研究課題/領域番号 |
21H04524
|
研究種目 |
基盤研究(A)
|
配分区分 | 補助金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
中区分17:地球惑星科学およびその関連分野
|
研究機関 | 立命館大学 (2023-2024) 京都大学 (2021-2022) |
研究代表者 |
氏原 秀樹 立命館大学, 総合科学技術研究機構, 研究員 (40399283)
|
研究分担者 |
市川 隆一 国立研究開発法人情報通信研究機構, 電磁波研究所電磁波標準研究センター, 研究マネージャー (40359055)
関戸 衛 国立研究開発法人情報通信研究機構, 電磁波研究所電磁波標準研究センター, 研究マネージャー (60359057)
宗包 浩志 国土地理院(地理地殻活動研究センター), その他部局等, 研究室長 (50370812)
小林 知勝 国土地理院(地理地殻活動研究センター), その他部局等, 研究室長 (40447991)
宮原 伐折羅 国土地理院(地理地殻活動研究センター), その他部局等, 技官(その他) (90825457)
寺家 孝明 国立天文台, 水沢VLBI観測所, 助教 (40425400)
小山 友明 国立天文台, 水沢VLBI観測所, 特任専門員 (70425403)
竹内 央 国立研究開発法人宇宙航空研究開発機構, 宇宙科学研究所, 教授 (90329029)
今井 裕 鹿児島大学, 総合科学域総合教育学系, 教授 (70374155)
|
研究期間 (年度) |
2021-04-05 – 2025-03-31
|
研究課題ステータス |
交付 (2024年度)
|
配分額 *注記 |
41,730千円 (直接経費: 32,100千円、間接経費: 9,630千円)
2024年度: 5,850千円 (直接経費: 4,500千円、間接経費: 1,350千円)
2023年度: 9,100千円 (直接経費: 7,000千円、間接経費: 2,100千円)
2022年度: 17,160千円 (直接経費: 13,200千円、間接経費: 3,960千円)
2021年度: 9,620千円 (直接経費: 7,400千円、間接経費: 2,220千円)
|
キーワード | 広帯域 / VLBI / 水蒸気 / 電波天文 / 軌道決定 / 超広帯域 / リモートセンシング / 測地 / OMT |
研究開始時の研究の概要 |
VLBIは遠方の天体からの電波を複数の電波望遠鏡で受信し、相関処理を行うことで10,000km の距離と方向をミリメートル精度で、また地球の自転速度変動を1000分の1 秒を切る精度で計測可能な宇宙測地技術である。最近では「はやぶさ2」等の深宇宙探査機の軌道決定、大陸間での光格子時計の高精度国際周波数比較にも貢献した。しかし受信機は各観測機関の目的に特化している。また根本的に電波星からの信号を地上で受信する限り、地球大気による電波伝播遅延誤差が精度向上の壁である。本研究は革新的な超広帯域受信観測系を開発し、大気の壁と分野の壁を超えた汎用VLBI観測による新たなサイエンスを拓くことを目標とする。
|
研究実績の概要 |
昨年度に引き続き京大宇治キャンパスで広帯域フィード単体での試験観測を行った。OMTの1.85mmコネクタを改良したことで性能が安定し、30GHz帯の雲の放射を捉えられた。NICT小金井では改良型OMTの損失を測定した。様々な光学系に搭載可能とすべく、SKAに適合するビーム幅のフィードも開発した。ヘラ絞り90cm可搬局はCFRPパイプフレームで支持する2式を製作したが、1人で組み立て・分解するには厳しい重量となった。フィードとハンディスペアナで実験予定地のRFI調査を行い、NICT鹿島宇宙センター屋上に可搬局の台座を設置した。 この広帯域VLBI受信機の実証実験の準備として国立天文台野辺山45m電波望遠鏡に構築した22GHz帯(両円偏波)+43GHz帯(両直線偏波)の同時観測システムは科学観測で使用可能となった。しかしVLBI観測に必要な水素メーザによる周波数標準が故障したためVLBI実験は止まっている。同VERAアンテナでは実証実験に備えて高速度記録系のストレージ整備を進め、新広帯域観測モードのテストを進める為に鹿児島大から学生を派遣した。NICTと国土地理院では計算機類の整備を行い、コネクタ類を購入した。JAXAではQNAP社の10GbEネットワーク対応NASを購入した。