研究課題/領域番号 |
21H04602
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研究種目 |
基盤研究(A)
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配分区分 | 補助金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
中区分25:社会システム工学、安全工学、防災工学およびその関連分野
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研究機関 | 神奈川県温泉地学研究所 |
研究代表者 |
萬年 一剛 神奈川県温泉地学研究所, 研究課, 専門研究員 (70416080)
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研究分担者 |
道家 涼介 弘前大学, 理工学研究科, 准教授 (00604109)
宇津木 充 京都大学, 理学研究科, 准教授 (10372559)
藤本 光一郎 東京学芸大学, 教育学部, 名誉教授 (80181395)
南 拓人 神戸大学, 理学研究科, 助教 (90756496)
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研究期間 (年度) |
2021-04-05 – 2026-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2024年度)
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配分額 *注記 |
41,860千円 (直接経費: 32,200千円、間接経費: 9,660千円)
2024年度: 6,500千円 (直接経費: 5,000千円、間接経費: 1,500千円)
2023年度: 8,190千円 (直接経費: 6,300千円、間接経費: 1,890千円)
2022年度: 7,410千円 (直接経費: 5,700千円、間接経費: 1,710千円)
2021年度: 11,960千円 (直接経費: 9,200千円、間接経費: 2,760千円)
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キーワード | ドローン / 電磁探査 / 熱水系 / 水蒸気噴火 / 火山 / 箱根火山 / 噴気地帯 / UAV / 大涌谷 |
研究開始時の研究の概要 |
水蒸気噴火は、地下の熱水だまりにある熱水が、地表にもたらされて爆発する現象だが、その予知には熱水だまりの位置とその状態を把握する必要がある。電磁探査はこれらを可能にするが、従来行われてきた地上探査法では人手と時間がかかるため、探査に空間的・時間的制約が生じ、噴火切迫時には危険さえ伴う。ドローン搭載型電磁探査こうした問題を一気に解決する。本研究ではこれを実用化し、安全で広範囲・高頻度の電磁探査を可能にすることで、噴火予知に革命をもたらす。
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研究実績の概要 |
箱根火山大涌谷噴気地帯では2008年頃からCSAMT探査による地下の比抵抗分布解析が複数回実施され、火山活動の消長に応じ、比抵抗分布が変化していることが明らかになっている。本研究は、ドローン搭載型電磁探査により、CSAMT探査と同等程度の探査深度と分解能を有する電磁探査を、高頻度かつ人の立入を要さず安全に実施することで、噴火切迫性評価に結びつけることを目標とする。なお、CSAMT探査では発信源に電流を流すことで放射される電磁波の電場と磁場を、測定点において測定する一方、ドローン搭載型電磁探査では、送信電流の通電と遮断を繰り返し、この際に生じる磁場の時間変化に応じて、地下で発生する誘導電流によって生じる、二次磁場(過渡応答)を測定・解析する。 2021年度および2022年度の探査で明らかになったのは、ドローン搭載型電磁探査では、CSAMT探査と比べて、人工的なノイズ源の影響を受けやすいことや、探査対象地域にある電気施設や埋設管など人工物の導体の存在により、バイポール型の発振源では複雑な電磁場が形成され、正常な過渡応答曲線の取得がほとんどできないことが判明した。バイポール型は深い探査深度を期待しての選択であったが、思わぬ弱点の存在が明らかになったことになる。 そこで、2023年度は、探査深度は浅くなるものの大地への均質な磁場の浸透が期待できる、ループ型発振源を用いた。また、深い探査深度を実現するために、過渡応答曲線の数値積分をおこない低周波成分に重みをつけたデータに基づいて、2次元逆解析を実施した。その結果、探査深度は300 m前後と、CSAMTよりやや劣る程度までと大幅に改善した。これは、本研究計画の最終目標達成に向けた大きな前進である。一方、得られた2次元比抵抗構造をCSAMT探査により得られたものと比較したところ、異なる構造的特徴も確認されるため、さらなる解析が必要である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
ドローン搭載型電磁探査については、理想的な環境ではCSAMT探査とほぼ同等な探査結果を容易に得られるものの、水蒸気噴火による被害が懸念されるような、人間活動が活発な地域ではかなりの困難を伴うという課題が昨年度(2022年度)までに抽出できた。今年度(2023年度)は、発振源及び解析法の変更や工夫により、CSAMT探査と同等に近い探査深度を実現することに成功した。ドローン搭載型電磁探査ではCSAMT探査と異なる比抵抗構造的が確認されるため、さらなる解析が必要であるが、大きな前進があったといえる。 一方、2021-22年度に実施したCSAMT探査の結果を解析した結果、箱根火山のキャップ層の頂部は、2015年噴火の火口形成地域ではなく、それより西側の噴気地帯にあることがわかった。これは従来の探査が、2015年の火口域を中心に行われていたため、西側がいわば盲点となっていたためと考えられる。西側の噴気地帯においては、噴気の直下に蒸気溜まりに相当するとみられる高比抵抗帯が認められ、その深さが深さ100m程度と浅いため、ドローン搭載型電磁探査でも十分に探査可能である。今後はこうした浅い蒸気溜まりのモニタリングを目的としたドローン搭載型電磁探査のルーチンを可能にするスキームを確立したい。 ドローン搭載型電磁探査が、当初考えられていたほど簡単に適用できなかったことを捉えて、進捗が遅れているとする見方もあるであろうが、その課題解決の過程で様々な新手法の開発や、大涌谷の予期しない構造の発見、それらを組み合わせた新たな研究開発の展開など、想定外の、しかし質の高い研究成果が得られてきているといえる。従って、本年度の進捗としては、当初の計画以上に進展していると評価したい。
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今後の研究の推進方策 |
大涌谷の西側の噴気地帯では、キャップ層およびその中の蒸気溜まりとみられる高比抵抗帯が、ドローン電磁探査で探査可能な深度内にあることが判明した。この地域は幸いにしてノイズ源から遠く、人工物も比較的少ない。そこで、本年度は当初考えていた大涌谷東部から、探査の対象を移す事を検討する。これにより、浅い蒸気溜まりのモニタリングを目的としたドローン搭載型電磁探査のルーチンを可能にするスキームを確立したい。 なお、2023年11月に台湾中央研究院の招聘で、同地の大屯火山を訪れて共同調査を実施した。先方も箱根と同様、観光地に突発的な水蒸気噴火を起こす可能性のある噴気地帯を抱えており、安全確保のための火山モニタリングに強い関心を示されたための招聘であった。今後は、国際共同研究によるドローン搭載型電磁探査研究開発の実施を視野に入れて研究を推進していく方針である。
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