研究課題/領域番号 |
21H04598
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研究種目 |
基盤研究(A)
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配分区分 | 補助金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
中区分25:社会システム工学、安全工学、防災工学およびその関連分野
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
倉田 真宏 京都大学, 防災研究所, 准教授 (70624592)
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研究分担者 |
趙 晃済 京都大学, 医学研究科, 客員研究員 (00706707)
小島 紘太郎 京都工芸繊維大学, デザイン・建築学系, 助教 (10822786)
杉山 治 近畿大学, 情報学部, 准教授 (40586038)
藤田 皓平 京都大学, 工学研究科, 准教授 (40648713)
大鶴 繁 京都大学, 医学研究科, 教授 (60437225)
金尾 伊織 京都工芸繊維大学, デザイン・建築学系, 教授 (80372564)
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研究期間 (年度) |
2021-04-05 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2024年度)
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配分額 *注記 |
41,600千円 (直接経費: 32,000千円、間接経費: 9,600千円)
2024年度: 6,110千円 (直接経費: 4,700千円、間接経費: 1,410千円)
2023年度: 11,570千円 (直接経費: 8,900千円、間接経費: 2,670千円)
2022年度: 14,690千円 (直接経費: 11,300千円、間接経費: 3,390千円)
2021年度: 9,230千円 (直接経費: 7,100千円、間接経費: 2,130千円)
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キーワード | 災害医療 / 事業継続性 / 地域災害 / システム分析 / 相転移 / 地域医療 / システムダイナミクス / 地震災害 / 医療施設 / 広域災害 / 非構造部材 |
研究開始時の研究の概要 |
機能損失が急激に増大し医療活動が一気に困難となる被災度レベルを“医療施設のクリフエッジ”と定義し,将来の地震活動により,クリフエッジを超える可能性,また発災時にクリフエッジまでの余裕度を簡易に評価する手法を開発する. 耐震工学と救急医療学の両面から診療科毎に診療行為に必要な要素の連関図を構築し,脆弱要素に数理モデルを組み込んで,地震外力に対して診療行為の継続判断を可能とする工学的情報を提供する. 医療機関の特殊性を理解し災害医療に精通した救急医に,機器管理のプロである臨床工学技士と医療情報の専門家が加わり,耐震工学・構造に詳しい防災・建築工学の研究者らと共同で課題を遂行する.
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研究実績の概要 |
医療施設の事業継続性計画や地震被害地域の調査結果を参考に,診療行為を成立するために必要な非構造要素・重要機器・設備を特定し,過去の実験データや解析データなどの工学的情報を収集して,被害率曲線や損失評価用モデルを構築した.また,配管用炭素鋼鋼管や塩化ビニル管の繰り返し載荷実験,また振動台実験の結果を分析し,挙動を再現する3次元数値解析モデルを作成した.また実験及び数値解析から配管に亀裂や破断などが発生する条件を特定した. 京都市地震被害想定による表層地盤と工学的基盤での推定加速度波形の活用を前提として,地盤の影響を考慮可能な建物モデルであるスウェイ・ロッキングモデルに基づく地震時応答に対するロバスト性評価法を構築した.本手法では,工学的基盤面の入力を被害想定波とした上で,表層地盤の地盤増幅特性のばらつきを考慮した. 京都市左京区における災害医療体制構築のため日本バプテスト病院,吉川病院と連携強化と地震計観測網と被災度を発信するホームページを運用開始し,平時の地域連携への利用を試験的に開始した.発信する情報の高度化を図るために,病院建物の多点微動観測データから振動解析モデルを構築し,非観測階の応答をリアルタイムに予測できるようにした.同モデルは今後も被害状況が大幅に変化するクリフエッジの分析のモデルケースに利用する. 京都市左京区域において災害時に孤立する可能性が指摘されている大原記念病院に視察や情報交換を行った.京都大学医学部附属病院においては地域連携の観点を重視した災害訓練を実施し,日本災害医学会総会において地震観測網の構築を含めた地域連携活動を発表した. またR5年度以降に予定するモデル地域や被災地域の医療施設の現地調査のため,ビデオ映像から建物内の地図を自動作成し,施設の状況を2D・3Dモデルに再現する手法としてVisual Odometoryの基礎技術検討を行った.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
データが収集できておらず当初に予定していたシステムダイナミクスモデルの構築に遅れが出ている一方で,次年度以降に予定していたモデル地域での被災度観測網の運用や平時医療への試験利用など先行して開始した課題があった。一部に計画の変更があったが,おおむね順調に進呈している.
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今後の研究の推進方策 |
被災想定地域あるいは被災地域に対して,地域医療の事業継続判断に資する工学的情報を提供することを目指す.局面が劇的に変化する特異点を“クリフエッジ”と定義し,建物特性,地盤特性,入力地震動の性質などについて極限解析手法を応用したクリフエッジの分析手法を開発を継続する. 特定診療科の診療行為に必要な医療機器(保育器,透析機器など)や特定の配管設備(スプリンクラー配管など),天井吊り下げ機器,病室間仕切壁など,脆弱性情報が不足しているものについて,実大規模の実験データや数値解析データを分析し被害率曲線及び損失評価モデルを構築する.また,新生児看護分野と連携して,地震被害から復旧するまでの手順の作成するワークショップを開催し,復旧までの手順や時間データの収集に努める。収集したデータを用いて復旧モデルを構築するとともに,看護師らが自施設で被災後に普及するまでの手順を作成できるマニュアルを構築する。 地域内の医療施設において,保有する医療リソースや設備に関するヒヤリング調査と動画計測や微動計測を利用した建物モデルの構築,に取り組む.構築したモデルには,対象とする診療活動に関わる設備や重要機器に関する情報を埋め込み,地震発生時に地域内の医療施設の被害情報を定量化する. 2023年トルコ・シリア地震で被害を受けたトルコ南部地域において医療体制への影響を現地でヒヤリング調査し,事業継続性を分析する.特に,事業継続性が困難になった理由を分析し,提案手法の妥当性を検討する.また,国内でモデル地域を選定し,地域レベルの医療体制への地震被害が劇的に変化する可能性を検証する.
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