研究課題/領域番号 |
21H04651
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研究種目 |
基盤研究(A)
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配分区分 | 補助金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
中区分29:応用物理物性およびその関連分野
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
長谷川 達生 東京大学, 大学院工学系研究科(工学部), 教授 (00242016)
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研究分担者 |
井上 悟 東京大学, 大学院工学系研究科(工学部), 助教 (00799562)
東野 寿樹 国立研究開発法人産業技術総合研究所, エレクトロニクス・製造領域, 研究員 (30761324)
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研究期間 (年度) |
2021-04-05 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2024年度)
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配分額 *注記 |
41,730千円 (直接経費: 32,100千円、間接経費: 9,630千円)
2024年度: 9,750千円 (直接経費: 7,500千円、間接経費: 2,250千円)
2023年度: 10,530千円 (直接経費: 8,100千円、間接経費: 2,430千円)
2022年度: 9,750千円 (直接経費: 7,500千円、間接経費: 2,250千円)
2021年度: 11,700千円 (直接経費: 9,000千円、間接経費: 2,700千円)
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キーワード | 有機半導体 / 薄膜トランジスタ / 半導体界面 / プリンテッドエレクトロニクス |
研究開始時の研究の概要 |
有機半導体は、層状結晶性を強化する分子設計により高移動度化が進んできたが、これらを用いた塗布型薄膜トランジスタの低電圧駆動や高急峻スイッチングなどの総体的高性能化は著しく困難であった。本研究では、高移動度・低電圧駆動・超高急峻スイッチングを同時に示す実用的なコプラナー型の塗布型薄膜トランジスタの実現を目指し、界面層状構造の自在制御が可能な有機半導体と、これらを用いた革新溶液プロセスの開発を行う。
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研究実績の概要 |
本研究では、高移動度・低電圧駆動・高急峻スイッチングを同時に示す実用的な塗布型薄膜トランジスタ(TFT)の実現を目指し、有機半導体と絶縁層/電極界面における高効率キャリア輸送/注入が両立する機構の解明と、これに適した新規層状有機半導体開発、及びこれらの構造-物性相関の解明に取り組んだ。前年度迄の成果を踏まえ本年度は、① 電極・半導体・絶縁層からなる3元界面のキャリア注入の様相を系統的に調べた。Ph-BTBT-Cn複数層からなる層状単結晶半導体をチャネルとし、表面エネルギーが異なる7種の絶縁体をゲート絶縁層とするボトムゲート・ボトムコンタクト型TFTを作製し、TLM法等によりチャネル抵抗と接触抵抗を分離して評価した。結果、移動度は各絶縁層でほぼ不変であるのに対し、本来は半導体・電極界面で生じる接触抵抗が、絶縁層により大きく変化することを見い出した。特に表面エネルギーの大小により接触抵抗の大小が決まることを確認した。また閾ゲート電圧・SS値等の変化を含め、これらを表面エネルギーの分散項・極性項のもとで分類・整理し、その起源を考察した。② 新規層状有機半導体開発では、Ph-BTBT-Cnのフェニル基先端にメチル基を付与したpTol-BTBT-Cnについて、アルキル鎖の炭素数が層状結晶構造に与える影響を詳細に調べた。n≧9では非対称分子が同方向に横並びに整列した単分子層を基本に、nが奇数の場合は分子層の配向が交互に積層する2分子膜型構造が得られるのに対し、nが偶数の場合は全て同一配向で積層する極性層状構造が得られた。またn≦8では、アルキル鎖が層間で交互に噛み合う特異な構造が得られ、これら構造発現の起源を分子間相互作用解析を用いて詳細に調べた。さらに③ 溶液製膜過程で分子混合等を用いる手法により、極性層状構造の発現等を制御できることを見い出した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
本年度行ったゲート絶縁層の種類を様々に変えた単結晶デバイスの詳細な解析から、ボトムケートボトムコンタクト型素子がこれまで思うように動作しない理由が、半導体・電極・絶縁層による3元界面におけるキャリア注入が、絶縁層の種類によって変化するという、驚くべき結果が見られることを確認できた。本成果は有機半導体電界効果トランジスタのデバイス物理の確立につながるきわめて重要な成果である。これらの成果を通して、研究は計画以上に進展している。
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今後の研究の推進方策 |
今後の研究推進に関し、本年度までに明らかになった3元界面のキャリア注入機構の解明をさらに加速させる。特に、電極の仕事関数を系統的に制御したデバイスを作製し、異なる絶縁層との組み合わせにより接触抵抗がどのように変化するかを詳細に調べることにより、3元界面からなる有機電界効果トランジスタの動作機構の解明に取り組む。さらに本研究で開発した極性有機半導体を新たなデバイス機能として活用する研究を加速させる。
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