研究課題/領域番号 |
21H04611
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研究種目 |
基盤研究(A)
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配分区分 | 補助金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
中区分26:材料工学およびその関連分野
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研究機関 | 東北大学 |
研究代表者 |
加藤 秀実 東北大学, 金属材料研究所, 教授 (80323096)
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研究分担者 |
和田 武 東北大学, 金属材料研究所, 准教授 (10431602)
魏 代修 東北大学, 金属材料研究所, 助教 (20785810)
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研究期間 (年度) |
2021-04-05 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2024年度)
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配分額 *注記 |
43,030千円 (直接経費: 33,100千円、間接経費: 9,930千円)
2024年度: 5,980千円 (直接経費: 4,600千円、間接経費: 1,380千円)
2023年度: 6,110千円 (直接経費: 4,700千円、間接経費: 1,410千円)
2022年度: 6,760千円 (直接経費: 5,200千円、間接経費: 1,560千円)
2021年度: 24,180千円 (直接経費: 18,600千円、間接経費: 5,580千円)
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キーワード | デアロイング / 接合 / 相分離 / 共連続構造 |
研究開始時の研究の概要 |
相分離という自然の摂理に阻まれて接合することが困難なマグネシウムと鉄,マグネシウムとチタンの異種金属同士を独自技術である金属溶湯脱成分(デアロイング)法を用いてナノ・ミクロンスケールで二相が絡みあう特異な複合組織の自己組織により機械的に強固に接合する“デアロイング接合”を世界に先駆けて提案し,マグネシウム合金の異種素材間接合技術を確立する.
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研究実績の概要 |
前年度は、Feの先端にNiメッキを施し、固相拡散を通じてFe-Ni拡散対を作製した後、Mgと突き合わせてホットプレスを行うといった手法を用いた。本年度は、FeとMgの間にNi濃度の異なるFe100-xNix(x=20, 30, 40, 50, 60, 70)合金層を挿入し、まずFeとFe-Ni層を固相拡散させた後、Mgとの金属浴脱成分反応を通じた接合を試みた。FeとFe-Niの固相拡散により接合界面においてNi組成が連続的に変化し、約40 μm程度の厚さを持つ拡散相が形成されていることが確認された。各試料をMgと接合したところ、x=20の試料においては反応層が形成されておらず、金属溶湯脱成分反応が進行しなかった一方で、x=30-70の試料において、α-Feと(Mg-Mg2Ni)の共連続組織が確認され、接合界面において当反応が生じていることが確認された。X=30, 40, 50の試料においてはそれらが連続的に絡み合った理想的な共連続組織が見られたのに対し、x=60, 70の試料では反応層側に占めるα-Feの体積分率が減少し、リガメントが孤立している様子が伺えた。また、Ni量の増加に伴ってもろいMg2Niの析出量が増えることが観察された。引張り試験より、x=20ならびにx=60, 70の試料においては十分な接合強度が得られなかったが、理想的な共連続組織が見られたx=30, 40, 50の試料において、100 MPa程度の強固な接合が達成され、いずれもMg側の母材破断が生じた。 本研究において、室温で互いに相分離するMgとFeを十分な強度で接合することに成功した。これまでその接合が困難であると考えられてきた元素間において当技術を通じた接合の可能性が示され、本接合技術の幅広い展開が今後大いに期待される。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
進捗状況として概ね順調に進んでいる。本年度は、MgとFe間にNi濃度の異なるFe-Ni合金層を挿入し、Mg-Fe間での強固な接合を試みた。熱処理条件等、前年度の知見を十分に活かし、Ni濃度の異なるFe-Ni中間体の中から、脱成分反応ならびに高い接合強度を有する試料作製の最適な合金組成、実験条件を明らかにすることができた。前年度の検討事項に挙げていた、メッキを用いたFe-Ni拡散対の水素還元による清浄な界面での接合は現段階でまだ行えていないが、そちらに関しても今後実験を進めていき、本手法で得られた結果と比較、検討していく予定である。
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今後の研究の推進方策 |
一般には室温で混ざりあわないと考えられている元素同士の接合に当技術を今後広く展開していくことが期待される。一つの例としてMg-Tiが挙げられる。Mg-TiもMg-Feと同様、室温において各元素間で相分離を起こすことが状態図上から読み取れる。金属溶湯脱成分法の異種金属間の混和と分離を利用した本接合においては、中間体の選定は非常に重要である。今回、Mg-Feの接合にはFe-Niを中間体として接合を行ったが、Mg-Tiにおいては、Ti-CuやTi-Sc、Ti-Y等の中間体を用いることを今現在検討している。CuやSc、YはMgと混和するため、界面部分において共連続構造が形成されることが予想され、それを通じてMg-Ti間に強固な接合を形成することが可能となるものと考えられる。また、Mg-Feの接合におけるFe-Ni合金層でも見られたように、その接合強度は中間体の合金組成に大きく依存することが予想される。そこでそれら中間体の合金組成を変え、その際の脱成分挙動や接合強度について評価していきたいと考えている。 また、相分離が生じる単一の元素ペアでの接合のみならず、今後はより実用的な系であるMg合金(AZ91やKUMADAI合金等)と鋼板(SS400, SUS304)の接合やMg合金とTi合金(TiNiやTi-6Al-4V合金)の接合に当技術を展開していくことで、その応用範囲の拡大を目指していきたい。
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