研究課題/領域番号 |
21H04531
|
研究種目 |
基盤研究(A)
|
配分区分 | 補助金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
中区分18:材料力学、生産工学、設計工学およびその関連分野
|
研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
木崎 通 東京大学, 大学院工学系研究科(工学部), 講師 (30771901)
|
研究分担者 |
杉田 直彦 東京大学, 大学院工学系研究科(工学部), 教授 (70372406)
|
研究期間 (年度) |
2021-04-05 – 2026-03-31
|
研究課題ステータス |
交付 (2024年度)
|
配分額 *注記 |
42,510千円 (直接経費: 32,700千円、間接経費: 9,810千円)
2024年度: 17,030千円 (直接経費: 13,100千円、間接経費: 3,930千円)
2023年度: 520千円 (直接経費: 400千円、間接経費: 120千円)
2022年度: 10,140千円 (直接経費: 7,800千円、間接経費: 2,340千円)
2021年度: 14,430千円 (直接経費: 11,100千円、間接経費: 3,330千円)
|
キーワード | 工作機械 / 機上計測 / 母性原理 / 熱変位補償 / 運動補償 / 精密加工 / ロボット加工 / センシング / 熱変形 / 動特性 / 刃先温度 / 幾何誤差 |
研究開始時の研究の概要 |
航空機・宇宙機産業において部品の大型化が著しい.しかし加工機の制約から,大型の部品を分割して加工することが一般的である.本研究では大型の部品を一体のまま,高精度で加工可能な新たな加工システムを提案する.提案加工機自体が加工部品の周囲を移動し,自身より大きなサイズの部品を加工する.しかし加工機自体が移動する場合,必然的に剛性や精度が低下する.本研究では“低剛性・低精度な加工機で高精度な加工を実現する”というコンセプトの実現を目指す.機上計測に基づく加工状態の把握と,加工工程へのフィードバックにより,目標を達成する.申請者がこれまでに開発した機上計測技術を発展・統合させ,上記システムを完成させる.
|
研究実績の概要 |
前年度までに加工したモータハウジングに加えて,ジョイントの構造や連結部材などを加工して製造した.パラレルリンク機構の腕を一つくみ上げる準備が整いつつある. 多点温度センサについて,高精度な熱変位推定を実現するためのセンサ配置探索手法を提案した.工作機械のFEモデルをクリロフ分空間法により低次元化することにより,各センサの影響度を算出した.さらにその影響度に基づき,影響度密度関数を定義した.影響度密度関数を用いることで計測起因の熱変位推定不確かさが最小となるようなセンサ配置を探索することが可能となった.本手法では計測に起因する推定誤差を最小することを目指したが,モデル自体に含まれる推定誤差も今後適切に評価する必要がある. 加工機の動特性を同定したうえで,振動をキャンセルさせることが必要である.振動をキャンセルする目的で,ピエゾ素子を用いた慣性アクチュエータを作成し,その動作原理を実証した.従来は100 Hz程度の振動を抑制した例が報告されていたが,それ以上の高周波数k Hz ~ 10 kHzの制御は困難とされていた.本研究では200 kHz程度でフィードバックループを高速に回すことおよびアクチュエータの構造を見直すことにより高い周波数帯の制御を可能とした. センサ埋設工具に関して,熱電対と絶縁膜の熱膨張率を揃えるため,B型熱電対を採用した.B型熱電対の周囲に厚さ5 μm程度の絶縁膜をCVD法により製膜したところ,焼結時においても絶縁膜が破壊されることなくセンサの機能性を保つことに成功した. さらに工作機械の幾何誤差を加工中に同定する新たな方法を提案した.この方法では三次元スキャナを用いて,工具とテーブルの三次元構造を同時に取得することで相対的な位置偏差や姿勢偏差を同定する.従来の手法と比較して大幅に測定時間を短縮することが期待される.
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
ロボット加工機の製造は想定よりも時間がかかっているものの,着実に進んでいる.そのほかの研究テーマについてもおおむね順調に進んでいる.
|
今後の研究の推進方策 |
ハウジングやジョイントなどは加工が完了したがまだ数点加工が必要な部品が残っているため,継続して加工・製造を行う.モータやコントローラなどは調達が完了している.プラットフォーム及び小型スピンドルを今年度中に準備する予定である. 熱変位補正について,熱変位推定のさらなる高精度化のため,Structural-thermal interactionに着目する.例え温度分布が完全に一致していたとしても,機械的な要因,例えばベアリングの支持剛性や予張力が異なると熱変位にも差がでてくる.しかしこれらの機械的要因はあらかじめ正確に把握することが困難であることに加え,経時変化も生じうる.そのためデータ同化といった統計手法も用いることを計画している.できるだけModel-basedなアプローチをとりつつ,最後に残るどうしてもモデル化が困難な要因に対してはData-drivenなアプローチを補完的に用いる. 動特性をIn-processで推定し,アクチュエータで振動をキャンセルするというシステムを完成させ,実機でデモンストレーションを実施する.さらにアクチュエータも多点かし,モードカップリング型自励振動といった3次元的に複雑な軌跡をとる振動を抑制することも目指す. センサ埋設型工具についてはステンレス鋼で製造していたが,次は超硬製のセンサ埋設工具を製造する.これにより炭素鋼といったより大きな剛性や強度を有する材料を加工する際の温度を取得できるようになる.またエンドミルの全刃先の瞬間的な温度上昇を測定するシステムも開発する.2023年度までに作成した旋削工具をもとに発展させる形で製造する. 幾何誤差の同定手法について,2023年までに手法自体は提案したが,測定精度を評価できていなかった.Traceabilityも考慮して測定精度を評価していく必要がある.
|