研究課題/領域番号 |
21H04609
|
研究種目 |
基盤研究(A)
|
配分区分 | 補助金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
中区分26:材料工学およびその関連分野
|
研究機関 | 東北大学 |
研究代表者 |
福山 博之 東北大学, 多元物質科学研究所, 教授 (40252259)
|
研究分担者 |
大塚 誠 東北大学, 多元物質科学研究所, 准教授 (30241582)
中村 哲也 東北大学, 国際放射光イノベーション・スマート研究センター, 教授 (70311355)
|
研究期間 (年度) |
2021-04-05 – 2026-03-31
|
研究課題ステータス |
交付 (2024年度)
|
配分額 *注記 |
41,210千円 (直接経費: 31,700千円、間接経費: 9,510千円)
2024年度: 9,230千円 (直接経費: 7,100千円、間接経費: 2,130千円)
2023年度: 9,230千円 (直接経費: 7,100千円、間接経費: 2,130千円)
2022年度: 7,280千円 (直接経費: 5,600千円、間接経費: 1,680千円)
2021年度: 6,240千円 (直接経費: 4,800千円、間接経費: 1,440千円)
|
キーワード | 窒化アルミニウム / 結晶成長 / 液相成長 / 単結晶 / 窒化物半導体 |
研究開始時の研究の概要 |
本研究は、窒化アルミニウム(AlN)単結晶基板の新たな成長法の開発を目指すものである。本研究で得られるAlN単結晶基板は、深紫外LEDの発光効率向上に必要であるだけでなく、無線通信等の高周波デバイスや電力制御用パワーデバイス用の基板としても有用である。本研究では、自由度を拡張することによって、結晶成長の駆動力を平衡近傍に制御しながら成長するという新たなバルクAlN結晶成長法を提案し、その実証を行うとともに、結晶成長機構の解明を行う。
|
研究実績の概要 |
今年度は、AlN溶解度積の大きなFe-X2成分系フラックスおよびFe-X-Y3成分系フラックスを用いた窒化アルミニウム(AlN)の結晶成長実験を実施した。成長実験に先立ち、成分元素XとしてCr、元素YとしてNiを添加したFe系フラックスのAlNの溶解度積を熱力学データベースを用いて計算し、実験条件について検討した。 Fe-Cr合金の一例としてFe-16mass%Cr(SUS430)、Fe-Cr-Ni合金の一例としてFe-18 mass%Cr-8mass%Ni合金 (SUS304L) をフラックスとして用いたAlN結晶成長を試みた。種結晶としては、AlNを製膜したサファイア基板ならびにバルクAlN単結晶を用いた。本実験はいずれも窒素分圧1 barにおいて行った。得られたAlN結晶について、走査型電子顕微鏡(SEM)による断面観察、透過型電子顕微鏡(TEM)による転位の様子を観察した。2次イオン質量分析(SIMS)により、結晶中の不純物濃度を定量した。 SUS430を結晶成長用溶媒として用い、冷却速度、結晶極性、成長温度が、AlN結晶成長に及ぼす影響を明らかにするための実験を行った結果、Fe-Cr系合金は、結晶成長用溶媒として有望であること、AlN結晶は、+c軸(Al極性)方向に優先的に成長すること、また、結晶中の炭素濃度は、昇華法の結晶と比べて約2桁減少したことを明らかにした。 溶融SUS304Lを溶媒として用いた成長実験では、1873から1773 Kまで冷却することでテンプレート基板上にAlN結晶が成長することを確認した。1873から1773 Kに冷却した時に生じるAlN溶解度積の差 (過飽和度) によりテンプレート基板上にAlN結晶が成長したものと考えられる。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
Fe-Cr系およびFe-Cr-Ni系フラックス法によるAlN結晶成長実験については、成長速度が速く、期待以上の研究成果が得られている。結晶構造評価については、放射光X線による結晶性評価が未実施であるが、透過型電子顕微鏡(TEM)による転位観察および2次イオン質量分析(SIMS)による不純物の測定がほぼ予定通り進行している。バルクAlN上に成長したAlN界面からの新たな転位発生はなく、界面が判別できないきれいなエピタキシャル成長が得られている。
|
今後の研究の推進方策 |
昨年度に引き続き、Fe-Cr系およびFe-Cr-Ni系フラックスを用いたバルクAlN単結晶成長法の最適化を目指す。まず、熱力学的データに基づいて、各フラックス中のAlN溶解度積の組成依存性を計算する。各フラックスの液相線温度のデータと組み合わせて、最適な実験条件を抽出する。フラックスの組成以外に、成長温度、冷却速度、坩堝材、回転機構などの成長パラメータを変えながら、成長速度と結晶品質が両立する条件を見出す。また、成長機構について考察する。 得られたAlN結晶については、透過型電子顕微鏡(TEM)による転位観察および2次イオン質量分析(SIMS)による不純物の定量を実施し、上記の成長パラメータ依存性を明らかにする。また、ナノテラスなどの放射光施設を用いて結晶評価を試みたい。
|