研究課題/領域番号 |
21H04586
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研究種目 |
基盤研究(A)
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配分区分 | 補助金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
中区分24:航空宇宙工学、船舶海洋工学およびその関連分野
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研究機関 | 東北大学 |
研究代表者 |
大林 茂 東北大学, 流体科学研究所, 教授 (80183028)
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研究分担者 |
焼野 藍子 東北大学, 流体科学研究所, 助教 (30634331)
野々村 拓 名古屋大学, 工学研究科, 教授 (60547967)
奥泉 寛之 東北大学, 流体科学研究所, 技術専門職員 (60647957)
永井 大樹 東北大学, 流体科学研究所, 教授 (70360724)
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研究期間 (年度) |
2021-04-05 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2024年度)
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配分額 *注記 |
43,030千円 (直接経費: 33,100千円、間接経費: 9,930千円)
2024年度: 5,850千円 (直接経費: 4,500千円、間接経費: 1,350千円)
2023年度: 5,850千円 (直接経費: 4,500千円、間接経費: 1,350千円)
2022年度: 9,360千円 (直接経費: 7,200千円、間接経費: 2,160千円)
2021年度: 21,970千円 (直接経費: 16,900千円、間接経費: 5,070千円)
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キーワード | デジタルツイン / 風洞実験 / データ同化 / 粒子画像流速計測法 / 感圧塗料計測法 |
研究開始時の研究の概要 |
本研究では、風洞実験における画像計測と数値流体力学(CFD)に基づくシミュレーションをデータ同化で融合することで不確かさを減らす、リアルとヴァーチャルを融合した新しい実験法「風洞実験デジタルツイン」を研究する。この「風洞実験デジタルツイン」は、計測上の物理的制約で拘束された画像計測から、必要とするすべてのデータをデジタルツイン上で取得することを可能にする。デジタルツインの構築に必要なデータ量を明らかにし、十分な精度を保証するための指針を得て、デジタルツインを介した風洞実験データの自由な取得を可能にし、ポストコロナの時代に求められる風洞実験の省力化、遠隔化、自動化に資する。
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研究実績の概要 |
航空機や流体機械の性能評価方法は主に二種類である.一つは,風洞実験である.風洞実験の利点は,実際の飛行状態を模した流れ場を用いて流れの剥離や乱流遷移といった複雑な流動現象を再現できることである.一方で,取得可能なデータに物理的制約があること,模型を風洞内で保持するための支持装置により流れが変化すること (支持干渉) といった欠点が存在する.また,模型製作や風洞の運用コストの高さや,実験期間の長さも大きな欠点である. もう一つは,近年の計算機性能向上に伴い利用され始めた「数値シミュレーション」である.流れのシミュレーション手法は,乱流をモデルで表現するか,流れ場を離散化する格子を細かく設定し流体運動の支配方程式を直接計算するかによって大別される.数値シミュレーションでは計算領域内の全格子に流れ場の物理量が保存されるため,時空間的に非常に多くのデータが得られるという利点がある.しかし,計算精度の高さと計算コストの高さは相関関係にあり,現在航空機の開発をはじめとする工業分野で製品開発など実用的なシミュレーションに使用されるのは計算コストが低いが高い精度は期待できない 乱流モデルを用いたシミュレーションである. 実現象に忠実であるが取得可能なデータに限りがある風洞実験と,実現象の再現性は低いが大量のデータを取得可能な乱流モデルを用いたシミュレーションを融合させることで,両者の利点を活かし,欠点を補いあう理想的な流れ場の評価手法「風洞実験デジタルツイン」を実現できると考えられる. 本研究では,これを実現させる手法として,データ同化という計測値を用いて数値シミュレーションを統計的に修正する手法を採用し,三次元の流れ場について風洞実験の PIV 計測 によって得られた流れ場の速度分布を計測値として用いたデータ同化による乱流モデルパラメータの最適化を実施した.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究では,PIV データを用いた三次元流れの時間平均場に関する乱流モデルのパラメータ最適化を実施した.PIV データの特徴として,時間分解能が高く,乱流の非定常構造の断面を忠実に可視化できるという点がある.そこで,今回行った定常計算による流れ場のデータ同化から発展させ,データ同化を用いた非定常シミュレーションの精度改善を行った.実験結果によると,本研究で計算対象とした円柱周りの流れ場には,円柱後流にらせん渦構造という周期的な時間変動を伴う乱流構造が存在する.PIV データと非定常な数値シミュレーションを用いたデータ同化によってこのような乱流構造の時間変化も忠実に再現可能となるより先進的な「風洞実験デジタルツイン」の構築を試みた. そのために、Detached Eddy Simulation (DES)を導入した.Large Eddy Simulation (LES)は流れ場の非定常性を再現できるなど優れた乱流モデルの一つだが,解析コストはかなり大きく現実的には実施できない場合も多い.そこで解析コストの低い乱流モデルとLESを組み合わせたハイブリッドモデルとして考案されたのがDESである.DESでは壁近傍の小さい渦は乱流モデルによって平均的な場として計算し,壁から離れた渦が大きい領域はLESによって計算する.この手法にデータ同化を組み合わせることで,非定常の風洞実験デジタルツインを構築した.
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今後の研究の推進方策 |
PIV計測技術と並び,感圧塗料(Pressure-Sensitive Paint; PSP)計測技術も近年注目される風洞の光学画像計測技術である.PSP計測では,模型全体の詳細な圧力分布を得ることができる.航空宇宙分野では 1990 年代から風洞試験への適用が始まり,現在では圧力変化の大きな遷/超音速領域ではすでに実用的な使用の段階に至っている.定常的な PSP 計測が実用化の段階に達する一方,kHz オーダーの時間応答性を持つ高速応答型 PSP の開発や高速カメラ,高出力レーザの進歩とも関連して非定常な現象の計測を目指した非定常 PSP計測技術の研究も進められている.特に低速流れでは圧力変動も微小となるため,計測自体も難しくなる.そこで次年度は,低速流れにおける非定常PSP計測値を用いたデータ同化技術の開発を行う.二次元及び三次元の流れ場について風洞実験の PSP計測 によって得られた流れ場の圧力分布を計測値として用いたデータ同化による乱流モデルパラメータの最適化を実施する.
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