研究課題/領域番号 |
21H04597
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研究種目 |
基盤研究(A)
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配分区分 | 補助金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
中区分25:社会システム工学、安全工学、防災工学およびその関連分野
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
矢守 克也 京都大学, 防災研究所, 教授 (80231679)
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研究分担者 |
竹之内 健介 香川大学, 創造工学部, 准教授 (00802604)
大西 正光 京都大学, 工学研究科, 教授 (10402968)
及川 康 東洋大学, 理工学部, 教授 (70334696)
佐山 敬洋 京都大学, 防災研究所, 教授 (70402930)
本間 基寛 一般財団法人日本気象協会, 担当部長 (80643212)
山口 弘誠 京都大学, 防災研究所, 准教授 (90551383)
上米良 秀行 国立研究開発法人防災科学技術研究所, 水・土砂防災研究部門, 契約研究員 (50470125)
松原 悠 滋賀大学, データサイエンス学系, 助教 (30840227)
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研究期間 (年度) |
2021-04-05 – 2026-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2024年度)
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配分額 *注記 |
41,860千円 (直接経費: 32,200千円、間接経費: 9,660千円)
2024年度: 8,190千円 (直接経費: 6,300千円、間接経費: 1,890千円)
2023年度: 8,190千円 (直接経費: 6,300千円、間接経費: 1,890千円)
2022年度: 8,190千円 (直接経費: 6,300千円、間接経費: 1,890千円)
2021年度: 9,100千円 (直接経費: 7,000千円、間接経費: 2,100千円)
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キーワード | 豪雨災害 / 潜在性 / ポテンシャル事例 / アンサンブル予測 / 災害情報 / 滞在性 |
研究開始時の研究の概要 |
本研究は、起こらなかった豪雨災害、つまり、潜在的には十分に起こりうる可能性があったものの、結果として起こらなかった豪雨災害事例に注目することで、これまでにない防災情報を作成するための研究である。この研究では、起こってしまった災害ではなく、実際には起こらなかったが十分に起こる可能性があった「ポテンシャル事例」(潜在的災害事例)を、アンサンブル予測と呼ばれる手法によって明らかにし、「ポテンシャル事例」に基づく新しいタイプの防災情報を作成し、将来の災害に対する防災情報として社会に実装することを試みる。
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研究実績の概要 |
本研究は、起こらなかった豪雨災害、つまり、潜在的には十分に起こりうる可能性があったものの、結果として起こらなかった豪雨災害事例に注目することで、これまでにない防災情報を生みだし、それを社会実装することを目的とした研究である。本研究では、発生事例の回顧的検証という従来の研究スタイルを抜本的に刷新し、「ポテンシャル事例」(潜在的災害事例)を基幹概念とする新しいパラダイムを提案しようとしている。具体的には、まず、アンサンブル予測の手法を過去の事例に対してバックワードに適用し、「ポテンシャル事例」を同定し、次に、「ポテンシャル事例」に基づく新しいタイプの防災情報を考案し、さらに、それを将来の災害に対するフォーワードな防災情報として社会実装することを試みた。 具体的には、近年発生した災害事例、すなわち、西日本豪雨(2018年)、台風19号災害(2019年)などにおいて大きな被害を実際に出した地域、および、上記を含む近年の複数の豪雨災害において大きな被害が受けた福知山市などをテストフィールドとして設定した上で、5つの研究を通して、「ポテンシャル事例」の客観的同定手法の開発と、その成果を活用した新たな豪雨災害リスクのコミュニケーション手法の開発と社会実装を試みた。 研究1では、アンサンブル予測の更新に伴う不確実性の増幅を考慮したリアルタイム線状降水帯予測を行った。研究2では、日本全域分布型水文モデルへの河道測量横断面反映手法の開発と水位再現性の検証作業を実施した。研究3では、豪雨災害における犠牲者数の推定方法に関する研究を実施した。研究4は、ポテンシャル情報を活用した土砂災害ワークショップを実施した。研究5では、河川水位情報を活用した「ポテンシャル事例」を同定・評価するための指標の開発研究を実施した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
上述した5つの個別研究のうち、研究1(降雨量のアンサンブル予測に基づく「ポテンシャル事例」の同定)については、上記の災害において現実化した降雨シナリオに対してアンサンブル予測をバックワードに適用し、現実化しなかったものの十分発生する可能性があった降雨シナリオを同定する手法について開発が進んだ。研究2(河川流出・氾濫のアンサンブル予測に基づく「ポテンシャル事例」の同定)については、広域の分布型水文モデルを用いて洪水流出および河川氾濫の潜在性(可能性)とその規模について推定する手法を提案した。研究3(犠牲者数のアンサンブル予測に基く「ポテンシャル事例」の同定)についても、実際には幸い生じなかったものの十分に生じえた人的被害の規模とその発生予想地域を予測するための手法を提案した。さらに、一部の災害について、試験的に、発生以前に予想される人的犠牲数や発生予想地域に関する情報を提供する試みも実施した。研究4(「ポテンシャル事例」に関するワークショップと住民意識調査の実施)についても、この点に関する大規模ネット調査に続いて、試作版のポテンシャル情報を用いた住民ワークショップを開催した。ただし、コロナ禍の影響により、対面でのワークショップの実施時期が当初予定よりも遅れた。研究5(「ポテンシャル事例」を活用した豪雨リスク・コミュニケーション手法の開発とテストフィールドにおける実装)については、当初の予定を一部変更して、河川水位に関するデータベースを利用した新たな手法開発に取り組み始めた。上記を総合して、全体としては「おおむね順調」と評価した。
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今後の研究の推進方策 |
上記の進捗評価に基づき、上述した5つの個別研究のうち、研究1、研究2、研究3については、これまでの成果に基づき、現行のまま研究を継続・推進することで、十分研究成果が得られるものと考えている。また、研究4も、コロナ禍の影響による計画遅滞の遅れをカバーすることが今後は可能と見込まれる。研究5(「ポテンシャル事例」を活用した豪雨リスク・コミュニケーション手法の開発とテストフィールドにおける実装)についても、新しい手法を用いたポテンシャル指標の開発に目途が立ったため、今後は順調に研究を推進可能と見込まれる。 今後の推進方策としては、主に2つある。第1は、特に研究4に関するもので、テストフィールド(福知山市)に、災害ポテンシャルを評価可能なローカルな測定機器(浸水計、傾斜計など)を設置し、それらをローカルな避難情報として活用するための仕組みの構築とその評価に関する研究である。この研究はすでに一部始動させており、今後順調に推進可能と見込まれる。第2は、オープンデータ(具体的には、国土交通省の水文水質データベース)を活用して、過去の河川データ(水位データ)を基に災害ポテンシャルを評価するための手法の開発であり、これについても、上述の通り、すでに予備分析を開始しているので、今後は順調に推進できる見込みである。
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