研究課題/領域番号 |
21H04535
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研究種目 |
基盤研究(A)
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配分区分 | 補助金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
中区分18:材料力学、生産工学、設計工学およびその関連分野
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研究機関 | 九州大学 |
研究代表者 |
澤江 義則 九州大学, 工学研究院, 教授 (10284530)
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研究分担者 |
山口 哲生 東京大学, 大学院農学生命科学研究科(農学部), 准教授 (20466783)
坂井 伸朗 九州工業大学, 大学院工学研究院, 准教授 (60346814)
中嶋 和弘 東洋大学, 理工学部, 准教授 (70315109)
鎗光 清道 九州大学, 工学研究院, 准教授 (90723205)
新盛 弘法 九州大学, 工学研究院, 助教 (40985339)
森田 健敬 九州大学, 工学研究院, 助教 (70175636)
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研究期間 (年度) |
2021-04-05 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2024年度)
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配分額 *注記 |
42,640千円 (直接経費: 32,800千円、間接経費: 9,840千円)
2024年度: 7,020千円 (直接経費: 5,400千円、間接経費: 1,620千円)
2023年度: 7,280千円 (直接経費: 5,600千円、間接経費: 1,680千円)
2022年度: 7,540千円 (直接経費: 5,800千円、間接経費: 1,740千円)
2021年度: 20,800千円 (直接経費: 16,000千円、間接経費: 4,800千円)
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キーワード | トライボロジー / 超潤滑 / ソフトマター / 生体高分子 / 生体関節 |
研究開始時の研究の概要 |
生体関節の摩擦面を形成する関節軟骨を,多くの水を内部に含み特徴的な 動的摩擦挙動を示す「高含水ソフトマター」と捉え,これが体内に存在する糖・蛋白・脂 質と協調しながら,生体関節の極めて滑らかな動作を可能とする超潤滑システムとして機能するメカニズムを探求する.ここでは,細胞を播種したアガロースゲルを軟骨組織の生きた物理モデルとし,その動的摩擦挙動から摩擦低減メカニズムを実験的に検証する.また実験により捉えられた現象を有限要素モデルと数理モデルを用いて解析することにより,その詳細メカニズムを解明するとともに,現象を支配する物理パラメータを抽出し,工学 技術として応用することを目指す.
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研究実績の概要 |
往復動摩擦試験機によるハイドロゲル軟骨モデルの摩擦評価では,柔軟な表層を仮定した弾性流体潤滑理論を用い,各速度条件下において摩擦面間に形成される理論膜厚を求め,タンパク質,ヒアルロン酸(HA),リン脂質(DPPC)の各成分およびその混合による摩擦の増減との関係を整理した.その結果,タンパク質は流体膜が薄膜化すると軟骨モデル表面に凝着・変成し,摩擦係数を増加させるものの,十分な厚さの流体膜が形成されると摩擦係数を減少させた.一方DPPCは薄膜条件下では摩擦表面に脂質膜を形成し摩擦係数を低減させるものの,流体膜厚が増加すると摩擦低減効果が失われた.HAは,高速域では増粘作用に伴う流体潤滑効果,低速域では表面間の凝着を抑制する境界潤滑効果の,二つの異なるメカニズムにより摩擦を低減し,HAとDPPCを混合することで,薄膜条件下において極めて優れた境界潤滑効果を発揮することを明らかにした. 汎用有限要素解析ソフトABAQUSを用い,前述の往復動摩擦試験における,ハイドロゲル軟骨モデルの固液二相潤滑効果について解析を行った.