研究課題/領域番号 |
21H04552
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研究種目 |
基盤研究(A)
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配分区分 | 補助金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
中区分21:電気電子工学およびその関連分野
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研究機関 | 東京工業大学 |
研究代表者 |
鈴木 左文 東京工業大学, 工学院, 准教授 (40550471)
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研究期間 (年度) |
2021-04-05 – 2024-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
42,900千円 (直接経費: 33,000千円、間接経費: 9,900千円)
2023年度: 7,670千円 (直接経費: 5,900千円、間接経費: 1,770千円)
2022年度: 12,610千円 (直接経費: 9,700千円、間接経費: 2,910千円)
2021年度: 22,620千円 (直接経費: 17,400千円、間接経費: 5,220千円)
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キーワード | テラヘルツ / 共鳴トンネルダイオード / メタマテリアル |
研究開始時の研究の概要 |
電磁波から見て電子デバイスは点であり、相互の結合には導体でできた導波路・アンテナ等を使わなければならない。特にテラヘルツ帯の高周波では導体損失が大きく、電子デバイスの高周波動作極限をリミットする主な要因の一つとなっている。そこで本研究では、LC共振させず単純に点デバイスを面デバイスに拡張する手法としてメタマテリアル技術を利用した非共振メタ表面のアイデアを元に、これに共鳴トンネルダイオードを集積することで負性導電メタ表面を実現する。さらに、この新たなメタ表面を分布ブラッグ反射器やアイソレーターと組み合わせることで、テラヘルツのレーザー型デバイスや一方向性増幅器の実現を目指す。
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研究実績の概要 |
本研究で新たに提案した共鳴トンネルダイオードを用いた非共振型メタマテリアルについて、現在までに電磁界解析と等価回路モデルを組み合わせた解析手法を確立し、また、作製したメタアトムの応答を測定し理論的な予測と一致する応答特性を得た。 解析においては、電磁界解析によって集積するアンテナのアドミッタンス特性を抽出し、別途構築した共鳴トンネルダイオードの等価回路モデルを組み合わせることで、周波数に対する応答特性を明らかにした。また、ダイオードのバイアス電圧によって等価回路パラメータの変化が起こり、ダイオードの負性抵抗領域ではメタマテリアルの反射係数が高くなることを明らかにした。さらに、メタ表面を分布型ブラッグ反射鏡の上に置いた単純な構造について解析を行ったところ、結合によって反射鏡による共振が現れることも明らかとなった。 上記の解析を元にメタ原子について作製を行った。メタ表面の形成にはメタアトムのアレイが必要であるが、発熱が大きくなるため、ダイオードの層の下部に熱導電性の高いInPを採用し放熱性を向上させ、また、ダイオードメサとアンテナの接続には多層レジストプロセスを採用しエアブリッジ構造形成した。このように作製したメタ原子についてテラヘルツ帯で用いられているパルス光源により広帯域に応答を測定した。テラヘルツパルスをメタ原子に照射し、反射・受信されたパルス波の波形から周波数特性を調べた結果、作製したメタ原子では200GHz付近をおおよそのピークとして反射係数が高くなり、その反射係数はバイアス依存性を持つことが実験的に示され、理論とおおよそ一致することが明らかとなった。以上から、新たに提案したメタマテリアルの動作実証に成功した。さらに、メタ表面の形成のために、エッチングプロセスを見直すことで均一なアレイデバイス形成手法を確立し、3×3までのアレイ化に成功し、応答特性の向上に成功した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
これまでにメタマテリアルの動作実証および解析モデルの妥当性の検証、ブラッグ反射器との結合解析、および、メタアトムを3x3までアレイ化しメタ表面の形成に成功している。デバイス作製においては、放熱改善の構造、多層レジストプロセスの採用、エッチングプロセスの見直しにより均一なアレイの形成ができることころまで到達した。作製したメタマテリアルのテラヘルツ時間領域分光法を利用した特性化を実施し、理論解析と実験結果の傾向の一致、そして、アレイデバイスによる応答の向上まで実験的に得られた。以上のように、形成したメタ表面に対して、ブラッグ反射器やアイソレーターを結合する一歩手前まできており、おおむね順調に進展していると考えられる。そのため、区分(2)と判断した。
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今後の研究の推進方策 |
これまでの研究により、順調にメタマテリアルの動作が明らかとなり、また、メタ表面の形成にも成功したため、作製したメタ表面に対して、最終的に目指す増幅器やレーザー型デバイスの実現に向けて、アイソレーターと分布型ブラッグ反射鏡との結合を行う。また、これらと並行して電磁界シミュレーションを通してメタマテリアル構造の最適化を行うと共に、デバイスの作製ではアレイの規模の拡大を行っていく。
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