そのOSをubuntuに変更し、直結したADS-3000+サンプラからのVLBIデータを直接記録できるソフトを開発した。従来システムのような巨大なRAIDサーバー無しでVLBIデータが記録可能となり、フィールド観測に便利なデータ記録系が構築できた。 国内研究会では天文学会、測地学会、WPT研究会、VLBI懇談会、国際学会・研究会ではAsian-Pacific Microwave Conference 2022およびURSI-JRSMにて発表を行ない、IAU Symposium 380の開催に協力した。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
今年度も新型コロナによる出張制限・出勤制限が残っており代表者1人での可搬局実験を志したが、アンテナ光学系を十分に軽量化しきれなかったので構造を改良中である。しかし広帯域フィードと受信機単体による試験ではOMTの高周波コネクタの改良による性能安定化に伴い、雲からの放射が検出ができるようになった。引き続きフィールドでの観測を目指し、システム全体の防水・防塵加工と小型化・軽量化を進めている。 これまで使ってきたプリント基板型OMTは構造が簡素で広帯域ながら高周波側での損失が大きいため、あらたにクワッドリッジ導波管型のOMTを設計した。これは本課題の主題である広帯域ラジオメータ兼VLBI受信機に用いる18-58GHz用だけでなく、VLBI観測用の4-16GHzや6.7-43GHzに対応するOMTも同時に設計した。広帯域フィードに関しては、NICTの小金井2.4mアンテナや国立天文台の水沢10mアンテナ用を活用するためのものやSKAアンテナを想定したビーム幅の広いものなど、将来の様々な光学系での実験に備えてビーム幅や周波数帯、ビームパターンなどの設計バリエーションを増やした。その中で、広い帯域の全てではないもののアンテナ光学系に搭載した時に高い開口能率が期待できる、ビームパターンも得られた。中央がとんがった山型のビームパターンとなる通常のフィードと異なり、アンテナ鏡面をほぼ均一に照らしながらもその縁で急峻に電力が下がる台形状のビームパターンとなっている。 データ記録・処理系においては、サンプラからのVLBI観測データをNAS上のソフトで直接記録できるようになった。これは当初計画にはなかったが、今後のフィールド観測での電力や機材を削減する上での大きなメリットである。 計画より遅れたところもあるが計画以上に進展したところや予期せぬ進展もあったので、自己評価は「計画以上に進展」とする。
|
今後の研究の推進方策 |
90cm可搬局においては重量配分と構造を改良し、1人でも安全・迅速に組み立て・分解できることを目指していく。受信機及びフィードについては、搭載するアンテナ光学系に合わせた性能最適化と小型化を図っていく。プリント基板型OMTについては、これまで使ってきたVNA(ベクトル・ネットワーク・アナライザ)が上限67GHzであるため動作上限周波数を決められなかった。今年度からは代表者の所属研究室の110GHzまで測れるVNAを活用して限界の把握と高周波数化を目指す。フィルタやデバイダ、アンプなど様々な受信機部品をコネクタとケーブルを介さずレイアウトしてさらなる小型化と低コスト化を目指すべく、回路基板へのチップ部品による実装を検討する。 実証については、まずNICT鹿島での広帯域水蒸気ラジオメータとしての試験を行う。ここからは海・陸両方の大気と工業地帯の煙突の排煙が一望できるので、ラジオメータの機能試験には最適である。しかし屋上に設置した台座しか使えずVLBI観測は出来ないので、VLBI実験にはNICT小金井2.4mや国立天文台水沢10mを利用する予定である。前者は現状の広帯域フィード(3.2-16GHz)を少し小さめの4-16GHzのフィードに交換し、本課題のフィード(16-64GHz)を併設するので従来の測地観測(X帯)でのメリットも評価できる。後者はフィードの交換ができないので、新たにビーム伝送系を製作して既存フィードの脇に広帯域フィードを設置する計画である。これらの試験の後に、鹿児島大屋上からの桜島の噴煙の観測も行いたい。天候次第で高さや形状、温度や密度が変わる雲と異なり、噴煙では概ね安定的な雲が観測できるのがメリットである。 これらの試験と並行して冷却受信機の検討、クワッドリッジ型広帯域OMTの製作・評価、NASを利用したデータ記録系のテストを進め、実証実験に取り込んでいく。
|