研究課題/領域番号 |
21H04669
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研究種目 |
基盤研究(A)
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配分区分 | 補助金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
中区分31:原子力工学、地球資源工学、エネルギー学およびその関連分野
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研究機関 | 国立研究開発法人量子科学技術研究開発機構 |
研究代表者 |
八巻 徹也 国立研究開発法人量子科学技術研究開発機構, 本部 経営企画部, 室長 (10354937)
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研究分担者 |
出崎 亮 国立研究開発法人量子科学技術研究開発機構, 高崎量子技術基盤研究所 先端機能材料研究部, 上席研究員 (10370355)
中村 一隆 東京工業大学, 科学技術創成研究院, 准教授 (20302979)
松村 大樹 国立研究開発法人日本原子力研究開発機構, 原子力科学研究部門 原子力科学研究所 物質科学研究センター, 研究主幹 (30425566)
池田 隆司 国立研究開発法人量子科学技術研究開発機構, 関西光量子科学研究所 放射光科学研究センター, 上席研究員 (60370350)
岡崎 宏之 国立研究開発法人量子科学技術研究開発機構, 高崎量子技術基盤研究所 先端機能材料研究部, 主任研究員 (90637886)
田口 富嗣 国立研究開発法人量子科学技術研究開発機構, 高崎量子応用研究所 先端機能材料研究部, 上席研究員 (50354832)
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研究期間 (年度) |
2021-04-05 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2024年度)
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配分額 *注記 |
42,640千円 (直接経費: 32,800千円、間接経費: 9,840千円)
2024年度: 4,810千円 (直接経費: 3,700千円、間接経費: 1,110千円)
2023年度: 6,500千円 (直接経費: 5,000千円、間接経費: 1,500千円)
2022年度: 8,710千円 (直接経費: 6,700千円、間接経費: 2,010千円)
2021年度: 22,620千円 (直接経費: 17,400千円、間接経費: 5,220千円)
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キーワード | 固体高分子形燃料電池 / 電極触媒 / 荷電粒子ビーム / 原子空孔 / 固体高分子型燃料電池(PEFC) / Pt/C触媒 / N-C触媒 / 固体高分子形燃料電池(PEFC) / Nドープカーボン触媒 / 固体高分子形燃料電池(PEFC) |
研究開始時の研究の概要 |
固体高分子形燃料電池内のPt触媒の性能が限界を迎える中で、従来とは異なった発想に基づく触媒開発が望まれている。研究代表者らは、荷電粒子ビーム照射を利用して、炭素担体上の高活性・高耐久性Ptナノ微粒子触媒(Pt/C触媒)とPtを用いない窒素ドープ炭素系触媒(N-C触媒)を開発し、これらの性能発現には炭素中の原子空孔が関与していることを見出した。本研究では、Pt/C触媒、N-C触媒に対して、電極反応の動的挙動に着目し、最先端のX線吸収微細構造(XAFS)解析と第一原理計算、超高速レーザー分光を融合させることで、高性能化メカニズムや照射誘起の原子空孔の役割を解明する。
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研究実績の概要 |
本研究では、炭素担体上のPtナノ微粒子(Pt/C)触媒、窒素ドープ炭素系(N-C)触媒で起こる酸素還元反応(ORR)の動的挙動に着目し、X線吸収微細構造(XAFS)解析、第一原理計算と超高速レーザー分光を融合させることで、当該触媒における炭素原子空孔の役割を解明する。今年度は、蒸着、プラズマ処理等の物理的手法に加えて、様々な測定・分析に十分量となる粉末状試料の作製手法を確立するとともに、先進XAFS測定や分子動力学(MD)シミュレーション、過渡反射率測定を行った。 前年度までに開発した粉末状試料へのイオンビーム照射技術を利用して、放射光X線によるオペランド測定のためのPt/C触媒粉末を作製できた。一方、N-C触媒粉末の作製では、ポリアクリロニトリルの電子線照射・焼成により、導入窒素がピリジン型とグラファイト型の化学状態を有するN-C触媒を合成した。 今後の高度オペランド計測に向け、燃料電池の動作環境を模擬した湿潤、酸素雰囲気下でPt/C触媒のスペクトルを測定し、時分解XAFS測定の対照データを取得できた。X線ラマン散乱分光(XRS)測定では、高配向性熱分解グラファイト(HOPG)基板への原子空孔導入によるスペクトル変化を観測するとともに、雰囲気の高度制御に用いるスクロールポンプを導入することで、炭素のオペランドXAFS測定を行うための足掛かりを得た。 MD計算では、原子空孔導入グラフェン上のPtクラスターを触媒モデルとして、その酸素吸着をシミュレーションした。上記のXAFSスペクトルの結果と合わせて、Ptと酸素との弱結合化の起源を明らかにできた。過渡反射率測定では、高感度SPAD検出器を導入し、HOPGのグラフェン面間のコヒーレント光学フォノンを計測したところ、イオン照射による寿命の短縮が確認されたことから、原子空孔導入によるグラフェン層の歪み形成が示唆された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
粉末状試料へのイオンビーム照射技術の利用や新たな試料作製法の開発を通して、様々な測定・分析に十分量となる当該のORR触媒を作製した。また、時分解XAFS測定のための対照データの取得やXRS スペクトルに基づく炭素の電子状態変化の解析を進め、高度オペランド計測による構成元素の化学状態、局所構造の評価に不可欠な高品質スペクトルの測定環境・条件を検討できた。MD計算によるシミュレーション結果は、炭素担体への原子空孔導入に伴いPt触媒上の酸素吸着が弱まることを示しており、これまでのXAFS、電気化学測定の結果と合わせることで、ORR触媒開発における荷電粒子(イオン、電子)ビーム照射の役割が見えてきた。さらに、フェムト秒レーザーを用いた過渡反射率計測では、イオンビーム照射フルエンスに依存したHOPG基板のフォノン振動の周波数変化を捉えることに成功している。これらは、ORR触媒における炭素原子空孔の役割解明に向けて重要な成果であり、研究はおおむね順調に進捗している。
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今後の研究の推進方策 |
Pt/C触媒では、Ptの担持状態が触媒性能を左右すると考えられるため、炭素担体上のPtナノ微粒子のサイズや形状が触媒活性にどのように影響を及ぼしているかの検討をさらに微視的な視点で進める。一方のN-C触媒では、触媒活性の最大化のため、電子線照射・焼成条件の最適化を図る。 ORRへの炭素原子空孔の効果を明らかにするため、以下の先進XAFS測定や理論計算を計画している。①作製したPt/C触媒に対し、電位掃引下等のオペランドXAFS測定によって、ORR過程におけるPtの電子状態変化を観測する。②XRS測定では、HOPG基板やN-C触媒を対象に、原子空孔や窒素導入による電子状態変化の解析を進め、触媒性能へ及ぼす影響を検討する。③本年度得られたシミュレーションモデルを利用して耐久性向上の可能性を検討するとともに、荷電粒子の照射による炭素材料の欠陥形成過程をシミュレーションすることで最適な原子空孔を導入するための条件を探索する。④超高速レーザー分光によるコヒーレント光学フォノンの精密解析や、原子空孔を有するグラファイトに対して適用できるコヒーレントフォノン制御モデルの構築を進める。
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