研究課題/領域番号 |
21H04638
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研究種目 |
基盤研究(A)
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配分区分 | 補助金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
中区分28:ナノマイクロ科学およびその関連分野
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研究機関 | 大阪大学 (2024) 京都大学 (2021-2023) |
研究代表者 |
坂本 雅典 大阪大学, 産業科学研究所, 教授 (60419463)
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研究分担者 |
田中 晃二 京都大学, 高等研究院, 特任教授 (00029274)
小林 克彰 大阪公立大学, 大学院理学研究科, 特任講師 (30433874)
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研究期間 (年度) |
2021-04-05 – 2026-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2024年度)
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配分額 *注記 |
41,860千円 (直接経費: 32,200千円、間接経費: 9,660千円)
2024年度: 6,110千円 (直接経費: 4,700千円、間接経費: 1,410千円)
2023年度: 6,890千円 (直接経費: 5,300千円、間接経費: 1,590千円)
2022年度: 10,140千円 (直接経費: 7,800千円、間接経費: 2,340千円)
2021年度: 12,870千円 (直接経費: 9,900千円、間接経費: 2,970千円)
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キーワード | 光触媒 / 未利用エネルギー / 赤外光 / プラズモニクス / 未利用エネルギー資源 |
研究開始時の研究の概要 |
現代社会において有効利用法が確立されていない赤外域の太陽光を熱としてではなく、 光エネルギーとして利用することが可能な機能材料、エネルギー変換システムを開発する 。赤外域の太陽光は太陽エネルギーのおよそ46%を占めており、有効利用法が開発されれ ば光合成や太陽光発電などに匹敵する新たなエネルギー資源となる。また、自然と競合しない赤外光は真に自然と共存したエネルギー変換を実現できる。目に見えない、生命活動や既存のインフラに干渉しない未使用エネルギーである赤外光の利用は、再生可能エネルギー研究における新概念であり、研究を通じて学術的・産業的・社会的に新たな価値を創出する。
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研究実績の概要 |
太陽エネルギーのおよそ半分を占める赤外域の太陽光の有効利用の実現は、人類に新たなクリーンで持続可能なエネルギー資源をもたらす。一方で、赤外光のエネルギーは可視光と比べると低く、赤外光を人類に有益なエネルギーに変換する際にはエネルギーの低さが問題となっていた。 既存の金属ナノ粒子/半導体界面とは一線を画する高い光電変換効率を実現する事の出来るplasmmonic p-n接合界面は、赤外光の高効率エネルギー変換、ひいては本プロジェクトで開発する透明太陽電池の効率向上のための鍵である。申請者らは、Z.Lian教授(上海理工大学)らと共同研究を行い、Plasmonic p-n接合界面を有するCdS/Cu9S5ヘテロ構造光触媒の最適化を行った。プラズモニクス材料に接合する半導体の体積を増大させることにより、既存の赤外光触媒を上回る外部量子効率(AQY)5.5%(@1100 nm)の活性を示す光触媒の開発に成功した。 低いエネルギーの光から、高いエネルギーを作り出すアップコンバージョンという現象は、エネルギーの低い赤外光を触媒反応や光発電に応用するためのカギを握る現象です。研究グループは、局在表面プラズモン共鳴(LSPR : Localized Surface Plasmon Resonance)を示す材料を用いた赤外光のエネルギーアップコンバージョン技術を開発し、可視光でしか進めることのできない光化学反応を赤外光を用いて進めることに成功した。LSPR材料を用いたエネルギーアップコンバージョンの機構は分光測定技術と赤外光照射下の触媒活性の評価によって明らかにされた。開発された技術は、赤外光で多彩な反応を進めることが可能な光触媒や赤外光応答太陽電池への応用が期待される。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
赤外光のエネルギー変換効率の向上、および、赤外光を化学エネルギーに変換する機構の2つの点において著しい進展が見られた。 Plasmmonic p-n接合界面の最適化を推進し、Plasmonic p-n接合界面を有するCdS/Cu9S5ヘテロ構造光触媒の最適化を行った。プラズモニクス材料に接合する半導体の体積を増大させることにより、既存の赤外光触媒を上回る外部量子効率(AQY)5.5%(@1100 nm)の活性を示す光触媒の開発に成功した。これは、現時点の世界記録である。 また、局在表面プラズモン共鳴(LSPR : Localized Surface Plasmon Resonance)を示す材料を用いた赤外光のエネルギーアップコンバージョン技術を開発し、可視光でしか進めることのできない光化学反応を赤外光を用いて進めることに成功した。これは、赤外光によりエネルギー変換技術の課題とする、高い起電力を要求する化学反応を回すことが難しい、という欠点を克服できる可能性のある重要な発見であり、本プロジェクトを一段先に進めるものであると期待される。
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今後の研究の推進方策 |
今後は、触媒の更なる性能向上を目指すとともに、分子触媒との組み合わせにより融合触媒の開発を進める。 赤外光エネルギー変換効率の更なる高効率化を進めるために、触媒反応に適したナノ粒子の形状の探索とヘテロ界面の開発を並行して進める。既に成果の出ているCuSなどの硫化物系の材料に加え、赤外捕集材として特に有望なタングステンドープ酸化チタンナノ粒子、酸化モリブデンナノ粒子、酸化タングステンナノ粒子などに特に着目して研究を行い、有望材料を洗い出す。ナノ材料は、材質だけではなく形状(球、ディスク、ロッドなど)に関しても調査を行う。光電変換特性を左右する電子注入効率と電荷再結合寿命の評価を、時間分解分光測定により行い、ヘテロ界面における電子注入の学理解明と最適化を目指す。 光触媒と錯体触媒を複合化した赤外光触媒を開発し、CO2固定を実現する。また、犠牲剤を介在させない反応システムを構築するため、酸化反応と還元反応を組み合わせたredox cycleを構築する。錯体触媒は半導体表面に修飾すると脱離が起こりやすく、この脱離が機能低下の原因となる。そこで、チオール、リン酸、カルボン酸などの配位部位を有する錯体触媒を用いたナノ界面接合技術を用いることで、半導体上における触媒の強固な固定を実現する。
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