研究課題/領域番号 |
21H04630
|
研究種目 |
基盤研究(A)
|
配分区分 | 補助金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
中区分27:化学工学およびその関連分野
|
研究機関 | 広島大学 |
研究代表者 |
都留 稔了 広島大学, 先進理工系科学研究科(工), 特任教授 (20201642)
|
研究分担者 |
長澤 寛規 広島大学, 先進理工系科学研究科(工), 准教授 (30633937)
原 亨和 東京工業大学, 科学技術創成研究院, 教授 (70272713)
|
研究期間 (年度) |
2021-04-05 – 2025-03-31
|
研究課題ステータス |
交付 (2024年度)
|
配分額 *注記 |
41,860千円 (直接経費: 32,200千円、間接経費: 9,660千円)
2024年度: 9,490千円 (直接経費: 7,300千円、間接経費: 2,190千円)
2023年度: 9,230千円 (直接経費: 7,100千円、間接経費: 2,130千円)
2022年度: 10,790千円 (直接経費: 8,300千円、間接経費: 2,490千円)
2021年度: 12,350千円 (直接経費: 9,500千円、間接経費: 2,850千円)
|
キーワード | アンモニア / 膜分離 / 触媒 / 膜反応器 / 低温 / シリカ膜 |
研究開始時の研究の概要 |
太陽光や風力などの変動性再生可能エネルギーを水素源として,グリーンアンモニアを製造し,エネルギー貯蔵や輸送に用いることは,持続可能社会の構築に極めて重要である。本研究では,電子許与性CaFH系低温触媒とシリカ系選択透過膜を組み合わせることで,アンモニア合成反応および分解反応を低温(250℃以下)かつ低圧(1MPa以下)で可能とするプロセス強化とシンプル化を実現することを研究目的とする。
|
研究実績の概要 |
本研究では,アンモニア低温合成触媒開発の実績を有する東京工業大学とアンモニアおよび水素選択透過膜の開発実績のある広島大学が共同で,世界に先駆けて低温低圧におけるアンモニア引抜型膜型アンモニア合成プロセスを提案し実証することを研究目的とし,① 室温~300℃でのNH3合成および分解触媒の開発と反応特性評価,② 室温~300℃でのNH3選択透過膜およびH2選択透過膜の開発と特性評価,③ 膜型反応システムの構築と反応特性評価を研究項目とする。研究実績の概要は以下のようにまとめられる。 ① BaO-BaH2を複合した金属Fe粒子(BaO-BaH2/Fe)は100 ℃以下でNH3を合成できる初の鉄系不均一系触媒であることを見出した。また,当該触媒のFeのNH3生成反応効率(TOF)はRu等の貴金属,Co,Ni等のレアメタルの数百倍を越えることが明らかになった。 ②分離膜の開発と特性評価に関しては,2021年度に開発したフッ素系スルホン酸/セラミック複合膜の高度化と共に,新たに金属配位型オルガノシリカ膜を開発した。50-200℃でNH3,H2,N2単成分系および混合系での透過特性評価を行った。200℃において金属配位型オルガノシリカ膜はNH3透過率2.8x10-6 mol/(m2 s Pa),NH3/H2およびN2透過率比11および102を示し,フッ素系スルホン酸/セラミック複合膜よりも高い選択透過性を有することを明らかとした。 ③膜型反応器において,触媒反応器と膜分離器の組み込んだリサイクル型触媒膜反応シミュレーターを構築し,プロセスシミュレーションを可能とした。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
①30~50 nmの比較的大きな金属Fe粒子にBaO-BaH2を固定化した材料(BaO-BaH2/Fe)は,100℃でもNH3を合成する安定な触媒として機能することが明らかになった。一方,BaO-BaH2 担体に数nmのFeナノ粒子を固定化した担持型触媒 (Fe/BaO-BaH2)は200 ℃以下でNH3を全く合成できなかった。なお,このような担持型触媒はRuを遷移金属反応場とする場合に有効な触媒構造である。また,全反応温度領域でBaO-BaH2/FeのFeのTOFは他触媒に使われるRu,Co,Ni等の遷移金属のそれらを数百倍以上回っていることが初めて見出された。 ②分離膜の開発と評価:2021年度に開発したフッ素系スルホン酸/セラミック複合膜は低温では極めて優れたNH3選択透過性を示すものの,反応速度の向上する200℃以上での選択性が低かった。2022年度には新たに金属配位型オルガノシリカ膜の開発に成功し,200℃ではフッ素系スルホン酸/セラミック複合膜よりも高い選択透過性を有することを明らかとした。 ③膜型反応システムの構築と反応特性評価:高温において,触媒反応速度は増加するのに対して,膜選択性が低下することが明らかとなった。そこで2022年度では,膜と触媒が一体化された触媒膜反応器に加えて,触媒反応器からの反応出口ガスを膜分離器で分離し,膜非透過成分を膜反応器に再度供給するリサイクル型膜反応器モデルを構築した。リサイクルを行うことでNH3収率が大幅に向上することを明らかとした。
|
今後の研究の推進方策 |
①触媒の開発: 100 ℃程度の低温でもNH3を合成できる本研究開発Fe触媒(BaO-BaH2/Fe)の最適化を進めると共に,BaO-BaH2を上回る電子供与能をもつ水素化物を開発する。反応特性評価:上記取り組みで得られた触媒群の特性を速度論的に解析し,これらを稼働させる最適条件を検証する。 ②分離膜の開発と特性評価:200-300℃で,分子径の近接したH2,N2,NH3混合系からNH3あるいはH2選択性膜を開発する。親和性を制御したFunctionalized ceramic膜の創製とサブナノ細孔制御が極めて重要である。これまでに開発したフッ素系高分子電解質/セラミック複合膜,および金属配位オルガノシリカ膜の高度化を図るとともに,2023年度ではナノ細孔TiO2やZrO2膜を用い,その内表面の硫酸化やリン酸化の検討を開始する。 ③膜型反応システムの構築と反応特性評価:NH3合成膜型反応器およびリサイクル型反応器のシミュレーションモデル化を行ない,膜透過性,反応性およびプロセス条件(供給量,温度など)の最適化を行う。さらに,温度と圧力は触媒反応特性および膜透過特性にも大きな影響を及ぼす。反応器と分離器を異なる温度が設定可能な,サイクル型反応器で,モデルシミュレーションに基づき,供給側全圧1~10 bar-G,透過側圧力10~100 kPa-a,温度50~300℃で,NH3合成実験を開始する。
|