研究課題/領域番号 |
21H04666
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研究種目 |
基盤研究(A)
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配分区分 | 補助金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
中区分31:原子力工学、地球資源工学、エネルギー学およびその関連分野
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研究機関 | 大阪公立大学 (2022-2023) 大阪府立大学 (2021) |
研究代表者 |
石田 武和 大阪公立大学, 大学院工学研究科, 客員教授 (00159732)
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研究分担者 |
小嶋 健児 大阪公立大学, 大学院工学研究科, 客員研究員 (60302759)
町田 昌彦 国立研究開発法人日本原子力研究開発機構, システム計算科学センター, 研究主席 (60360434)
宍戸 寛明 大阪公立大学, 大学院工学研究科, 准教授 (80549585)
Malins Alex 国立研究開発法人日本原子力研究開発機構, システム計算科学センター, 研究職 (80816140)
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研究期間 (年度) |
2021-04-05 – 2024-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
41,730千円 (直接経費: 32,100千円、間接経費: 9,630千円)
2023年度: 11,700千円 (直接経費: 9,000千円、間接経費: 2,700千円)
2022年度: 12,610千円 (直接経費: 9,700千円、間接経費: 2,910千円)
2021年度: 17,420千円 (直接経費: 13,400千円、間接経費: 4,020千円)
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キーワード | 中性子検出器 / 中性子イメージング / 位置分解能 / 検出効率 / 読出し回路 / 検出器読出回路 / 読出回路 |
研究開始時の研究の概要 |
中性子は軽元素イメージングに適するミクロン級分解能撮像の実現のために、メゾ組織の中性子透過能差を撮像できる10B転換層付超伝導中性子検出器CB-KIDを開発する。①時間デジタル変換回路改良、②対向式八端子検出器化による信号放出位置同定精度向上、③10B転換層厚膜化による検出効率改善、④検出器動作温度最適化による検出効率改善により、現行CB-KIDに比べて位置分解能と検出効率の性能向上を図る。八端子CB-KID最適化にはモンテカルロ法によるCB-KID素子動作シミュレーションを活用し、その製作には産総研CRAVITYを活用する。中性子イメージングの材料科学、農学、電気化学等への学術貢献を目指す。
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研究実績の概要 |
ミクロン級超高位置分解能、数%の検出効率、100mm2の有感面積を有する10B中性子転換層を装備したNb超伝導中性子検出器CB-KIDを開発することを目的としている。従来は、極低温に冷却するCB-KIDを用いるため、測定試料も極低温に冷却する必要があった。本研究でクライオスタット設計を最適化し、室温で試料をCB-KID近接位置に設置できるようになり、室温試料の中性子イメージングを実現した。時間デジタル変換回路TDC の時間分解能向上に関して、AMANEQ基板と高分解能TDC基板を採用することで、時間分解能30psのKalliope-II読出回路の開発に成功した。超伝導ファンドリー(産総研Qufab)で超伝導素子製造装置の更新とシリコン基板が3インチから4インチに変更に対応しレチクル再製作と素子製作を行い、やむを得ない事情で遅れ、科研費の繰越申請をして取り組んだが、4端子CB-KID素子と8端子CB-KID素子の試作に成功した。Kalliope-IIに関しては、対向式8端子検出器による4He と7Li の放出位置同定精度向上でも使える仕様とした。10B中性子転換層の厚膜化による検出効率向上に関しては、超高真空MBE による10B 厚膜化の試行を行った。膜が厚くなったとき膜剥離を防ぐために条件だしが必要と分かった。検出器動作温度安定化に関しては、GM冷凍機を使う冷却であるが、T=5K±23uKと温度超安定化を実現し、検出器信号の伝搬速度が安定化させて遅延時間法による位置精度を飛躍的に向上させた。PHITS によるCB-KID のシミュレーションと設計支援に関しては、プロジェクト初期研究分担者によるモンテカルロ輸送計算結果を検討した。世界最先端施設J-PARCで中性子照射実験を行うためにビームタイムの配分を受け、中性子イメージング-実験を行うことができた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
極低温に冷却する超伝導検出器CB-KIDを用いる。これまでは測定試料も検出器に近接させるため極低温に冷却していたが、クライオスタットの最適設計により室温設置試料の中性子イメージングに対応させることができた。これにより、測定試料の選択範囲を飛躍的に拡げることができ、利用者が使いやすくなった。また、測定試料を取り付けないイメージング測定(オープンビーム測定)の実施が容易になった。超伝導ファンドリーQufabの装置更新や基板サイズの3インチから4インチへの変更に伴い、CADの素子設計を変更し、4端子CB-KIDと8端子CB-KIDの設計を行い、新プロセスで4端子CB-KID素子試作と8端子CB-KID素子の新規試作に成功した。また、CB-KIDの測定読出回路を従来の1000ps動作のKalliope-I回路から30ps動作のKalliope-II回路に性能向上させて、中性子イメージング画像を得ることにも成功した。中性子転換層の厚膜化に関しては、ボロン10層の剥離の問題に直面し、その解決のために、条件出しが必要性であることが分かり、今後厚膜化を目指すことになった。理論的理解に関しては、PHITSによるシミュレーションの結果を再検討し、高分解能化に有効であることを確認することができた。動作原理の解明のために超伝導ダイナミクスの検討を行った。J-PARCのBL10ビームラインでビームタイムの配分を複数回受けて中性子イメージングの実証実験を行い、Kalliope-II回路の動作を確認することができた。
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今後の研究の推進方策 |
中性子は軽元素イメージングに適するが、ミクロン級分解能撮像は実現していない。そのために、メゾ組織の中性子透過能差を撮像できる10B転換層を装備した超伝導中性子検出器CB-KIDを開発する研究を今後も更に推進する。開発に成功した時間デジタル変換読出回路Kalliope-IIに関しては、30psで動作する電子回路を使った中性子イメージングの実証実験を更に進め、高分解能が達成できることを実証したい。そのためには、伝搬速度を実測値よりもさらに精度を向上させてデータ解析ができるように、伝搬速度を最適値とするための繰り返しデータ処理アルゴリズムを開発し、位置分解能を更に高めることに挑戦する。対向式八端子検出器化による信号放出位置同定の精度を向上させる計画に関しては、新素子作製のためにはフリップチップボンディングによる素子組み立てを安定的に行う必要があり、その試作開発に努める。新年度も産総研Qufab施設に八端子素子製作を委託し、素子の最適化を進める。10B転換層の厚膜化に関しては、検出効率を高めるために膜厚を1000nmの10B転換層の実現して検出効率を改善することを目指す。検出器動作温度最適化による分解能向上に関しては、動作温度を高精度で安定化した状態で実測をして、Kalliope-IIの性能を最大限まで引き出す。
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