 国立歴史民俗博物館, 大学共同利用機関等の部局等, 准教授 (30634414)
安藤 卓人 秋田大学, 国際資源学研究科, 助教 (30852165)
瀬戸 浩二 島根大学, 学術研究院環境システム科学系, 准教授 (60252897)
入月 俊明 島根大学, 学術研究院環境システム科学系, 教授 (60262937)
辻本 彰 島根大学, 学術研究院教育学系, 講師 (60570554)
仲村 康秀 島根大学, 学術研究院環境システム科学系, 助教 (70830735)
渡邉 正巳 島根大学, エスチュアリー研究センター, 客員研究員 (80626276)
會下 和宏 島根大学, 学術研究院人文社会科学系, 教授 (90263508)
酒井 哲弥 島根大学, 学術研究院環境システム科学系, 教授 (90303809)
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研究期間 (年度) |
2021-04-05 – 2026-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2024年度)
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配分額 *注記 |
41,600千円 (直接経費: 32,000千円、間接経費: 9,600千円)
2024年度: 7,280千円 (直接経費: 5,600千円、間接経費: 1,680千円)
2023年度: 12,220千円 (直接経費: 9,400千円、間接経費: 2,820千円)
2022年度: 6,760千円 (直接経費: 5,200千円、間接経費: 1,560千円)
2021年度: 10,270千円 (直接経費: 7,900千円、間接経費: 2,370千円)
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キーワード | 第四紀 / 完新世 / アジアモンスーン / 4.2kaイベント / 気候変動 / 夏季モンスーン / 汽水湖 / 海水準変動 / 三瓶山 / 宍道湖 / 古環境 / 古気候 / 4.2ka, 8.2kaイベント / 年縞堆積物 / 樹木年輪 / 8.2kaイベント / 4.2 kaイベント / 8.2 kaイベント / 気候変化 |
研究開始時の研究の概要 |
中期完新世の気候最暖期から4200年前の寒冷期を経て後期完新世に至るまでの、気候変化、特に気温・海水温と降水量・塩分変化に焦点をあてて、100km以内に分布する三瓶山から中海・宍道湖、東郷池において、汽水域の年縞堆積物と周辺の年輪試料を用いて、陸域の降水量や気温や植生、汽水域の塩分(淡水影響)・海水温、生物群集、洪水頻度等の陸と海のデータを総合し、長期及び短周期の気候変化や環境変化を明らかにする。更に、古環境の解析や温暖化予測にも資する東アジア夏季モンスーン(EASM)の強弱の指標を決定する。また、年輪年代と対比された中期完新世以降の汽水成年縞堆積物編年の構築を目指す。
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研究実績の概要 |
2023年度は,2019年と2022年に宍道湖湖畔で採取したHK19, HK21コア,出雲平野中央部で採取したNH23コアの分析を進めるとともに,新たに鳥取県東郷湖湖畔において34m長のTG24コアを採取した. HK19, HK22コアでは3枚の火山灰層が見つかっており,下位から鬼界アカホヤテフラ,三瓶山の志学・角井テフラ,太平山テフラに同定され,基本的な岩相,年代を誌上発表した(瀬戸ほか,2023).またNH23コアでは約5500年前の三瓶山の噴火起源と考えられる火山灰の約75cm層厚の2次堆積層が見出され(新聞報道あり),火山噴火後のラハール堆積物が古宍道湾に流入し,ハイパーピクナイトを形成していたことが推定された. 斐伊川の宍道湖への本格的な流入(斐伊川の東流イベント)は,従来は江戸時代初期の洪水によって引き起こされたと推定されていたが,宍道湖湖底のコアを用いたDNAメタバーコーディングによるプランクトンの分析や堆積物の硫黄含有量の分析から西暦1250年頃に起こったことが明らかとなった(Nakamura et al., 2023). これらのコアの粒度分析,有機物含有量と組成,ITRAXによる地球化学的な堆積物組成,珪藻・貝形虫・有孔虫の分析,古地磁気と磁化特性,有機物と貝の放射性炭素年代とその年代差などの研究が順調に進捗しており,これらの一部は学会発表が行われている.古環境変遷では,約1万年前の海進初期から完新世前期の急激な海水準の上昇に伴って古宍道湾は湾底が酸化的で外洋水との交換が良い内湾へと変化し,外海の沿岸侵食による堆積物が多量に古宍道湾に流入していたこと,約8千年前以降の海水準の安定期には,湾口部が浅くなり,盆状の古宍道湾となって湾底は貧酸素状態に変化し年縞と推定される堆積物が形成される環境となったことが明らかとなった.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
研究3年目の2023年度は,当初の計画通り,鳥取県東郷湖湖畔においてTG24コアを採取した.これによって,当初の計画通り,出雲平野(古宍道湾)と東郷湖におけるすべてのボーリングコアを採取した.また宍道湖湖底からのコア採取も終えており,すべて順調に進捗している.これらのコアの分析も,年代測定は2021年度と2022年度に採取したコア,HK-22とNH-23,については終了しており,古地磁気,堆積物の粒度分析,有機物分析,珪藻・貝形虫・有孔虫などの微化石分析も順調に進捗している.貝殻を用いた同位体分析についても,アリゾナ大学との話し合いがまとまり,2024年度初めに試料を送付し,分析が開始される予定である.宍道湖湖畔のコアは,過去1000年間が粗粒であり,現在までの連続的なコア試料でないことから,現在から過去約2千年間をカバーするコアを宍道湖湖底から採取し,過去1万年間の連続的な古環境変遷に取り組んでおり,これについても順調に進捗している.その成果の一部は,国際学術誌のScientific Reportsに2023年に掲載され(Nakamura et al., 2023),多くの新聞報道があった.陸域の年輪に関する研究では,中海南方の安来清水寺の年輪試料から江戸時代の寒冷期が復元され,古気候研究を用いた大杉の年輪試料が清水寺に奉納され,新聞報道された.
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今後の研究の推進方策 |
2024年度は研究計画の4年目にあたり,3年目に採取したコアを含めて,これまでに採取したボーリングコアの分析をすすめる.特に出雲平野,古宍道湾の古環境変遷の概要を学術誌で公表し,その中で特徴的な時期やイベント,8.2kaイベントや4.2kaイベント,完新世初期の急激な海水準上昇イベント(8.5ka),現在の地形の基礎が形成された8.2-7.5kaの海水準上昇,三瓶山の2回の噴火の古宍道湾への影響,たらら製鉄・かんな流しなどの人間活動の影響などに焦点をあてて研究を進める.同時に関係する陸域での気候変化,環境変化と合わせて,総合的な解析を試みる.
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