研究課題/領域番号 |
21H04625
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研究種目 |
基盤研究(A)
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配分区分 | 補助金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
中区分26:材料工学およびその関連分野
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研究機関 | 大阪公立大学 (2022-2023) 大阪府立大学 (2021) |
研究代表者 |
森 茂生 大阪公立大学, 大学院工学研究科, 教授 (20251613)
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研究分担者 |
作田 敦 大阪公立大学, 大学院工学研究科, 准教授 (30635321)
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研究期間 (年度) |
2021-04-05 – 2024-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
43,550千円 (直接経費: 33,500千円、間接経費: 10,050千円)
2023年度: 4,680千円 (直接経費: 3,600千円、間接経費: 1,080千円)
2022年度: 9,620千円 (直接経費: 7,400千円、間接経費: 2,220千円)
2021年度: 29,250千円 (直接経費: 22,500千円、間接経費: 6,750千円)
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キーワード | 透過型電子顕微鏡 / 結晶化ガラス / ホロコーン暗視野法 / トモグラフィ観察 / ホロコーン照射 / 硫化物系固体電解質 |
研究開始時の研究の概要 |
結晶化ガラス系蓄電固体材料で構成される全固体電池のイオン伝導度や充放電サイクル特性等の電池特性は、ヘテロ/ホモ界面状態及び物理化学的因子に支配されている本研究では、電子線を用いたホロコーン照射による2次元/3次元構造観察法を確立し、ヘテロ/ホモ界面近傍でのナノスケールで生じる結晶/非晶質状態の定量的な評価・解析を行う。本観察手法を用いて、高速イオン伝導の起源となるナノ構造(結晶、ガラス、界面構造)の2次元/3次元構造の直接観察を行い、高速イオン伝導の物理的起源を明らかにし、全固体電池実現に向けた次世代電池材料を開発するための新たな一歩を踏み出す。
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研究実績の概要 |
蓄電固体材料では構成されるヘテロ/ホモ界面では、特異なイオン輸送、蓄積特性がしばしば観測される。これらの現象は蓄電固体界面近傍でのナノスケールで生じる物理化学状態(イオン濃度・価数、化学ポテンシャル、電位、結晶/非晶質構造、歪)などの変調・分布に起因すると考えられている。本研究では、透過型電子顕微鏡を用いてホロコーン暗視野法と3次元立体構造可視化法を融合させ、ガラスセラミックス系蓄電固体材料を研究対象材料とし、空間的に不均一に形成されているナノ構造や正極/固体電解質の界面構造の結晶構造、結晶対称性、サイズ、形状や密度(結晶化度)等を定量的に評価・解析できる3次元ナノ構造可視化・計測法を開発する。蓄電固体界面近傍でのナノスケールで生じる結晶/非晶質構造(結晶構造、結晶対称性、サイズ、形状や密度(結晶化度))および局所歪を明らかにし、充放電サイクル劣化機構の解明を目指す。2021年度において、ホロコーン照射光学系の電子線偏向角度と角度制限絞りとの相関を計測し、傾斜角度の制御精度の最適条件を探索した。また、ホロコーン照明を用いて、75Li2S-25P2S5結晶化ガラスの微細構造観察を行った。また、電子線トモグラフィ法を用いた3次元ナノ構造観察を行うために、電子顕微鏡の光軸に対してx軸傾斜角55°かつ試料回転角360°で観察試料を傾斜/回転させることが可能な回転式試料ホルダーの試作を完了した。本ホルダーを用いて、全固体電池材料の負極材料として期待されているSnの充放電サイクルに伴う3次元微細構造観察を行った。その結果、負極複合体中において, Snは硫化物固体電解質と乱れのない界面を保持しながら, 初回充放電時においてはほぼ可逆的にリチウム化, および脱リチウム化していることが明らかとなった.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
透過型電子顕微鏡を用いた結晶化ガラス固体電解質の微細構造観察府として、ホロコーン照射による暗視野法を確立するために、ホロコーン照射光学系の電子線偏向角度と角度制限絞りとの相関を計測し、傾斜角度の制御精度の最適条件を探索した。ホロコーン取捨を用いた暗視野法を用いて、75Li2S-25P2S5結晶化ガラスの結晶化過程とイオン伝導度の相関を明らかにするために、25℃から500℃の温度範囲で、結晶化過程に伴う微細構造のその場観察を行うことできるその場観察システムを構築した。また、電子線トモグラフィ法を用いた3次元ナノ構造観察を行うために、電子顕微鏡の光軸に対してx軸傾斜角55°かつ試料回転角360°で観察試料を傾斜/回転させることが可能な回転式試料ホルダーの試作を完了した。本ホルダーを用いて、全固体電池材料の負極材料として期待されているSnの充放電サイクルに伴う3次元微細構造観察に成功し、研究は順調に進んでいるといえる。
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今後の研究の推進方策 |
今後は、大気非暴露環境下でのTEMを用いた加熱その場観察法、ホロコーン暗視野法と電子線トモグラフィ法を用いて、非晶質構造中に形成されるナノ構造体(結晶化領域)のサイズ、形状、結晶対称性を明らかにする。硫黄系Li2S-P2S5ガラスセラミックスは、室温から温度上昇をさせると、熱測定により結晶化に伴う発熱反応が生じることが知られている。この発熱反応を伴う結晶化により生じる結晶相(析出相)について、電子回折法により構造解析を行い、結晶相の同定を行う。また、ホロコーン暗視野法を用いた加熱その場観察により、結晶相の形成過程を明らかにし、結晶相および結晶化プロセスに与える電極-固体電解質界面の影響を明らかにする。本研究で構築する3次元ナノ構造体可視化システムを用いて、結晶化領域の3次元可視化を行い、非晶質構造中のどこから結晶化が生じるか、どのようなサイズで、どのように結晶成長するか、イオン伝導度とどのような相関が存在するか といった固体電解質としてのガラスセラミックスの基本的知見を得る。
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