その結果,最も低速な滑り速度1 mm/sの条件下においても,軟骨モデル内部の間質水が一定の荷重支持を担っており,摩擦係数低減に寄与していることが示唆された. 生きた軟骨細胞を内包するアガロース軟骨モデルについては,培養後のモデル内に産生・蓄積されたグリコサミノグリカン(GAG)量を定量評価し,培養中に周期的な圧縮変形負荷を加えることで,GAG量が増加することを確認した.またレオメータベースのパラレルプレート式摩擦試験機により得られた結果に対し,Gongらにより提案された凝着摩擦モデを適用して摩擦特性を表す複数のパラメータを抽出し,モデル内のGAG量との相関を解析した.その結果,GAG量の増加により軟骨モデル/ガラス平板間の凝着は抑制されることが示唆された.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
ハイドロゲル軟骨モデルを用いた摩擦試験では,内部に多くの水を含み柔軟かつ粘弾性を有する高含水ソフトマター上で,ヒアルロン酸とリン脂質の組合せにより極めて優れた境界潤滑効果が発揮され,流体潤滑膜が薄膜化する厳しいしゅう動条件下において摩擦が効果的に抑制される現象を確認することができた.また,この低摩擦の発現には,薄膜条件下において,接触域に引き込まれたタンパク質が,ゲル表面への吸着・変成することを抑制する必要があることも示された.これについては,別途実施中の企業との共同研究において,ハイドルゲルの分子組成を調整することにより,タンパク質吸着による摩擦増加が抑制可能であることを確認している.この新しいハイドロゲルを用いることで,タンパク質存在下においても,ヒアルロン酸とリン脂質による優れた境界潤滑効果が発揮されることが期待される. アガロース軟骨モデルについては,導入したレオメータベースのパラレルプレート式摩擦試験機により得られた滑り速度と摩擦力との関係について,Gongらにより提案された凝着摩擦モデルを適用し,しゅう動界面でのせん断抵抗およびモデルのバルク物性を代表すると考えられる複数のパラメータ抽出を進めた.未だ凝着モデル内の各種物理パラメータと,実験的に抽出したパラメータの関係に整理が不十分な点が残るものの,モデル内に蓄積されたGAG量との相関は得られており,培養軟骨細胞により産生された細胞外基質成分の潤滑効果に関する知見が得られつつある. また,汎用有限要素解析ソフトABAQUSと流体解析用ユーザーサブルーチンを組み合わせ,摩擦試験中の固液二相潤滑効果を解析的に求めることができた.これも本年度の大きな進捗の一つと見なされる.
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今後の研究の推進方策 |
往復動摩擦試験機により確認された,ハイドロゲル軟骨モデル上でのHAとDPPCによる優れた境界潤滑効果について,その低摩擦発現メカニズムの解明を進める.まず,レオメータベースの摩擦試験機を用い,より広い滑り速度範囲において滑り速度に依存した動的摩擦挙動を測定し,凝着摩擦モデルとの対比により低摩擦に寄与している物理パラメータの抽出を試みる.また,しゅう動界面の可視化を試み,蛍光標識されたHAまたはDPPCを用いて,境界潤滑膜の形成,ならびにその中に形作られる低せん断構造の特定を試みる.さらに,タンパク質吸着を抑制した新たなハイドロゲル軟骨モデルを用い,タンパク質が存在する疑似生体内環境においても,HAとDPPCによる摩擦低減効果が機能することを実証する. アガロース軟骨モデルについては,培養後のモデル内に産生・蓄積されたGAG量が最大化する力学負荷条件の探索を進める.その過程において,ゲル内に蓄積されたGAG量と,摩擦試験により得られた各種パラメータとの相関解析を進める.また,培養中のモデルに対し,圧縮だけではなくせん断変形負荷を加え,コラーゲン線維量の増加を促し,その摩擦への影響を検討する.また培養条件の最適化が順調に進んだ場合は,培養したアガロース軟骨モデルに対するHAおよびDPPCによる潤滑条件下において摩擦試験を実施し,細胞外基質成分と関節液成分による協調潤滑効果の可能性を検討する. 固液二相有限要素解析では,これまでに行ってきた軟骨モデル上を接触点が移動するマイグレートコンタクトモデルに加え,軟骨モデル上を接触点が移動しないコンスタントコンタクトモデルについての解析を行い,流体潤滑時の流体圧による再水和効果について検討を加える.
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