研究課題/領域番号 |
21H04615
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研究種目 |
基盤研究(A)
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配分区分 | 補助金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
中区分26:材料工学およびその関連分野
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研究機関 | 名古屋大学 |
研究代表者 |
長谷川 正 名古屋大学, 工学研究科, 教授 (20218457)
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研究分担者 |
佐々木 拓也 名古屋大学, 工学研究科, 助教 (70815787)
ガイダ ニコアレキサンダー 名古屋大学, 工学研究科, 特任助教 (70837559)
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研究期間 (年度) |
2021-04-05 – 2024-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
42,900千円 (直接経費: 33,000千円、間接経費: 9,900千円)
2023年度: 3,900千円 (直接経費: 3,000千円、間接経費: 900千円)
2022年度: 16,640千円 (直接経費: 12,800千円、間接経費: 3,840千円)
2021年度: 22,360千円 (直接経費: 17,200千円、間接経費: 5,160千円)
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キーワード | 成膜技術 / 遷移金属多窒化物 |
研究開始時の研究の概要 |
数十ギガパスカル程度の超高圧合成によって近年発見された遷移金属二窒化物の電気抵抗率などの電子物性を,基板上に合成された薄膜試料を用いて測定を行う.まず,電子物性測定に適する薄膜試料の超高圧成膜技術を確立する.そして,電子物性を高精度に測定し,信頼性の高い実験データを取得する.その結果,電子物性を正確かつ詳細に実験的に明らかにして,これまでに解明した結晶構造や電子構造との相関を調査し,遷移金属二窒化物の電子物性の全貌を解明する.これに基づき,ドーピング,元素置換,固溶体化へと展開し,電子磁気相図を作成するとともに,結晶化学と物性物理学に基づいて同物質群の電子物性の制御指針を明示する.
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研究実績の概要 |
近年超高圧高温下では遷移金属多窒化物の合成が多く報告されてきた.PtN2もその一つであり,その物性についてこれまで理論計算が多数されてきたが,電子物性を実験で測定した報告はない.従来の合成方法ではPt箔またはPt粉末を出発試料として用いており,細く絞ったレーザーによる加熱方法であるため,合成試料は脆弱でPtが多く残存する.このため,電子物性測定に適した試料の合成が困難であった.そこで,出発試料として絶縁基板上に成膜したPt薄膜を用いてPtN2薄膜を得ることができれば,種々の物性測定が可能になると考え, PtN2薄膜の合成および膜性状の評価と物性測定手法の確立を目的とした.高温高圧合成実験にはキュレット径350μmのLH-DACを使用した.基板をc-BN,Pt膜厚を約0.09μmとした出発試料を用いて,PtN2薄膜の合成を試みた.回収された試料のSEM像から,膜状形態の組織が観察された.合成された膜は角張った結晶粒が密に敷き詰まった組織をしており,これは,過去に報告された白金箔や白金粉末を出発試料として用いて合成されたPtN2の表面形態とよく似ている.また,島状形態も観測され,加熱のできなかった領域では平坦な組織が観測された.また,それぞれの領域におけるラマン分光測定の結果から,加熱できなかった領域ではPtN2のラマンピークが観測されなかったが,十分な温度まで昇温されたと思われる領域ではPtN2のラマンピークが観測された. また,膜状形態における元素EDXマッピング分析から,Bは検出されなかったため,検出されたNはc-BNではなくPtN2由来であると結論した.PtとNはEDX分析した領域全体から検出されており,原子数濃度比はPt:Nは約1:2であった.これはPtN2の組成比と整合する. 以上の結果から,基板上の一部にPtN2薄膜を合成することに成功したと結論した.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究の主な内容は,「成膜技術の確立と薄膜合成」,「測定技術の確立と物性測定」,「物性の解析と解明」,「化学修飾と物性の制御」の4つであり,様々な遷移金属二窒化物を対象に研究を進める.初年度には主に,「成膜技術の確立と薄膜合成」と「測定技術の確立と物性測定」に主眼を置いて研究を進め,対象物質は代表的な遷移金属二窒化物であるPtN2を対象に研究を進める計画であった.これらの目的に対して,まず,「成膜技術の確立と薄膜合成」については,新型コロナ感染症の影響で実験装置の電子デバイス部品と真空排気装置の輸入遅延に伴う納期遅延が影響して成膜装置の納品が大幅に遅れた中でも,従来設置されていた小型の簡易型成膜装置を駆使して,極薄基板や基板下部の断熱層の追加といった工夫をするなど,様々な条件でPtN2薄膜の合成を試み,ごく微小ながら世界で初めてPtN2の薄膜合成に成功した.特に,我々のグループでこれまで長年失敗を重ねていたc-BNの基板を用いてPtN2薄膜の合成に成功した結果は,金属多窒化物,薄膜合成化学,固体物理学,高圧力物質科学の各分野に与える影響が大きい重要な成果である.また,「測定技術の確立と物性測定」については,無冷媒で約10K以上の低温から室温までの温度範囲で,ごく微小試料の電気抵抗を測定する装置を独自に開発し,その後ダイアモンドアンビルセルを用いた超高圧下でも電気抵抗を測定できる実験装置の開発へと展開している.これらの成果は,関連学会において発表され学術上の意義は極めて高いと評価された.さらに,上述のような遷移金属窒化物の基礎物質科学の進展に大きく貢献するのみならず,これらの物質を材料として,ナノテクノロジーやエレクトロニクス,さらには環境工学へ応用できる可能性を切り拓いた点も学術上意義が高いと考える.以上より,当該年度の研究は概ね順調に進展しているといえる.
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今後の研究の推進方策 |
今後はこれまで開発した技術と成果をベースに研究を進める.「成膜技術の改良と薄膜合成」として,50GPa以下での薄膜合成では,成膜技術の改良と窒化物ごとの成膜条件の調査を行う.50GPa以上での薄膜合成では,窒化物ごとの成膜条件の調査に加えて,ガスケットの改良を行う.新たに購入した真空成膜装置によって様々な合金のナノレベルで均一な出発試料を成膜し,窒化物薄膜を作成する.SEM-EDX,放射光XRD,顕微ラマン分光による膜性状と微構造の調査を行う.「測定技術の改良と物性測定」と して,微細加工電極や,基板蒸着後に微細加工成形をした測定用試料を作製する.低温からの高精度な定量物性測定を汎用的に行うために前年度に新たに構築した電気抵抗測定システムを改良する.また,2K以上の低温からの測定と磁場中での測定を行うために,SQUIDを用いた測定システムに対応した測定用試料ホルダーの製作を行う.主に,下記の物性測定を進める.電気抵抗率の測定を行い,電子状態(金属,超伝導,半導体)と構造・磁気 転移の有無を調べる.金属の場合は,温度依存性を解析して電気伝導機構を考察する.超伝導体の場合は,臨界磁場と臨界電流密度を決定する.半導体の場合は,電流・電圧特性と活性化エネルギーを評価する.ホール効果の測定を行い,半導体のキャリアーの特定とエネルギーギャッ プ値を評価する.異常ホール効果の有無と磁気転移の可能性を調査する.反射スペクトルの測定を行い,紫外可視近赤外領域にわたる測定から ,電子状態と半導体のエネルギーギャップ値の決定する.磁気抵抗効果の測定を行い,磁気抵抗の符号の特定と,巨大磁気抵抗効果の有無の評価する.第一原理計算によって,成膜された試料の同定相の電子構造を明らかにする.さらに,上記の物性測定結果と計算により解明した電子構造の結果を比較・検討する.
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