研究課題/領域番号 |
21H04555
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研究種目 |
基盤研究(A)
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配分区分 | 補助金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
中区分21:電気電子工学およびその関連分野
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研究機関 | 横浜国立大学 |
研究代表者 |
水野 洋輔 横浜国立大学, 大学院工学研究院, 准教授 (30630818)
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研究分担者 |
山根 大輔 立命館大学, 理工学部, 准教授 (70634096)
李 ひよん 芝浦工業大学, 工学部, 准教授 (30870787)
市毛 弘一 横浜国立大学, 大学院工学研究院, 教授 (10313470)
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研究期間 (年度) |
2021-04-05 – 2026-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2024年度)
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配分額 *注記 |
41,600千円 (直接経費: 32,000千円、間接経費: 9,600千円)
2024年度: 9,620千円 (直接経費: 7,400千円、間接経費: 2,220千円)
2023年度: 7,670千円 (直接経費: 5,900千円、間接経費: 1,770千円)
2022年度: 7,930千円 (直接経費: 6,100千円、間接経費: 1,830千円)
2021年度: 9,750千円 (直接経費: 7,500千円、間接経費: 2,250千円)
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キーワード | 計測システム / 光ファイバセンサ / ブリルアン散乱 / 非線形光学 / 防災技術 / 分布計測 / ライダー |
研究開始時の研究の概要 |
長尺の光ファイバに沿った任意の位置の伸びや温度を測定する「分布型光ファイバセンサ」は、建物やダム、トンネルなどのインフラの状態を監視し、安心・安全な社会を実現すべく、世界中で精力的に研究されている。研究代表者らの独自技術「ブリルアン光相関領域反射計」は、ファイバの片端からの光入射で動作し、高空間分解能と高速動作などの利点を兼ね備えるが、空間分解能と測定可能距離とのトレードオフ、限定された歪ダイナミックレンジ、比較的低い安定性などが課題として残されている。そこで本研究では、任意波形変調や動画像処理の導入などの独自のアプローチによりこれらの課題を順次解決し、本技術を実用レベルに押し上げる。
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研究実績の概要 |
当該年度は、我々が提案した分布型光ファイバセンシング技術「ブリルアン光相関領域反射計(ブリルアンOCDR、BOCDR)」の性能向上を中心に、次の各方面から研究を推進した。すなわち、(1) 低コヒーレンス光源を用いたBOCDRの動作実証、(2) 散乱スペクトルの両側の傾斜パワーを利用したBOCDRの動作実証、(3) OCDRの理論基盤の再構築、(4) BOCDRの原理に基づく温度計測プローブの開発、(5) プラスチック光ファイバ(POF)グレーティングに基づく接触センシングの簡素化、などである。以下、それぞれについて詳述する。 (1) 従来のBOCDRでは、正弦波で周波数変調を施した狭線幅レーザの出力光を用いており、空間分解能と測定レンジが変調パラメータで決定され、両者はトレードオフの関係にあった。そこで、BOCDRにおいて広帯域光源の出力を用いることで、空間分解能の決定要因を光源のコヒーレンス長に移行し、トレードオフを緩和することができることを示した。(2) 従来の高速BOCDRとして、散乱スペクトルの片側の傾斜パワーを利用した手法が提案されていた。しかし、光損失が生じた際に、正しく動作しないという課題があった。そこで、両側の傾斜パワーの比を用いることで、光損失に影響の受けない高速動作を実現した。(3) 従来のOCDRの理論は、電気スペアナのゼロスパン周波数が0Hzであるという前提の上に成り立っていた。しかし、実験では必ずしもそうとは限らない。そこで、OCDRの理論を見直し、その空間分解能をゼロスパン周波数の関数として表現することに成功した。(4) 独立した参照光路を用いない観測BOCDRの動作原理に基づき、光ファイバの開放端付近の温度を計測する手法を開発した。ファイバへの特殊な加工を必要としないのが特長である。(5) POFを用いた接触センサを片端光入射の構成で実現した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
本研究では、BOCDRおよびOCDRの性能向上を推進している。これまでに、低コヒーレンス光源を用いたシステムを着想し、従来のシステムよりも空間分解能や歪・温度測定精度を向上できることを実験的に示すなど、当初の計画には含まれていなかった多くのアイデアを実装・実現することができている。これらの成果は、本研究が開始してから毎年度、着実に10編以上の論文をジャーナルに掲載しており(2023年度は17編)、研究は当初の計画以上に進展していると考えている。
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今後の研究の推進方策 |
今後は、引き続き、BOCDRおよびOCDRの性能向上を中心に、次の各方面から光ファイバの極限性能を追究していく。すなわち、(1) 低コヒーレンスBOCDRの可変遅延線の撤廃、(2) BOCDRに特有のノイズスペクトルの詳細解明、(3) 歪と温度の同時分離計測への展開、(4) BOCDRの原理に基づく反射点付近の温度計測法の開発、(5) POF接触センサの性能向上、などである。以下、それぞれについて詳述する。 (1) ノイズ変調に基づく低コヒーレンスBOCDRは、従来のBOCDRよりも空間分解能や歪・温度測定精度を向上できるが、分布測定のために可変遅延線を利用するため、測定レンジが限定されてしまう。そこで、周期的な擬似ノイズ変調を用いることで、その周期を電気的に調整することで分布測定が可能となり、可変遅延線を撤廃できると考えられる。(2) BOCDRにおいては、ブリルアン散乱と同時に生じるレイリー散乱の影響で、直流成分付近からノイズスペクトルが生じる。このノイズがブリルアン信号に重畳するとシステムが正しく動作しなくなるため、このノイズについての解明は急務である。このノイズの帯域幅は、変調振幅と測定レンジおよび測定ファイバ長に深く関係していると考えられ、具体的な表式を模索する。(3) 将来的な歪と温度の同時分離計測の実現を踏まえ、ラマン散乱を用いた温度センシングについても独自の方式を確立したい。まずは、レイリーピーク付近のラマン成分を用いた温度センシングを実証する。(4) これまでに開発したブリルアン温度プローブは、ファイバ端付近の温度計測に特化していた。これをファイバ中の反射点付近の温度計測に拡張した上、可能であれば多重化を図りたい。(5) POF接触センサに用いるグレーティング数を従来の500から1,10,100,1000と変化させながら特性評価を行い、感度向上を実現する。
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