研究課題/領域番号 |
21H04654
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研究種目 |
基盤研究(A)
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配分区分 | 補助金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
中区分29:応用物理物性およびその関連分野
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研究機関 | 大阪大学 |
研究代表者 |
楊 金峰 大阪大学, 産業科学研究所, 准教授 (90362631)
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研究分担者 |
成瀬 延康 滋賀医科大学, 医学部, 准教授 (30350408)
中村 芳明 大阪大学, 大学院基礎工学研究科, 教授 (60345105)
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研究期間 (年度) |
2021-04-05 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2024年度)
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配分額 *注記 |
41,730千円 (直接経費: 32,100千円、間接経費: 9,630千円)
2024年度: 8,320千円 (直接経費: 6,400千円、間接経費: 1,920千円)
2023年度: 10,400千円 (直接経費: 8,000千円、間接経費: 2,400千円)
2022年度: 10,790千円 (直接経費: 8,300千円、間接経費: 2,490千円)
2021年度: 12,220千円 (直接経費: 9,400千円、間接経費: 2,820千円)
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キーワード | 不可逆の構造変化 / 時間分解電子回折 / フェムト秒電子線パルス / 光誘起構造相転移 / 薄膜 / 構造相転移 |
研究開始時の研究の概要 |
光が物質の状態を瞬間的に変える光誘起構造変化(特に不可逆な構造変化過程)を利用すれば、新物質・新機能の開拓、超高速かつ低エネルギーの光デバイスの実現、が期待されることから、世界中が注目している。本研究では、可逆と不可逆な構造変化過程を時間分解観察可能な100フェムト秒以下の相対論的シングル電子線パルスを用いて、Si基板や各種薄膜上に人工的に作製したナノ領域・ナノマテリアルにおける光誘起結晶構造変化過程を観測して構造変化機構を解明し、構造変化とそれが決定する物性変化を明らかにする。本研究によって、新機能・新物性を有する新規材料の創出に道を拓く。
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研究実績の概要 |
1)マルチスケールの計測とユースケースの開拓 ・相対論的超高速電子回折装置(UED)は金属や酸化物等の無機材料における光励起構造相転移ダイナミクスの観察によく利用されているが、本研究では、ユースケース開拓のために、エネルギーが2MeVのフェムト秒電子線パルスを用いて光異性化を示す最も代表的な分子であるアゾベンゼン液晶有機分子の電子回折図形の測定を試みた。その結果、アゾベンゼン液晶分子に二つのベンゼン環から構成されるトランス体構造の電子回折パターンの観察に成功した。本測定結果から、今後、相対論的フェムト秒電子線回折装置を用いて光照射によりフェムト秒時間領域で変化するトランスーシス体の超高速構造ダイナミクスの解明が期待できる。 ・電場印加が可能な試料ホルダーを設計した。試料にナノ秒パルス電場を印加し、電場励起による引き起こされる構造変化過程を、時間遅延した電子線パルスを用いて電子回折図形の時間経過観察による測定するナノ秒・マイクロ秒時間領域での時間分解電子回折法を確立した。来年度に設計した電場印加可能な試料ホルダーを製作し、マルチ時間スケールでの相転移過程の観察に期待できる。 2)熱、光又は電場励起による構造相転移過程の測定 ・バッファー層としてTiO2薄膜を用いることにより、Si基板上にVO2薄膜をエピタキシャル成長(多結晶)させることに成功したため、これをUED計測用試料とした。具体的には、Si基板側をドライエッチングすることにより、VO2薄膜を残したまま、プランビュー観察可能な薄膜試料を作成できた。2023年度は、この試料を用いてUED測定を行った。現在、光励起と熱励起によるVO2の歪みのダイナミクスに着目しながら、対応するTEM観察を併用しながら、解析を行っている。 ・また、近年注目されている高い熱電性能を持つGeTe薄膜にける非可逆相転移ダイナミクスの測定を行った。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
今年度は計画したVO2薄膜の構造相転移過程の測定以外に、エピタキシャルGeTe薄膜/Si の作製条件を見出すことができた。GeTe薄膜は近年注目されている高い熱電性能を持つ材料であり、GeTe薄膜のドメイン制御により、界面キャリア散乱を制御できる、これにより、バルクGeTeよりも高い熱電性能を実現した。さらに、それらの熱電性能が最大となるのが低温相(菱面体構造)と高温相(立方晶)の相転移点の中間の温度にあることを見出した。薄膜のGeTe結晶の非可逆相転移ダイナミクスの理解がこの熱電性能の理解に極めて重要であり、今後、これを時間分解電子回折の測定により、結晶構造とドメインの観点から理解することで、高い熱電性能を持つ物質材料の創製が期待できる。
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今後の研究の推進方策 |
熱、光又は電場励起による構造相転移過程を測定し、構造相転移ダイナミクスの本質的な解明を試みる。そのために、 1)加熱試料ホルダーを活用し、シリコンベースのGeTe薄膜にエネルギーが2MeVの相対論的フェムト秒電子線パルスを照射して、熱励起による構造相転移ダイナミクスを試みる。 2)昨年度に設計した電場印加が可能な試料ホルダーを実作する。試料にナノ秒パルス電場を印加し、電場励起による構造相転移を引き起す。その相転移過程を、相対論的フェムト秒電子線パルスを用いて、ナノ秒・マイクロ秒時間領域での電場励起の構造相転移過程の測定法を確立する。 3)エピタキシャルGeTe薄膜/Si等の材料における熱、電場又は光励起による構造相転移ダイナミクスの相違点を解析し、構造相転移ダイナミクスの本質的な解明を試みる。本研究により、今後、高い熱電性能を持つ物質材料の創製に必要な知見を見つけ出す。
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