研究課題/領域番号 |
21H04624
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研究種目 |
基盤研究(A)
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配分区分 | 補助金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
中区分26:材料工学およびその関連分野
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研究機関 | 九州大学 |
研究代表者 |
戸田 裕之 九州大学, 工学研究院, 教授 (70293751)
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研究分担者 |
小林 正和 豊橋技術科学大学, 工学(系)研究科(研究院), 教授 (20378243)
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研究期間 (年度) |
2021-04-05 – 2024-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
27,820千円 (直接経費: 21,400千円、間接経費: 6,420千円)
2023年度: 9,490千円 (直接経費: 7,300千円、間接経費: 2,190千円)
2022年度: 10,660千円 (直接経費: 8,200千円、間接経費: 2,460千円)
2021年度: 7,670千円 (直接経費: 5,900千円、間接経費: 1,770千円)
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キーワード | シンクロトロン / 3Dイメージング / 3DのX線回析 / 高分解能 / マルチモーダル |
研究開始時の研究の概要 |
最近実現した超高分解能・高エネルギーX線顕微鏡を基盤とし、X線イメージングでは困難な観察倍率切り替え、特殊XRDとの融合を図る。実験・解析環境の統合により、3D/4D材料科学をマルチスケール・マルチモーダル学術手段へと展開する。 例えば、破壊を高分解能でその場観察するだけでなく、局所損傷や破壊を見逃さずズームインし、転位、空孔、結晶等をナノレベル3D/4Dマッピングする。格子欠陥から粗大欠陥まで、ナノ~マクロに至る3D構造をカバーし、時間発展現象を誤りなく把握・解釈できる3D/4D材料科学を実現する。オンリーワン・ナンバーワンの分析計測技術によりX線イメージングの適用範囲を飛躍的に向上させる。
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研究実績の概要 |
マルチスケール化に関し、超高分解能⇔高分解能の切り替え技術を、マルチモーダル化に関しては、X線CT⇔XRDの切り替え技術、およびそれらデータ対応技術に引き続き取り組んだ。エアベアリングステージの導入により、これら3技術を同一ビームラインで同時に組み上げ、これらを数分以内で切り替えられるようにした。マルチモーダル化に関し、分散粒子の追跡による3D塑性歪みマッピングとそれに基づく幾何学的に必要な転位(GND)、統計的に必要な転位(SSD)、原子空孔の3Dマッピングを実施し、TRIP鋼の相変態・損傷挙動を精密に解析できることを確認した。また、アルミニウムに適用した例では、DCT法による多結晶組織の精密計測と水素脆化挙動のイメージングの援用が可能となった。 4月放射光実験は、放射光施設SPring-8の高分解能イメージング用ビームラインBL20XUにて、結晶粒径およびオーステナイト相の安定度を制御した低炭素TRIP鋼の変態・破壊挙動に適用した。XRDで得られる結晶方位、転位密度の情報、XCTで得られる粒形状、粒サイズなどの情報と、オーステナイトからマルテンサイトへの応力誘起相変態・損傷・破壊の情報を取得できた。φ1μmに絞った細束X線をラスタースキャンしながら試料を同時に回転させ、試料内の全ての位置に全ての方向から細束X線を入射してX線回折パターンを数十万枚取得する特殊なX線回折実験のデータと位相CTのデータを位置合わせし、これらが25%負荷歪みまでの範囲で充分な精度で対応可能であることを確認した。これにより、ほとんど全てのオーステナイト粒を可視化・特定でき、さらにXRD回折斑点との対応付けによる結晶学的解析が可能になった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
予定した研究開発を順調に実施するとともに、プロジェクト全体で目標とする解析を完全な状態で取得する実験を実施することが出来た。また、プロジェクトの全期間を通じて必要な実験データの取得を実施することが出来た。エアベアリング式の試料回転ステージの導入による高速・高精度試料回転技術の導入など当初から予想された技術的困難さに加え、位置合わせの困難さ、位置合わせ技術の重要性、位相コントラストイメージングのコントラスト保証の重要性などを克服し、この有効性を高度な応用研究でも実証できた。
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今後の研究の推進方策 |
一般課題 として充分なビームタイムを確保したうえで、マルチスケール化に関しては、複雑変形する試料内部の関心領域(60×60×60micron^3)の特定、3D精密位置合わせ技術の開発、曲げ試験など、より高度な材料試験への対応、先端材料での開発技術の適用と修正箇所のフィードバックなどを行う。 既に、4月には5日間のビームタイムを確保している。超高分解能⇔高分解能、およびX線CT⇔XRDの切り替え技術、およびそれらデータの対応技術でこれまで2年間で開発したものを応用研究で試行する。用いる材料は、加工誘起相変態する低炭素TRIP鋼およびAl-Zn-Mg高力アルミニウム合金である。まず、4月の実験ではTRIP鋼の曲げ試験をその場観察し、その相変態、損傷、破壊挙動を解析する。局所的な三軸応力と相変態、損傷、破壊挙動の関係を解析しながら、計測技術、解析技術上の問題点を洗い出し、技術の改良に資する。最終的には、TRIP鋼の多軸応力下の挙動を解明することを目的とする。 7月の実験(採択済み)では、アルミニウム中の分散粒子の追跡による3D塑性歪みマッピングとそれに基づく幾何学的に必要な転位(GND)、統計的に必要な転位(SSD)、原子空孔の3Dマッピングを適用した解析を実施する。最終的には、同材料の局所的な水素分配、析出物への水素濃化による水素脆化挙動の発現を解析する。これにより、TRIP鋼(XRDによる修正Williamson-Hall法)とは異なる手法で試料中の転位密度3Dマッピングを行う手法を確立するとともに、アルミニウム合金の水素脆化挙動やその防止法などでも学術的成果を得る。 最終的に、3年間で開拓した技術を材料工学の懸案に適用し、高度な研究を遂行できる環境を整備完了する。また、TRIP鋼およびアルミニウム合金で得られた研究成果に関しては、学術成果として論文で公表する。
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