研究課題/領域番号 |
21H04634
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研究種目 |
基盤研究(A)
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配分区分 | 補助金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
中区分28:ナノマイクロ科学およびその関連分野
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研究機関 | 北海道大学 |
研究代表者 |
雲林院 宏 北海道大学, 電子科学研究所, 教授 (40519352)
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研究分担者 |
松崎 典弥 大阪大学, 大学院工学研究科, 教授 (00419467)
金蔵 孝介 東京医科大学, 医学部, 主任教授 (10508568)
猪瀬 朋子 京都大学, 白眉センター, 特定准教授 (10772296)
笠井 均 東北大学, 多元物質科学研究所, 教授 (30312680)
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研究期間 (年度) |
2021-04-05 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2024年度)
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配分額 *注記 |
41,730千円 (直接経費: 32,100千円、間接経費: 9,630千円)
2024年度: 9,230千円 (直接経費: 7,100千円、間接経費: 2,130千円)
2023年度: 8,710千円 (直接経費: 6,700千円、間接経費: 2,010千円)
2022年度: 13,390千円 (直接経費: 10,300千円、間接経費: 3,090千円)
2021年度: 10,400千円 (直接経費: 8,000千円、間接経費: 2,400千円)
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キーワード | 薬輸送システム / ラマン分光 / 単一細胞解析 / 単一細胞エンドスコピー / membrane-less organelle / 細胞内相分離 / ナノプロドラッグ / エンドスコピー / 単一分子エンドスコピー / 増強ラマン散乱 / メンブレンレスオルガネラ / 抗がん薬 |
研究開始時の研究の概要 |
細胞内membrane-less organelle (MLO)の機能異常は細胞のがん化に寄与し、低分子量抗がん剤のMLOへの選択的局在化は薬理学的特性や薬剤耐性を決定する要因になり得る可能性がある。しかし、これらの物理化学的要因は不明である。本研究では単一細胞エンドスコピーとプロテオーム解析を併用して、MLOと抗がん剤の分子相互作用、細胞内MLOの生化学的機能・薬理特性との関係を解明することを目的とする。さらに、得られる知見をもとに、特定のMLOに集積する新規抗がん剤分子および薬輸送システムを開発し、薬効効果の向上、薬耐性の回避を目標とした新規創薬への指針を示す。
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研究実績の概要 |
細胞内には、脂質膜を持たないオルガネラ(membrane-less organelle: MLO)が存在し、細胞の恒常性に重要な働きをしている。MLOの機能異常、例えばスーパーエンハンサー 、核スペックル、核小体などの異常は細胞のがん化に寄与する。近年、低分子量抗がん剤の特定のMLOへの選択的局在化が、その薬理学的特性を決定し、がん細胞の耐性化の要因になり得る可能性が示された。しかし、MLOの選択性や分子間相互作用等は全く不明である。本研究では「単一細胞エンドスコピック増強ラマン分光法(SERS)」とプロテオーム解析を併用して、MLOと抗がん剤の相互作用およびそれによる細胞内MLOの生化学的機能・抗がん剤薬理特性との関係を網羅的に解析する。その知見をもとに、特定のMLOに集積する新規抗がん剤分子および薬輸送システム(Drug delivery system: DDS) を開発し、薬効効果の向上、薬耐性の回避を目標とした新規創薬への指針を示す。 2022年度は、MLOのモデルであるRNAとペプチドのドロップレットを試験管内に作成し、そのドロップレット内の抗がん剤分子レベル小分子と、ペプチドやRNAなどマクロ分子の拡散ダイナミクスを蛍光顕微鏡を用いたFluorescence recovery after photobleaching(FLAP)を利用した小分子拡散解析を行う準備を整えた。また、ラマン分光と組み合わせることで小分子とマクロ分子の相互作用の解析も可能にした。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
単一細胞内部へ届けられた抗がん剤分子の局在化、分子相互作用などを解析するため、研究代表者開発の「単一細胞エンドスコピック増強ラマン分光法(SERS)」を更に発展させ、細胞核内での抗がん剤―DNA相互作用、及び薬輸送システムから放出される抗がん剤分子の検出、およびプロドラッグからの抗がん特性分子の放出の検出を可能とした。また、MLOの一つである数マイクロメートルサイズの核小体のみを狙った「単一細胞エンドスコピック増強ラマン分光法(SERS)」を可能とすべく、2022年度にはエンドスコピック顕微鏡を新たに改良・構築し、抗がん剤分子とDNAの相互作用を反映したラマン散乱スペクトルが得られた。また、MLOのモデルであるRNAとペプチドのドロップレットを試験管内に作成し、ドロップレット内での分子拡散効率をFluorescence recovery after photobleaching(FLAP)を利用して解析する準備を整えた。そのため、概ね順調に進行しているといえる。 [繰越分] 合成方法の設計を見直し、新たに作製したプロドラッグナノ粒子の表面修飾最適化後、評価をやり直して実施する必要が生じたため、R6年1月末まで繰り越した。MOLに集積させるためのリガンドを合成時に修飾すると、DDSが凝集してしまう問題が生じたため、再設計後のプロドラッグナノ粒子の表面修飾とその評価をやり直した。しかし、設計後も凝集を防ぐことが不可能であったため、表面修飾後にリガンドを導入する方法に切り替えた。そのための表面修飾手法を最適化した。
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今後の研究の推進方策 |
2022年度は、MLOの一つである数マイクロメートルサイズの細胞核のみ、または核小体のみを狙った「単一細胞エンドスコピック増強ラマン分光法(SERS)」を行うための顕微鏡を改良・構築したため、2023年度は、単一細胞の任意位置(細胞質または細胞核内など)での抗がん剤の検出を試みる。薬輸送システムによる抗がん剤輸送と、通常のがん治療に用いられているような抗がん剤分子溶液による薬輸送を比較することで、薬分子のM細胞核への輸送効率を検証する。表面修飾後にMLOターゲットリガンドを導入し、細胞内挙動の評価を行う。
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