研究課題/領域番号 |
21H04616
|
研究種目 |
基盤研究(A)
|
配分区分 | 補助金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
中区分26:材料工学およびその関連分野
|
研究機関 | 名古屋大学 |
研究代表者 |
武藤 俊介 名古屋大学, 未来材料・システム研究所, 教授 (20209985)
|
研究分担者 |
齊藤 元貴 名古屋大学, 工学研究科, 助教 (00749278)
志賀 元紀 東北大学, 未踏スケールデータアナリティクスセンター, 教授 (20437263)
岡島 敏浩 公益財団法人科学技術交流財団(あいちシンクロトロン光センター、知の拠点重点研究プロジェクト統括部), あいちシンクロトロン光センター, 副所長 (20450950)
大塚 真弘 名古屋大学, 未来材料・システム研究所, 講師 (60646529)
|
研究期間 (年度) |
2021-04-05 – 2025-03-31
|
研究課題ステータス |
交付 (2024年度)
|
配分額 *注記 |
41,990千円 (直接経費: 32,300千円、間接経費: 9,690千円)
2024年度: 4,940千円 (直接経費: 3,800千円、間接経費: 1,140千円)
2023年度: 7,280千円 (直接経費: 5,600千円、間接経費: 1,680千円)
2022年度: 14,430千円 (直接経費: 11,100千円、間接経費: 3,330千円)
2021年度: 15,340千円 (直接経費: 11,800千円、間接経費: 3,540千円)
|
キーワード | ナノ材料解析 / インフォマティクス技術 / 複合電子分光 / 電子チャネリング / ナノ材料物性 / インフォマティクス / 蛍光X線分光 / 電子エネルギー損失分光 / 機械学習 / 複合分光 |
研究開始時の研究の概要 |
本研究の目的は,透過電子顕微鏡法(TEM)の持つ本来の強みを生かした独自の複合電子顕微分光法(Integrated Electron Microscopic Spectrometry: IEMS)による材料中の様々な格子欠陥の構造及び基礎物性をナノメートルスケールで(しかし強く電子ビームを絞らずに)高精度定量計測する新機軸ロバスト手法を確立・検証そして応用することである.また放射光分光との連携によってマルチスケール・マルチモーダルなデータ駆動統合型計測の枠組みを構築し,広く世界に発信する.
|
研究実績の概要 |
1.超高圧電子顕微鏡施設では,ガス環境下でTEM観察可能な世界唯一の超高圧走査透過電子顕微鏡を有する。2018年に四重極質量分析計(QMS)を設置し,微粒子金属触媒反応の構造変化観察と反応ガス検出に成功している。特に自動車排気ガス浄化触媒,水素吸蔵合金,カーボンニュートラルを目指したメタネーション反応などのメカニズムを新たな視点で明らかにしつつある。令和5年度には,新たにガスクロマトグラフ(GC)を従来のQMSシステムに接続するシステム拡張を行い,NOx浄化における副反応で重要なN2O(CO2と等質量)及びCO(N2と等質量)の分離検出が可能となった。 2.当グループではビームロッキング法によるサイト選択的な不純物・ドーパント・点欠陥などの定量的状態分析法の開発応用を進めている。本手法のボトルネックとなっているプローブ径のナノ化およびサンプリング点の効率化によって測定時間を二桁短縮するなどさらなる広範囲の分野への実用化に向けた手法改良に成功した。 3.主としてMg,Siを微量に含んだアルミニウム合金は100℃という低温での時効で機械特性が大きく変わることが知られている。我々は,あいちSR,大同大学,東京理科大学と共同で,熱測定,X線小角散乱及び高分解能STEMを併用したマルチスケール測定した結果を物理法則を考慮した機械学習スキームでマルチモーダル解析するプロジェクトを開始した。ミクロ及びマクロな多くの測定データの統計的な取り扱いによって,S/TEM技術では観測不可能であった析出物クラスターを定量的に検出・可視化する手法を開発し,さらにマクロな測定と結び付けて機械特性などのマクロな物理量とミクロな組織変化を結び付け,定量化する新しいデータ駆動科学を構築しつつある。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
1.当グループが開発したHVEM-QMS-GCオペランド計測システムによって、ガス中での化学反応に伴う材料の構想変化と反応生成物である各種ガスの消費・生成が同時にかつ半定量的に検出できるのみならず、GCによって質量の同じガス種の分離検出も可能となった。ガス環境TEMにおいてGCの搭載は世界初めての成功例である。 2.従来セラミックスの機能改善のために添加する微量希土類元素が粒界偏析する現象について,対象粒界しか取り扱うことのできなかったTEM分析技術であるが,ビームロッキング法と原子レベルSTEM観察を組み合わせ、結晶粒方位のランダムな一般粒界についても希土類周囲の配位環境の指導原理を明らかにしたことは特筆に値する. 3.コンピュータ制御されたSTEM分光などによって生み出されるビッグデータと放射光分光などのマクロな計測データを統合する新しいデータ科学の手法の確立を進め、ようやく具体的な成果としてAl合金の低温時効効果における析出物の観察において従来の空間分解能の限界を突破しつつある。 以上の様に当研究によって従来では見えない、測れない物性を観察・測定する新たな手法を編み出し,実材料に適用することを次々と進めていることからも順調に進捗していると言って差し支えないと考えている.
|
今後の研究の推進方策 |
今後の研究推進方策として以下のような方針を立てている: 1.ビームロッキングモードによるサイト選択的測定では,本年度末に導入された高速カメラの応用で4D-STEMが可能となった。最終年度はこのシステムを利用して、nm程度の積層間隔を持つ多層膜中のサイト選択的元素分析を行う。 2.特に次年度は最終年度であるため、これまでの成果をハイインパクトなジャーナルへの投稿、および国際会議などへの積極的参加による成果発信に努めたい. 以上の項目以外にも,これまで開発した様々な異種分光法を組み合わせて情報抽出するための物理情報を取り入れたインフォマティクス応用のスキーム構築について具体的な系への応用への展開を図ってこの研究テーマを完遂したい。 特に大きな計画変更を行う予定はなく、問題点も見当たらない。
|